7
βテスト3日目
「たけぇぇぇ! 何もかも高すぎだろ!!」
そう嘆いたのはNPC服屋に行き大量の服を持たされている俺であった。
「合計1900Nです」
店員の声が聞こえる。
買った服は5着。全て安価なものだ。だが1着300N近い高価な物である。俺は金を防具等で消費していたが2000N余っていた。これを買えば100N……。悪魔だ……。
俺は1900Nの入った小袋を木のカウンターに置いた。
「ちょうどお預かりいたします」
店員がそういうとカウンターに置いてあった服が俺のアイテムBOXの中に入った。
「これをキリノに渡せばいいんだよな」
俺はキリノとトレードした。
「こんなにすいません……。これを……受け取ってください」
1000Nを交換条件に付けてきた。
「別にいらねぇよ。自分のために使えよ」
めっちゃ欲しい!!! が、ここで欲を出すにはいかない。
「そうですか……」
キリノは交換条件の1000Nを外そうとしない。どうしたものか……。
「しょうがねぇな。貰えばいいんだろ!」
「本当ですか! ありがとうございます!」
キリノはこれまでにないとても愛らしく美しい笑顔を見せた。
俺とキリノと真一はいつもの狩場である廃村に到着したところであった。
「どういうことだ??」
そこには30人を超えるプレイヤーが行列を作っていた。
「すごいですね……。どうしますか……?」
「どうだなぁ。こりゃ無理ぽいな」
キリノと真一は残念そうに言う。
「廃村はかなり広いはずだ。これだけの人数でも何の支障もなく狩れるはずだ。ちょっと聞いてくるわ」
「気を付けてくださいね……」
キリノは心配そうな表情で俺を見つめてきた。
話によると攻略PTがこの廃村を独占して中で狩りをしているらしい。中に入ると屋根の上から魔術師が魔法を飛ばしてくるわいきなり弓が飛んでくるわで、入り口付近の10人以上のプレイヤーが被害を受けたらしい。その中には殺された奴もいるらしく中の攻略PTには犯罪者がいるらしい。
計画ではこの中に入ってからは回避で攻撃を避けながら攻略PTのリーダーに近づく、というものだ。リーダーの近くでは魔法は撃ってこないだろう。リーダーに接近したら話をつけて独占をやめさせるというものだ。
「いくか……」
集団の声援をあびながら廃村に入っていった。
「誰か入ってきたぞ!!」
魔術師は言った。
「そいつは任せた!」
リーダーの槍を持つ戦士が言った。
「おぅ!」
魔術師はそう答えて詠唱に入った。
ピュユン
俺は廃村の入り口に立っていた。話によるとこの3秒後ぐらいに魔法が飛んでくるらしい。
「フレイムアロー!!」
ドガン!!!!!!
俺の近くに燃え盛る弓矢が落ちる。その弓矢は結晶となり消え去った。
いきなりか……!
運よく外れたのが良かった。あの攻撃が当たれば俺は死んでいただろう。
そう思った。
俺はとにかく全速力で駆けた。
「うぉぉぉぉ!」
魔術師の魔法と狩人の弓を回避しながら現れるモンスターを切り裂き前に進む。魔法と弓の射程外になると大剣を持つ戦士が襲いかかってきた。大剣の攻撃を避けて広場に向かう。残念ながら大剣は大型武器の為ダッシュができない。追いつけるはずがないのだ。そしてとうとう広場に!! と思ったが木で道が遮断してある。このままでは勢い余って木に突撃しかねない。俺はとっさもジャンプし木を乗り越えた。
数分でリーダーのいる広場に着いた。
「お前がリーダーだな」
「そうだ」
リーダーのいる広場には敵がいない。木で広場に通じる道を遮断している。
「道の遮断はお前がやったんだな?」
「そうだ」
俺は怒りを感じた。プレイヤーを遠ざけモンスターまで遠ざけ……。一番先頭に立って戦わないといけないリーダー――しかも槍を持つ戦士が一人で広場にいる。ゾンビ相手に戦っているメンバーの方がよっぽどいいわ! だが今はそんなのどうでもいい。
「どうしてプレイヤーを入れてやらないんだ? ここなら何人でも狩れるはずだ。独占はマナー違反だ」
「…………」
「答えろよ」
「………………」
「答えろや!!!」
つい大声を出してしまう。
「俺はこの大陸を攻略するためにPTを組んだ。そのPTが他よりLVが低かったらいけないだろ? だから俺たちだけ入れてるんだ。お前も此処で狩るなら殺すぞ」
「そんなの言い訳だろ! 大体そんなにすぐ攻略する必要があるのか? まだβテストだ。攻略の必要なんて何もないだろ! それより多くの人とやった方が楽しいだろ」
「うるせぇよ! さっさと出ていきゃぁ済む話なんだよ! それともやんのかよ!?」
だんだんと流れがおかしくなっている……。俺は戦おうなんて一言も言ってないんだが……。
「いい度胸だ! 剣抜けや!!」
いやいやいや! 絶対おかしいでしょ! 穏便に話し合いで済ませたいんですけど……。
「あのぉ話し合いで決めません……?」
「早く抜けや!」
えぇぇぇぇぇ! この方聞いていらっしゃらないよ! 耳に入ってないよ! おかしいでしょこれ! まぁしょうがない……。こうなった以上はやるしかない……。
「分かった……」
俺は抜刀する。
「「デュエルモード!!」」
俺と奴は叫ぶ。
今回はデスマッチモードだ。ようするにどっちかが死ぬまで戦うということだ。
「そういうやぁお前の名前は? 後LVは?」
デュエルモードではお互いのLVを公開するのがマナーとされているのだ。
「俺は李離縁だ。LV7だ。てめぇは?」
「俺はトールだ。LV11だ」
「11!!! んな馬鹿な!! ありえるはずがない!!」
「それがありえるんだよ! デュエルスタート!!」
そう叫び李離縁の元に駆けた。
そして李離縁に接近すると首を狙って横に切り裂く。
「くっ!」
李離縁も何とか避けたようでHPが減っていない。
「へばってんじゃねぇよ! これからだろ? 英雄の証!!」
体中が黄色の気に包まれていく。
「何だ!?」
「見たらわかるさ! トリプルスイング!」
俺は英雄の証により倍になったジャンプ力を使いジャンプし敵の背後に一気に回る。
「なっ! 早い!」
そうりりえんが言った直後に俺は防具で固められた背後をトリプルスイングで切り裂く。
「グァァァ!!」
背後を直撃したパワー2倍のトリプルスイングにより敵のHPが3割減少する。
叫び声をあげるりりえんだったが一歩後退し体制を立て直す。
「今度はこっちの番だ」
李離縁は槍を構える。
そして、勢いをつけて走ってきた。俺は盾を体の前に突きだし防御態勢を作る。
「《トゥートラスト》!!」
ガッガッ!!
李離縁の槍が俺の盾を2突きした。広場内に鈍い音が響きわたる。
俺は反動に押され少し後退した。だがHPは削られてない。良かった……。
「やるな! だが甘いんだよ!」
俺はステップで前進しながら敵の防具に切りつける。
李離縁も負けじと槍で防御を図るが英雄の証中の俺には全く関係ない。防御に失敗した李離縁は一気に体制が崩れる。それを見逃す俺ではない。
「終わりだ!! 渾身の一撃!!!!!」
俺は李離縁めがけてジャンプし、防具のつなぎ目めがけて渾身の一撃を叩きこんだ。
ドガガァァァ!!!
「グァァァァァ!!」
強烈な叫び声を李離縁はあげる。
李離縁のHPは2割程しか残っていない。
俺は最後の一撃を食らわそうと剣を振りかぶる。
「ま、待て! 分かった! 分かった! この狩場は共同だ! 譲るから許してくれ!」
「なら降伏しろ」
「わ、分かった!」
李離縁は画面を操作した。
WIN!!
勝者トール!!
おめでとうございます!!
と、現れた。
「分かればいいんだ。ならさっさと撤退してくれるな」
「あ、あぁ!」
「ありがとうな」
李離縁はキーボードを操作しチャットを打ち込んだようだ。
「これでPTMはここに集まるはずだ」
「分かった。じゃぁこれで失礼するわ」
「あ、あぁ」
俺は木を飛び越えようとしたとき、
「絶対に殺すからな……お前……」
李離縁からそう放たれた。だが俺は気にせず、木をジャンプし入り口に向かった。
その後俺とキリノと真一は廃村で永遠と狩りをした。
途中、βテスト最後だということで運営から街に戻るよう指示された。
そして、戻りβテスト終了祝のイベントをして俺たちはログアウトした。
これが新たなゲームの――新たな冒険の始まりだったのだ。
≪DATE≫
【トール】LV12
職業:戦士<刀盾>
所持金:1498N
武器:血英雄の剣、血英雄の盾
防具:モンスター皮製防具一式(NPC)
スキル:英雄の証LV2、ダブルスイングLV3、トリプルスイングLV3、渾身の一撃LV2、スラッシュブレイドLV2、連続剣技法LV1(新)、攻撃アップLV4、防御アップLV3
【キリノ】LV11
職業:司祭<棍棒>
所持金:1825N
武器:血英雄のメイス
防具:モンスター皮製防具一式(NPC)
スキル:ヒールLV4、ヒーラLV2、プロテスLV2、英雄の証LV1、スターアップLV2、フォーリアLV2、神聖心アップLV2、信仰心アップLV3
【SHIN】LV8
職業:魔術師<杖>
所持金:402N
武器:スタートスタッフ
防具:モンスター皮製防具一式(NPC)
スキル:フレイムLV3、ポイズンLV1、ウィンドLV2、フレイムアローLV2、サンダーLV2、ウォートLV2
フェイシアLV3、ダークレネミアLV4、魔力アップLV2
パッシブスキル:敵からドロップされるアイテム【スキルポインター】を使うとLVアップできる。高LV になってくると数枚必要となる。
誤字脱字、感想、お気に入り登録
よろしくお願いします。
βテスト完