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「誰だお前!」
洞窟の入り口に配属される2人の門番が驚愕の表情を浮かべながらも1人が戦闘態勢を取りもう1人がウィンドウを開き一生懸命に操作している。きっと援軍要請だろう。まぁ何人来ようと同じだろうがな……。
楼楽は、槍を手に取り慣れた足つきで軽快にステップを踏み、敵の背後をとる。
「なっ」
急遽にステップしたため門番は急いで後ろを向こうとしているがもう遅い。槍を前に突き出す。槍先は門番の足をめがけて一直線に進み、そして――。
「うぐっ!」
戦闘態勢を取っていた門番が足を抑えながら倒れこむ。麻痺毒――10分は動けないだろう――が門番の体を蝕み、倒れこんだ門番は失神したようだ。
逃げようとするもう一人の門番の背中を槍先で斬る。
門番は全滅だ。死んではいないが10分は動けない。10分後には俺はどこにいるだろうか……? 空想世界か、現実世界か、それとも地獄か……?
真っ暗闇な洞窟をゆっくりと楼楽は進み始めた。
プレイヤーとほとんど出会うこともなく、奥深くにあるギルド心臓部――つまり、国の神殿がある所にたどり着いた。数人であったが勿論の如く強行突破だ。自分がなぜここに来たのか迷うこともあったがもう後戻りはできない。
淡々と立ち並ぶ木の柵が、ギルド本拠と思われる巨大テント守っている。2人いる防衛兵らしきプレイヤーの不意を突けばすぐ抜けられるであろうが、うまくいくかわからない。そんな派手な事をやるより、忍者のように忍び足で柵の一部を切り抜いてそこから侵入したりする方が良いのだろう。だが、そんなことではずない。結局の答えは強行突破しかないのだ。
槍を構え、話をしている防衛兵に突撃する。完全に不意を突かれたようで、無防備となった腹を楼楽の槍は捉えた。
生々しい感触が手に伝わってくる。いい加減こういうリアルな表現は修正してほしいと思う。リアリティすぎる。ついでにこのデスゲームも修正してくれればいいのだけれど……。
「敵かっ!」
もう1人の防衛兵が剣を抜刀しようとしたとき、咄嗟に槍を引き抜き横に薙ぎ払った。槍の腹の部分と衝突したプレイヤーは一気に吹き飛ばされ体力の7割近くが消滅する。その衝撃に耐えられなかったらしい、プレイヤーはぐったりと倒れこみ起き上がろうとしない。
「貴様はっ…………! ろ、楼楽かぁ……」
腹から真っ赤な血を流しながらも悶え、剣を持とうとする防衛兵が掠れた声で言う。
「だまれ……」
防衛兵の腹を蹴り飛ばし、手を踏みつけ剣を無理やり引き離す。今ので意識を失ったらしい、白目を剥いている。殺意を抑制し、強く握りしめた槍を背中に収める。
木で造られた簡素な門をくぐると、すぐ目の前には普通のテントより少し大きめのテントが5つと他より数倍は大きいテントが1つ張られていた。闇市から高額な金額で買ったこの洞窟の情報によると巨大なテントに地下の隠し部屋への入口があるはずなのだ。たぶんあのテントの中には敵はいないだろう。そう思いながらも周りを警戒しながらテントに近づき、そして突入した。
「誰も……いないな……」
そう呟き、安堵のため息をつく。近くを見回すと最奥部に入口っぽい階段があった。入口っぽいというか入口だろう……。
「私はこれでよかったのだろうか……」
そう躊躇いながらも入口に足を進めた。
「麻痺毒か……。効果は10分ってとこだな……。そしてこいつを麻痺させてから経過5分経ってるぐらいだな……」
ここではモンスターは出ない。明らかにプレイヤーが故意的にやったものだ。といっても町では闇市は恐れられるPK集団だ。襲撃したとしても此方側に一切の利はない。また復興して襲ってくるだけだからだ。
だが、実際こうやって襲撃されている。目撃情報からやはりこれをやっているのは楼楽で間違いないだろう。確実な証言はやはり傭兵たちだった。偶然楼楽を護衛していた傭兵たちと出会ったのだ。それらから話を聞くとその洞窟には単騎で入ったらしい。この証言が本当ならば楼楽に危機が迫っているかもしれない。やめさせないと、絶対に――。
真っ暗な洞窟に足を踏み入れると、冷風が吹いてきた。
「うっ……」
寒いのに弱い俺は、両腕を交差させる。
洞窟に入ったことはない俺でも分かる。洞窟は外の気候と関係なく少し涼しい。だが、この洞窟は何かおかしい。洞窟特有の寒さじゃない。まるで作り出したかのような寒さだ。この寒さは何度か経験したことがあるがブリザドという氷魔法によるものだ。
この世界の魔法全てに共通することがある。それは、魔法は標的となる物がいない限り発動できないことだ。例えばフレイムだ。これは敵を照準することで発動できる。敵がいない所では使えないということだ。ブリザドもそうだ。敵がいない限り発動できない。
つまり、この洞窟に漂う涼しさは、誰かが何等かの敵に向かって放っているということになる。此処らへん一体には敵が出ない。つまり相手はプレイヤーに限られる。
「遅かったか……!」
嫌な予感しかしなかった。俺が着いたときにはもう楼楽がいないような感覚しかしなかった……。




