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新章突入です。
少し時間が飛びましたが……。
ゲーム開始2か月
最前線エリア「ソーツ平原」
最前線都市「アリア」
トール LV43
キリノ LV37
イノリ LV33
リナリアLV25
――Title『King plain』――
燦々と降り続く真夏のように暑い日光と、大地に生えるちょうど肘あたりまで伸びている雑草が俺たちのスタミナを刻々と削っていた。
『ソーツ平原』は地獄のエリアと呼ばれていた。この日光にはスタミナを奪う特殊効果があり攻略には不便であり、さらにその日光に食物の耐久を急速に奪う効果が付属しているため数か月持つ食品も1か月で腐ってしまう。
ソーツ平原ではそれ程種モンスターは出てこない。出てくるモンスターは動物型が多い。朝昼ならばフレイムゼブラ(炎属性のシマウマ)やコルトパイソン(属性なしの蛇。スピードが速い)が多く見かけられるだろう。夜間なら集団で動くグロウファングと言われるハイエナが見かけられる。グロウファングはかなり強力なモンスターだ。集団に囲まれたらまず命はないだろう。時々、ゴブリンを少し見かけるが出現頻度はかなり低い。
現在は、平原の中央に位置するダンジョン「ビーストランド」まで攻略されている。ビーストランドは猛獣が住み着いており、攻略に行ったパーティは1つとして帰ってこないと言われている。
そんなソーツ平原の中央ダンジョンに今俺たちは潜りこんでいた。
「はっ」
俺は勢いよく剣を振り下ろし近づいてくるグロウファングを切り裂いていく。グロウファングに囲まれてから随分と時間が経った。最初は15頭近くいたのが今では残り4頭になっている。
ビーストランド。普通のエリアと変わらない、雑草が生え数本の木が立っている。だがモンスターは一変していた。
「くっそ!」
全力で剣を振るう。剣は見事に、飛び掛かってくる1体の腹に直撃した。グルゥ…という呻き声の後1体は地面に倒れて消滅する。
さらにもう1体に素早く近寄り背中に鋭く尖った剣の先端を突き刺す。突き刺した位置にはグロウファングの心臓があり一撃必殺を決めることが可能なのだ。
「はっ!」
近くで戦っていた祈が大剣を地面に無造作に叩きつける。無造作ではあるが、衝撃が地面を伝いグロウファングの足を止める。
大剣を地面から引っこ抜き横に切り払う。その払いさえもが無造作だが、剣はしっかりと2体のグロウファングを捉えていた。吹き飛ばされ地面にたたきつけられるグロウファングはその姿を薄めていき、ガラスを割るかのような大音響で砕け散った。
「何とか切り抜けたな……」
その場に腰を下ろし、アイテムBOXから『ミネラルウォーター』というアイテムを取り出し勢いよく飲む。ミネラルウォーターはスタミナを中量回復できるアイテムだ。都市アリアの名産品で、普通にアイテムショップで購入することもできるが、アリアでボトルを買いアリア郊外にある滝でそれを汲むこともできる。
「この調子だといつものとこで切り上げることになりそうだな……」
“いつものとこ”というのはダンジョンの中腹あたりのことで、あまりモンスターがポップしない地点である。そこから、先はまだ未攻略の状態だ。というのも、少し進んだところに、毒属性ハイエナ系モンスター『ゾルガ』がかなりの数で湧いている。それに加え龍属性トラ系モンスター『ライガー』が数体湧いている。それ故突破するのが難しいのだ。
野宿してまた先に進めばいいと思うかもしれないが、それは出来ない。なぜならばこのダンジョンでは食料が1日で腐ってしまうからだ。
「そうですね。暗くなるとグロウファングがたくさんポップしますし、解毒剤も持ってきていませんしね。とりあえず今日はアリアに戻りましょうか」
「そうだな……」
ミネラルウォーターを飲みほしボトルをアイテムBOXにしまった俺は、立ち上がり「帰ろうか」と言って入口に戻った。
――最前線都市≪アリア≫
クナシリア攻略から3週間後にソーツ平原の中腹あたりで発見された。発見から1週間後に侵攻。死者を1名も出すことなく勝利することができた。
アリアは、どうにも工業都市だったらしくNPC武器屋や防具屋がそろいにそろっている。さらには鍛冶屋に最適な物件が幾つもありユンノーシから引っ越してきた鍛冶屋プレイヤーもたくさんいる。エリンにもクナシリアからアリアに移ってもらった。
アリア郊外には平原地形にはあまり考えられない森と断崖そして滝があり、地域全体にモンスターがポップしないためかなり有名な観光地となっている。滝ではミネラルウォーターが得られるため毎日観光客や、水を取りに来たプレイヤーで溢れかえっている。
名産品はミネラルウォーターと、ズナン草である。ミネラルウォーターは滝から採れる水で、スタミナ回復効果がある。NPC商店では100Nで販売されている。ズナン草は毒を治療する効果がる薬草である。アリア郊外の森や断崖に生え森なら木陰、断崖なら滝の近くの湿った所に生える。意外と採るのは難しくNPC商店では300Nで販売されている。
アリア郊外の森で取れると言われている謎の草花がある。それは、≪延命の花≫と呼ばれその効果は分からないらしい。採るのが難しいことから一般的な相場は1万Nを超える。ただ、使い方が分からないため冒険家に無用の物で、一般に花マニアが買収しいている。
この≪延命の花≫は上記から分かる通り集めて売ればそれなりに金になるのだ。そうなれば必ず争いが起きるわけだ。『闇市』という強盗・恐喝をする裏取引犯罪ギルドと一般ギルド『市』が現在≪延命の花≫を巡って争っている。『市』は商業者の集まりであるため、戦闘ができる『闇市』とは戦えないので傭兵を雇っている。求人掲示板に時々傭兵雇用の掲示がされているのを暫し見かける。
上記の様な特徴がある都市――それがアリアだ。現在アリアには1000人近い人数プレイヤーが集まっている。その中の6割が攻略組のプレイヤーである。
「今日も同じところ止まりだったな……」
「そうですね……」
俺とキリノは俯く。
ここはNPCレストラン『シー』だ。何とも単調で面白みのない名前で味もその程度なのだろうと思ってしまうが、ここの味はその思想を覆す程の美味しさを誇っている。ユンノーシや0のレストランとは比べものにならないぐらい美味い。
「お兄様、やっぱり野宿しないといけないんじゃ……」
祈はそう言う。あのダンジョンでは食物を長持ちさせることができない。せめて、ダンジョン内でも2日3日腐らない食品でもあればいいのだが……。
「最近のことなんだけど、延命の花の花粉を……ゴクン……食物にかけるとあのダンジョンでも長持ちするんじゃないかっていう噂が流れてるわよ」
モグモグとしながら、リナリアが言う。口の中の物を飲み込んでから言えよ……。それは置いといて、延命の花にそんな効果があったなんて聞いた事が無い。掲示板を逐一チェックしているというわけではないし見逃しもあるだろうから、その見逃した幾つかの記事にあったのだろう。
「そうなんですか!」
キリノ……。お前も飲み込んで言えや!
そんな苛立ちを抱えながらも、レストランでの会議は終了した。可能性は低いが、延命の花を試してみることにした。明日、『市』から延命の花を幾つか買い取るということになった。『闇市』との抗争に巻き込まれるようなことはなければいいが……。
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