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俺はただ茫然と立っていた。戦争報告……。味方損害数――ようするにプレイヤーの死亡した人数が63人なのだ。それだけのプレイヤーがさっき起きた1時間程度の戦いで死んだのだ。そう死んだんだ。死んだ彼らはもう生き返ったりしない。死んだんだ。俺は戦争報告を恨むような目で見つめた。そして、このやり方をした運営を憎んだ。絶対に殺す……! この世界にいたとしてもいなかったとしても……!
「ちくしょぉ……」
俺はそう呟いた。
プレイヤーの死亡時に「グランデルの丘」という所にそのプレイヤーの名前、死亡日時、原因が書かれた墓石が自動で作られるようになっているのだ。
戦争後、戦争に参加したプレイヤーは全員でグランデルの丘に行った。63の花束を持ち戦争で死んだプレイヤーの墓石にささげる。それだけしかできなかった。それが悔しかった……。
花束をささげた後俺たちは酒場でアイテム分配をして今後について話し合った。ユンノーシの街には自由に出入りできるようにり俺たちの居場所もできたのだ。
「俺は個人で動きたい。今は立ち直る時間が欲しい。それと、各自動いた方がこれまで得られなかった情報が得られるからな」
俺は言った。
「賛成です」
「お兄様の意見に賛成します」
キリノと祈は同時に言う。
「そうか……。じゃぁ別々に動くってことで決まりだな」
「はい。集合は1週間後の朝7時でいいでしょうか?」
キリノは確認するように言う。俺は「あぁ」と言った。祈は……? 祈は「お兄様と1週間会えなくなるなんてさびしいです……」と嘆いている。
「祈。心配すんな! 俺なら大丈夫だからな! 元気な姿でまた1週間後会おうぜ!」
俺は祈の頭をくしゃくしゃとなでながら言った。
「はい! お兄様!」
祈は盛大な笑みを見せてくれた。
「じゃぁまた1週間後! ここで会おうな!」
俺は机の真ん中の方に手をかざす。
それに乗じ祈とキリノは「はい!」と言い同じように手をかざした。
「死んでたら許しませんからね?」
キリノは笑顔でそう言って席をたった。
俺も「あぁ」と言って席をたった。
酒場で別れてからもう時間も遅かったし宿屋に帰った。
次の日俺はプレイヤーの経営する鍛冶屋にいた。
「いらっしゃ~い!」
明るい女性の声だ。黒髪でショートヘアーな俺たちと同年代ぐらいの女の子だった。
「すいません。この素材で片手剣と盾と防具作れますか?」
俺はそう言い木で作られたカウンターの上に今まで保存してきた素材を全て出した。
「うわっ! すごいねぇ! これならお安い御用だよぉ!」
店主――プレイヤー名「エリン」は目を輝かせながら言った。
「じゃぁ素材を使ってこの剣とこの盾を強化して、防具も作れますか?」
「おぉ! いいよぉ!」
そう言いカウンターに並べてあった素材のいくつかをとり袋に入れた。
「カウンターの上のは用済みだね。何にも使わないから売ってもOKだよ」
すごい……。すごすぎる……。俺はやはり良い鍛冶職人を選んだのかもしれないな。やはり店の外見と店主の腕は比例しないんだな……。俺は関心しながらもカウンターの上に乗った素材を結晶化してアイテムBOXにしまった。
「友録してくれるかなぁ?」
「あぁ、はい」
俺は慣れない手つきでフレンド登録申請を送った。そしてOKの返事が返ってきたのは言うまでもないだろう。
「トール君かぁ。トール君結構いい素材持ってきたし名前覚えちゃうよ!?」
「は、はぁ……」
反応しずらいな……。こういうの……。
「とりあえず8時間はかかるからてきとうにぶらぶらしといてよ。というかふつうなら12時間はかかるんだけどねぇ。私だからできるんだよっ!」
「はい。分かりました」
俺が店から出ようとしたとき「敬語じゃなくていいからねぇ」とエリンが叫んできた。やっぱ同年代ぐらいなのかなぁ……? 俺は思いながらも「あぁ。分かったよ」と返事をして店を後にした。
あの後、プレイヤーの運営している商店に言って不要になった素材を売りまくった結果所持金が15000Nになっていた。その後宿屋に行き宿屋で色々考えながら寝ていたら8時間が経った。エリンから『装備できたよぉ!』と個人チャットが来たのでとりあえずエリンの運営している鍛冶屋――KAJIYAに行った。名前がそのままなのは気にしないことにしている。
「ようやくきたかぁ! 待ってたよ! トールン!」
ト、トールンだと!?
「トールン……?」
「私が付けたあだ名だよぉ! 可愛いでしょ!」
可愛くねぇよ! いやまじでやめてくれよ!
「じゃぁじゃぁトールン。これから装備を発表しま~す! まず武器から!」
そう言うとエリンは剣を取り出した。
「この剣の名前は『黒剣シシガネ』だよぉ! カッコいいでしょぉ!」
その剣――『黒剣シシガネ』はその名の通り真っ黒だ。剣全身真っ黒でさらには鞘まで真っ黒だ。だがこの剣はとても不思議なところがある。剣に光を当てると剣が黄色に見えるのだ。
「勿論攻撃力と耐久値は上がってるよぉ! でもねぇ? この剣には追加特性が付いててそれは『黒光り』と『怯み耐性』だよ。黒光りは剣を抜いたとき近くにいる敵をひるませることができるよぉ。怯み耐性は怯みにならなくなる優れものだよぉ! どう? すごいでしょ?」
エリンは相当な腕らしいな。
さらに盾も出してくる。盾は何と言うか……。変わった盾だ。
「この盾は『デイシールド』って言う名前だよぉ。重量にこだわってかなり軽くしてみたのと耐久値と防御性能は格段に上がってるよ!」
「あぁ。めっちゃカッコいいよ」
「おぅおぅ! もっと褒めてくれよぉ!」
エリンは男勝りな口調で言う。
あれ……? 何かキリノに見えてきた……? 俺はついいつもの一言を言ってしまう。
「可愛いぜ!」
「え……?」
あぁ……。やっちまった。何てこと言ったんだ。
「すまん(人を)間違えた」
「間違えたって……(間違えて本心言ったってことかな)」
俺とエリンの間に数分の沈黙が続く。
「さ、さて……! 次は防具だね!」
「お、おう!」
「防具はこれだぁ!」
エリンは黒い甲冑をカウンターの上に乗せる。
「これは『黒甲冑サザンテ』って名前だよ。防御力、耐久力はかなり高い! さらにはこれにも『黒光り』が付いているんだよぉ。だけどこの黒光りは能力が違うよ。これの能力は防具に光が当たった時耐久が回復するってものだ。強すぎるでしょぉ! さらには『暴風耐性』がついてる! その名の通り敵が起こす暴風にふきとばされなくなるんだぁ!」
「そ、そうか! 強いじゃねぇか!」
「おうおう! もっと褒めてくれよぉ!」
またか……。というかエリンはさっきあんなことがあったのに何で普通に話せるんだろうか……? 不思議に思う。
「あ、あのさぁ。さっきはごめんな」
俺はとりあえず謝ってみる。
「ん? 何のこと?」
忘れてるんかい! それはそれで良かったけど忘れるの早すぎだろ! 世界王者だろ!
「いや何でもない……。じゃぁ代金払うから。何Nだ?」
俺は問う。
「う、うん。それなんだけど……。通常なら30000Nなんだけど今回は3000Nにするからさぁ。だからさぁ……ここの鍛冶屋の専属プレイヤーになってくれない?」
「は?」
俺はいきなりでかなり戸惑っていた。そんなこと頼まれてもどう答えればいいか分からないからだ。
専属プレイヤーとはその店の頼まれた素材を獲ってくきたりする代わりに装備の修理、装備の作成、装備の強化全てを超安価、または 無料でやってくれるのだ。なって損はないがいきなりだと戸惑ってしまうのが欠点だ(たぶんいきなりで戸惑うのは俺だけだ)。
「いやぁ。トールン結構強いしい素材獲ってきてくれたり色々してくれそうかなぁなんて……」
「そ、そうか。俺も専属の鍛冶屋がいることはうれしいことだし専属プレイヤーになるよ」
「そうかそうか! じゃぁ決まりだな!」
「おう!」
俺はそう言い防具と剣と盾を付けてみた。
「!!!!!」
カッコいい……。ヨーロッパの騎士のような感じだ。思ってたよりもかなりカッコいい。やっぱエリンを選んでよかった。
「お前でよかった……」
「そうかい?」
「あぁ!」
俺はそう返事をした。
俺は店に飾られてあった鏡(?)を見て確認してみる。やはりカッコいい。が……。この装備ではかなり目立ってしまうことに気付いた。俺はあまり人に見られるのは好きじゃない。何かで隠したいな。
「ふふふ。目立つと思ってこれも作っておいたよ!」
取り出したのは黒色のフーデッドローブだった。
「エリン……。気が利く奴だな!!」
俺はそう叫びフーデッドローブをとろうと思った。
だがエリンは俺の手では届かないように自分の背中の方にフーデッドローブを隠す。
「これと引き換えに少しお頼みしてもいいかい?」
「…………。まぁいいか……。で、頼みっ何だ?」
「特徴的な木っていう素材が北方面エリアBOSS近くで獲れるらしいんだけど私の力じゃ獲りに行けないんだ。だから獲りに行ってほしいんだけど」
そんな木聞いたこともないな……。まぁ俺は北方面には全くかかわってなかったししょうがないだろう。
「あぁいいぜ。じゃぁ今日か遅ければ明日には戻ってくるよ」
「仕事が早くて嬉しいよ!」
そう言って俺にフーデッドローブを渡すとニコニコしながら店の奥に入っていった。
とりあえずあれをしてから向かおう。俺は店を後にした。
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