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前回と同様の事件が発生し絶望しました。
何の変哲も四角い柱をところどころ削っただけのようなのが今俺たちが住んでいる場所だ。地上にある扉を入ると螺旋階段がある。そこを上ると1階に到着する。1階には初め何も置かれていなかったがキリノが安価な調理器具やダンジョンに落ちていた石の塊を設置し3人分の椅子と机、そして調理台と釜戸を造っている。部屋の端に位置する階段で上ると2階になる。小型の木造ベッドと布団らしきものが4個ずつあった。これはそのまま使用させてもらうことにする。そしてそこから階段で上がると屋上――兵を配置し見張りを行う所に着く。1メートル程の薄い壁に矢狭間がいくつもある。360度見渡せ見張り面でも良い。ここは戦闘で疲れたときに空を眺めるのによさそうだ。因みに各部屋の窓の役割は狭間が行ってくれる。
とても良い場所だと思う。
だが欠点がある。それは『このダンジョンでは食糧が得にくい』だ。動物系の敵からは生肉が得られたりするがこのダンジョンは人間系の敵だ。動物系もいるがそいつからは生肉は出ない。持ってきたのは5日分だ。5日はすぐ尽きてしまうし、もっとたくさんあったとしても意味がない。なぜなら食糧は腐ってしまうのだ。安価なほど早く腐り始める。俺たちが買ったのは3日で腐り始めるだろう。ならいっそ食べなければいいのじゃないか? そんなことも考えられるがそれは出来ない。空腹状態になり24時間放置するとHPが徐々に減っていくのだ。勿論ダンジョン内には「食糧庫」というものがある。そこでは食糧が得られる。が、その食糧庫まではこの櫓からかなり遠く警備隊も多い。敵の小隊を倒す覚悟で行かなければ確実に死んでしまうだろう。だが、行かなければいずれは死んでしまう。だから俺たちはこの櫓に着た後「食糧庫は二人で一緒に行こう」と決めたのだ。
ズバン!!! ズバン!!!!
俺は攻城櫓の根本の細い木が密集している部分を剣で切り裂く。するとそこが切り裂かれ攻城櫓がバランスを崩し崩壊する。乗っていた兵がどんどん地面に落ちていく。
ここは狩の面でも最高なのだ。今まで戦ってきた攻城兵器は攻撃がダントツに強かったが防御と体力が劣っている。さらに動きも遅い。とても狩りやすいのだ。この攻城兵器が常に闊歩しており狩るとPOPする。LVが上がれば別だが今の段階ではレべリングにはかなり最適だ。さらにここは毎日現れる敵が変化するのだ。今日であればこの攻城櫓『ハウト・フォルト』、昨日ならば巨大なクロスボウ『スランヘル』だ。つまり飽きがなかなかこないのだ。
「そろそろ昼だな……」
俺はウィンドウのワールドタイムを見る。
「やっぱな……」
デジタル式の時計は「11:52」と表示してある。
「疲れたしそろそろ帰るか」
俺が帰ろうと剣を納刀しようとしたとき――。
ズバズバズバ!!!
地面にクロスボウの矢が7本刺さる。
「!!!!」
矢は近くでPOPした攻城櫓の物だった。
「まだかえさねぇってことか……!」
俺はこっちにゆっくり向かってくる攻城櫓に走る。攻城櫓の真下辺りまで近づくと敵は攻撃ができないのだ。俺は納刀しかけていた剣で根本を切り裂く。
ズバァァァァァ!!!!
強烈な音をたてながら木が数本切り裂かれる。
「スラッシュブレイド!!」
強烈な一撃でさらに木が切れる。攻城櫓の耐久はもう少しだ。
「決めてやる! ナイトソウル!」
俺は叫んだ。それと同時に俺の近くに巨大な裂け目が現れる。そこからオレンジに光る巨大な手と剣が現れる。
ナイトソウルは騎士の魂を呼び起こしそれを形にする技だ。巨人の手と巨大な剣が現れそれを操り敵を切り裂く。強靭な攻撃力を持っている。だが欠点がある。それは操作が非常に難しいということとスキル中には動くことができないということだ。この欠点により使うプレイヤーは数少ないだろう。だが俺は全てのスキルを使いこなしたい故このスキルをとどめに使っているのだ。
「ウォォォォォォォ!!!!!」
操作する剣に力を込め一気に振りかざす。
ズバアァァァァァ!!!!!!
攻城櫓は巨大な剣により真っ二つにされ消滅していった。
「はぁ……」
俺は疲れを抑えながら櫓に帰っていった。
「ただいま」
俺は石の調理台で昼飯の調理をするキリノに声を掛ける。
「おかえりなさい! もうすぐでお昼の用意はできます」
「あぁ。ありがとな」
「え……ぁ…え……あ……あぅ……」
ボスン! と音がたったかと思うとキリノの頭の上から蒸気のようなものが上がっている。何なんだあれ……?
数分経つとキリノが「できましたよ」と笑顔で言いながら黒い物体を机に置く。
え……?
黒い物体……?
「キリノさん……? これはえっと……?」
俺は黒い物体を指差しキリノに問う。
「カレーを作ったつもりなんですけど……。失敗しちゃいました」
失敗しすぎだろ!!
塩入れるところを砂糖入れたとかジャガイモ崩れたとかそういう問題じゃねぇよこれ!!
「失礼だとは思うんだが……。リアルで料理できなかったのか……?」
「え……? あ……? はい……」
「やっぱりな……」
料理できない以外に理由がないだろう。
料理スキルも問われるがプレイヤーの持つリアルでの技も必要になってくるのだ。料理スキルが低いがリアルで上手ならばここまですごいことにはならないしもっとまともなはずだ。
「俺はリアルで料理できたんだ。いつかまた教えてやるよ」
「そうなんですか! ありがとうございます!」
頬を赤らめ言った。
「で、だが……」
この黒い物体――カレーを食べるべきであるだろう。俺はとりあえず商店で買ったユンノーシ調味料「スニラマ」といのを振りかけてみる。
ジュワァァァ
おいおいおい!!
スニラマが溶けたぞ!!
「これは……」
もうしょうがないな……。一気に行くしかない!!
ゴクリ……。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺はカレーを一気に口に入れた。
「うぐふ……」
バタッ!
「はっ……!」
俺は目を開ける。
「ここは……!?」
「トールさん! 良かったです! いきなり倒れたんですよ。HPがとても減っていたので戦いによる消耗だと思ってベッドに寝かせました」
「……あ……」
俺は思い出す。あの時カレーを食べて気絶したんだ。HPも戦いでかなり消耗したが回復薬で回復させてあったしたぶんあれだ、料理でHPが減ったんだ。ってそんなのあるのかよ!
「もう大丈夫だ……」
俺は体を起こす。
俺の隣のベッドではイノリが寝ている。
「イノリまだ起きないんだな……」
「だいぶ消耗が酷かったようですね……」
そう言った時イノリの手がピクッと動いた気がした。
さらに足もぴくぴくと動く。
「ん……?」
俺は立ち上がりイノリに近づく。そしてイノリの顔を覗き込むように見る。
パッ
イノリの目が勢い開く。そして覗き込む俺の顔を確認して――。
「お兄様……」
第一声はそれだった。
イノリの目から涙が零れ落ちる。
「お、起きた!」
俺は大きな声で叫ぶ。それが聞こえたキリノはイノリに駆け寄って「良かったです」と言う。
イノリは起き上がる。
「起きてすぐですまないが少し聞きたいことがあるんだ」
「お兄様……。はいなんでしょう」
「なぜ俺を兄と呼ぶんだ? イノリは俺の妹じゃないはずだ。だいたいこのゲームには居ないはずだ」
俺は言う。
イノリは涙を手で拭きとり言った。
「私は祈――木田祈です。トール――木田徹の妹です」
最初の方説明がかなり長くなってしまいました。




