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アリアはクナシリアの次の都市です。


 ――ギルド『市』

 現在、ギルドメンバー20人。ギルドサブマスターは3人。【坂でコロンダ】【沙奈】【全滅隊長】だ。ギルドマスターは【楼楽】だ。ギルドメンバーの全員が商人や採集家で構成されている。

各都市の名産品を集めそれをNPCはPCに売る、それが市の主な活動だった。安全に金が集められる、平和だった。アリアに来るまでは……。

アリアで採れる≪延命の花≫はかなり高価な物で、市でもそれを集めることになった。アリアに来てから5日目に延命の花が大量に手に入った。その取り分を巡って市内部で抗争染みたことが起きた。そして、その抗争により取り分を失った者それが、犯罪者ギルド『闇市』のギルドマスターなのだ。

市には元々50人のメンバーがいた。闇市もギルドメンバー数人では何もできないと思ったが市内部でも闇市に移るメンバーが絶えず現在の人数に至った。

 闇市のギルドメンバーは50人。それらは一種の武力集団であり、商人の各位を捨てた者である。闇市を滅ぼすため、市は傭兵を雇ったりして反抗の姿勢を見せたのだ。


「楼楽よぉ。佐中が闇市の連中に襲われたそうだぁ。泣きながら帰ってきたぜぇ」

 不良のような口調で坂でコロンダは言う。

 ここはギルド集会の場としてよく使っているアリアの酒場である。

「今日で4人目ですね……」

 か細い声で顔を俯く沙奈。

「ギルドの危機……か……」

 フード付きの服を着た全滅隊長はクールに不吉な事を言う。

 悔しかった。ギルドメンバーが襲われ、傷ついている。それなのに自分は何もできない。そんな、無力感に襲われていた。

 楼楽は頭を抱えた。

「明日の取引はどうするんだぁ?」

 そうだった。闇市の事で頭がいっぱいだったせいか、明日取引があること忘れていた。取引相手はトールというプレイヤーだ。一時期有名になったプレイヤーだが、この頃は掲示板に名が挙がることは殆どない。

「明日の取引は――やる……」

「この異常事態でこそ踏ん張らないといけないんだ。この取引を絶対成功させる」

 楼楽は強い口調で言った。

「そうでなくっちゃマスターらしくないです!」

 沙奈もにっこり笑顔で言う。

「取引は俺にやらしてくれよなぁ」

 そう言ったのは坂でコロンダだった。彼は、戦士で戦闘経験が少しある。役目は適任だろう。そう思うが、彼が闇市の連中に殺されるという映像が頭の中をよぎる。

「ギルドメンバーを2人連れて行ってくれるか?」

「了解したぜぇ」

 楼楽は無言で頷き、ギルド倉庫から5つの延命の花を取り出した。それを【坂でコロンダ】に手渡しした。

「頼んだぞ」

「まかせとけよぉ」

 ガッハッハと笑いながら立ち上がり「宿屋にもどるぜぇ」と言って酒場を後にした。

「さて……。ここらで解散しよう」

 外はもう真っ暗だ。

 沙奈は「では、私はレストランに」と言って酒場から出て行った。そして、酒場にいたメンバーが帰った後楼楽は1人椅子に座っていた。

 明日の取引が心配でどうにかなってしまいそうだった。だが、坂でコロンダは戦闘経験がある。自分に「大丈夫だ」と言い聞かせ楼楽も酒場を出た。


 ピコンという軽快なアラーム音が部屋中に響く。

「……朝か……」

 俺は目を擦り、まだ回復しない視界のまま壁に掛けてある時計を見る。時計の短針は「5」を指している。

 それでも回復しない視界に苛立ちを覚え、洗面所に行き顔を漱ぐ。濡れた顔を柔らかな布で拭く。

「朝飯くわねぇとな……」

 寝間着からいつもの服装に着替えた俺は部屋を出て、1階に下りる。宿屋≪ローズ≫は値段が高いだけにかなり豪華だ。部屋の設備は他とは比べものにならないぐらい良く、朝飯もついているのだ。

 ≪ローズ≫の1階は受付と食堂がある。宿泊客には食堂で使える朝限定の無料券が貰えそれで朝飯が食えるということだ。

 食堂で一番高そうな料理を頼んだ俺は席に座り料理を待っていた。

「トールさん……おはようございます……」

 不意に後ろから声が聞こえた。その声はどこか気の抜けたような声、つまりキリノの起床時の声だ。

「キリノ随分早いな」

 キリノはどっちかというと起きるのが苦手な方だろう。いつもなら7時、8時に起きるはずだ。ネジが1本外れているのかと思うほど起きるのが早い。早すぎる。何かがおかしい。

「私が起こしたの」

 キリノの後ろから現れたのはリナリアだった。そういえばリナリアは俺に並ぶぐらいの早起きだったな。女3人組は一緒の部屋で寝させていたので起こされるのも無理ない。キリノが起こされたということは祈も起こされたということになる。

「ふあ~~……。おはようございます、お兄様~」

 やはり起こされていた。というかキリノも祈も寝間着姿なんだが……。そしてその姿が可愛い……。あまり見ない光景だったからか動揺して自分の顔が熱くなるのが分かった。

「まずはキリノと祈は着替えて来い……!」

 俺は顔を俯かせながら叫んだ。

「ふぁい」

 気の抜けたような返事が返ってきた。

 数分後、リナリアが料理を選んでいるうちにキリノと祈はいつもの服装に着替えて食堂に来た。キリノは「トールさんに寝間着を……!」と顔を紅色に染めていた。俺に寝間着を見られるのが相当嫌だったらしい。赤くなっていたし怒っているんだろうな……きっと……。

 3人が料理を頼み終えた後に俺の朝飯はやってきた。

「お兄様……。すごい物を……」

 と、祈。

「トールさん……食べれるんですか……? 朝ですよ?」

 と、キリノ。

「これ一番高い物じゃないの。ちょっとは遠慮しなさいよ!」

 と、リナリア。

 3人共唖然としている。確かに高いのは頼んだけど、これって普通の量じゃないか? 俺はさっそく料理を口に入れた。

 清魚の刺身。身が締まっていてとても美味しかった。醤油っぽい物と山葵っぽい物も美味い。醤油は独特のうまみとコクがあって、山葵は本ワサみたいだった。

 清魚の丸焼き。とにかくデカい。50センチメートルはある皿にいっぱいに盛り付けてある。味は良かったし、大根おろし(?)を付けるとまた旨味が増して美味かった。

 蒸しグラブ貝。アサリみたいだが、アワビぐらいの大きさの貝が3つ皿に綺麗に盛り付けてあった。特製の秘伝汁をかけて食べるらしく、器に入った秘伝汁を均等に分けてかけて食べた。美味しいというレベルを超越していた。

 海鮮汁。清魚やグラブ貝以外にも色々な魚が入っていて、それぞれが違う個性を持っていて色々な味が楽しめた。海鮮出汁が出ていた汁は一品だった。

 などなど、料理の数は10にも及んだ。だが、これは『高級料理Aセット』というものであり単品で頼んだわけでは無い。

 全て美味しく頂いたわけだが、やはり3人はポカンと大口開けている。一体どうしたのだろうか……? 

「約束の時間は7時で、場所は広場のバラ前か」

 昨日の間に『市』と約束し、とりあえず5個買うことにした。買うだけだから俺1人で行くことにした。

ちなみにバラ前というのは、広場にある花壇の中にバラの様な形をした花がたくさん植えられているところがありそれをバラと呼ぶのだ。実際もっと長い名前なのだろうがバラで浸透してしまったのでそれを覆すことはできないだろう。その花壇の前を一般的にバラ前と言う。

 時刻は既に6時30分。長話をしたため食堂にいた時間は単純計算で1時間30分ということになる。少々長居しすぎたような感じだ。

「じゃぁ行ってくる」

 キリノはニコッと笑い「はい」と言った。

内心、この取引が成功するのか心配だったがキリノの笑顔を見ていると全て成功するような感覚になる。

俺は、何か引き付けるようで優しげなその笑顔に応えるかのように笑った。



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