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生存者、そして異変。

無事に救出された真田はBSICに運ばれ厳密な診察を受けた。その結果、彼は保菌者と認定された。かくして彼は隔離生活を余儀なくされた。毎日一度抗ウイルス剤を打たれ、テレビと新聞と電子書籍、常に孤独で、その上会話は窓に仕切られながらされた。まるで囚人かモルモットだと最初彼は怒りを露にしたが、やがて落ち着いた。だがやはり寂しいのかよく窓の外の研究員に話しかけていた。

ある日、彼は切迫した声でそばにいた相田に言った。

「彼女は、彼女は無事ですか?」

「彼女?お名前は。」

「矢幡端子、やはたはたこです。月並区のバーの前で喧嘩別れしてしまったんです…彼女はどうでしょうか?」

「調べます…矢幡、矢幡…」

相田はリスト帳を取り出してしばらく探していた。そしてあるページを開くと相田はそのまま静止した。そして尋ねた。

「そのバーは行き付けですか?」

「あ、はい。高橋さんと言うバーテンダーだけが働いている…」

「高橋…」

「…どうしたんですか?」

相田はリスト帳を閉じて言った。

「矢幡さんですが…」

「はい。」

「…彼女は、既に…屈伸しておられます。」

「!?」

「お悔やみ申し上げま…」

「嘘だ!」

「?」

「嘘だ!彼女が屈伸したなんてそんな!まさに屈辱だ!屈伸の屈辱だ!ああああ!」

真田は叫び続けた。その声は狭い隔離室からマイクで拾われ、どこまでも響いた。やがて落ち着いた真田は、ぼそりと言った。

「彼女に会わせて下さい…」

「え?でも…」

「屈伸してようといまいと、彼女に、会いたい…」


念のため真田は防護服を着けて相田と月並区へ向かった。ここは以前の逆波区よりもさらに進行しているためか、人々がげっそりやつれながら屈伸をしていた。

「まるで地獄絵図だな…。」

と相田は呟いた。道を覚えているのか真田は先へ急ぎ、後を追った。


そして屈伸する人々をかきわけ、ついに、あのバーへと辿り着いた。

バーの扉を開けると、バーテンダーの高橋がうつ伏せで弱々しく屈伸しているのが見えた。そしてその後ろには…

「端子!」

真田はかろうじて屈伸している矢幡端子に近づき、そのまま腰がぬけて崩れ落ちた。

「どうしてなんだ!端子!」

そう嘆き悲しむ真田をよそに相田は周りを見渡していた。ふと、バーの天井に監視カメラを発見した。カメラはすでに停止して作動していない。ひょっとして事件当時の様子が映されてるかもしれない、そう考えて、相田はカメラを回収した。


帰りの際もトラック内で真田に聞かれた。

「そのカメラはなんですか?」

「バーにあったカメラ。」

「ふううん…」



そうして二人はBSICに帰り着いた。相田は早速消毒済みのビデオを見始めた…



「ちょっとちょっと。」

「どうしたの?」

「これ。」

それから少し後、BSICで三人の研究員は得体のしれない青い液体が密封されているビンを発見した。

「何この液体…」

「なんかさっき送り届けられたみたいだけど…」

「なになに…反免疫薬!?」

「何それ?」

「体のあらゆる免疫機能を破壊する薬。」

「なにそれ。せっかく真田さんから血清作ろうとしてるのに誰頼んだの?ねえ、牧中ちゃん。」

牧中と呼ばれたその研究員はなぜか無口で恐怖に怯えたように地面を見つめていた。膝が震えていた。

「どうしたの牧中ちゃん、気分悪いの?」

牧中は突然壁の手すりに駆けよってそれに捕まった。彼女は苦しそうな表情をしていた。足が力が入らないかのようにふにゃふにゃしていた。

「牧中ちゃん?」

耐えきれず、彼女は手すりから手を滑り外してしまった。そのまま彼女は屈伸し始めた。

「そんな…まさか…」

「このBSICで…くあっ!」

「優山くん!ん?わあっ!」

残った二人も屈伸をし始めた。それを目撃したある研究員が非常ベルを押し、そのまま屈伸した。かくしてBSIC内にベルが鳴り響く。

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