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クエストは完了した。マステマの死んだあと神殿の奥から不意に現れたのを保護したのだ。クエスト完了、それはとてもうれしいことであり喜ぶべきことである。だが俺は喜ぶ気になれなかった。喜ぶ気になれない。PTを全滅させたという恐怖感がよみがえってくるからだ。
その後グランデルの丘に行きリリアン達の墓に遺品の武器を置いた。グランデルの丘は広大だ。それゆえリリアン達の墓石を探すのにも時間がかかった。だが、リリアンの墓石を見つけた後すぐ白亜やぶくぶく虫、ベンちゃんの墓石は見つかった。リリアンの墓石の近くにあったからだ。リリアン達は本当に仲が良かったのだろう。現実世界での知り合いだろう。
その後は専属鍛冶職人のエリンのところに行って強化を依頼してフーデッドローブ1枚という恐ろしい格好(フーデッドローブの下は下着です。シャツとパンツです)でNPC経営の料理店(酒場とは別物)にいた。少し気になることがあったからだ。それは3つの事だ。1つ目は都市クナシリア攻略計画である。2日後プレイヤー軍がクナシリア侵攻を行うらしい。掲示板に大きく張り出して参加を呼び掛けていた。とりあえず侵攻には参加しようと思う。
2つ目はスキル「怒りの鉄剣」についてだ。このスキルにはLVが無く常に一定の効果を得ることが出来る。効果は攻撃力を2倍するのだ。俺の場合英雄の証を使って、バーサークを使う。英雄の証は全ステータス2倍だ。バーサークは今のLVなら1.5倍だ。それにより俺の攻撃力は900近い物になる。さらに怒りの鉄剣で2倍にすると攻撃力1800というチート染みたことになってしまうのだ。どう考えてもおかしいのである。だが、スキルとしてある以上はこれが本当なのであろう。そう信じたい。
そして3つ目だが、それは俺とキリノとイノリとそしてリナリアの事――つまり今後についてだ。まぁそれの事は集まってから話そうと思う。
「さて……。もう夕飯時だな。何か食って帰るか」
時間は7時だ。辺りは薄暗いくなっている。俺は歩くNPCに料理を注文した。
数分後それは出てきた。
「なんだこれ……」
料理名『焼き狼肉』
名前の通りだ。狼の肉をタレと一緒に焼いて野菜と一緒に盛り付けたような料理だ。それなのに1000Nと高額だ。最初の町はなんでも物が安いと思っていたがやっぱりどこにでもぼったくりってのはいるもんだな。
俺はそれを入れ頬張る。
「う、うまい……!」
咄嗟に出たひと言がそれだ。何なのだろうか。口の中に入れた瞬間に肉が蕩けて甘味が口の中に広がる。甘味は口の中で広がった後、味が変わりジューシーと言うのだろうか、牛肉や豚肉の焼肉を食べているかのようになってくる。この味でこの値段は安いぐらいだ。
さらに料理は出てくる。
料理名「オレンジキャロットのスープ」
それは一見コーンスープだ。だが飲んでみると違いが分かる。コーンスープにあるトロミがほとんどない、サラサラだ。ただ、飲んでて飽きない秘めた味だ。結構はまってしまう。値段は500Nだ。やっぱりお得すぎる。
料理名「ブレッド」
日本語に訳すとパンだ。この世界にパンなんてあるの? だが、ここに存在している。こういうところだけ優しい運営なんだな。食べてみるとそれはパンだった。付属でついてきた「イーチーゴージャームー」というものを塗り付けて食べると美味さが倍増する。因みに現実世界にある苺ジャムです。味も形も同じでした。
食べ終わってカウンターみたいなところに行く。
「合計1700Nです」
俺は金袋にしてカウンターに置く。それを無言で受け取り「ありがとうございました!」と元気に言った。
2日後の都市侵攻作戦に参加申し込みをするべく俺は攻略組で唯一の知り合いソルトにメールを送っていた。返ってきた返事では快くOKされて作戦を立てているとのことだ。作戦は攻略前に参加者に説明するが俺には事前にメールで説明してくれるらしい。俺は物忘れが激しいのでそっちの方が助かる。
「さて……。何をするかな……」
適当にアイテムBOXを見ながら言う。そういえばアイテムBOXの容量がもう少しでなくなってしまう。此処らへんで処理をしなければ後々困ってしまう。武器強化のために必要な素材は渡してあるので食料になるもの以外は売り飛ばしてしまおう。そう思い市場まで行った。
市場に着いたが酷い有様だった。人が多すぎるのだ。「このうじゃうじゃいる感じ……。人間がアリのようだ!」と言ってしまいそうなほどに多い。
すぐ近くにいた露店の店員に話しかける。なぜ俺がNPCに売らないか。それは売れる値段がNPCより高い場合が多いからだ。特にレアな素材の場合は2倍、3倍となる。NPCでは1万で買ってくれるのを5万とか10万で買ってくれる奴だっているのだ。
「素材買ってくれないかな?」
「素材の質によるな」
「これなんだが……」
俺は素材をアイテムBOXから取り出し1つ1つゆっくり見せていく。
「ふぅむ……。どれも前線の素材ばかりだな。あいにくだが前線の素材はたくさん手に入るんだ。買えないな。ただ……」
「ただ……?」
「この鉄を使った素材なら買い取れるぞ。この鉄は異常なほどに需要が高いからな」
指差したのは駐屯所で手に入れる素材だった。
「いくらで買い取れるんだ?」
「そうだなぁ……。1グラムの相場が23Nで6キロだから……。13万8000Nってとこだな。」
「じゅ、13万8000N!?」
「あぁ。他のは別のとこかNPCに買い取ってもらってくれ」
「あ、あぁ……」
13万Nって……。すごすぎるでしょ! そんな大金が用意できるのだろうか。そっちの方が心配だ。
ドサッという音と共に木の台に巨大な袋が置かれる。
「用意できないと思ったか? だがな戦士と比べるなよ? 俺は30万Nは持ってるからな!」
自慢げに言う。やはり商人と戦士とでは儲ける金額が違いすぎるらしい。普通のMMORPGでも転売で儲ける奴らもいるが、普通のMMORPGなら戦うという欲求が強かった。戦って死んでもそれは所詮ゲーム内での死だからだ。だが、この世界は違う。死んだらそれは現実の死だ。だから、戦わずに儲け、戦士の役に立つ仕事――商人や鍛冶屋を選ぶプレイヤーがいるのだ。
「じゃ、じゃぁ貰っとくわ……」
その大金が詰まった袋を受け取りアイテムBOXに収納してNPC商人のいる場所を目指した。
素材を売ったことにより得た金額は約17万だった。持っていたお金や、戦闘で得たお金を足して40万を超えてしまった。あの露店商人を超してしまったのだ。結構嬉しいのだが、俺がこんな大金を持っていることをPKに知られてしまったら大変だ。緑プレイヤーでもMPKされる可能性もある。死んでしまったプレイヤーの遺品は武器と金が落ちる。実際リリアン達のも袋になって落ちていた(勿論拾ってはいない)。それを盗んでいくプレイヤーは存在するのだ。たとえ緑プレイヤーであってもだ。
「ばれないようにしないとな……」
ウィンドウを閉じて宿屋に戻った。宿屋で攻略掲示板でも見ながら装備の完成を待っていよう。
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