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異世界オネェ~20センチのピンヒールで階段から落ちた先は魔王領だったわ~  作者: 夢想PEN
第2章 戦場に咲く乙女の華

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精霊剣

 グロセルの咆哮と同時に、盾を前へ構えた精鋭たちが地を踏み鳴らし、サン・ショウへ迫る。

 サン・ショウは一瞬で後方へ下がって距離を置くと、左腕を掲げて前方へ振り下ろした。


「……全隊、遠距離から――崩せ」


 その瞬間、取り囲むように木上で待機していたアガマ部隊から矢が一斉に放たれる。

 矢の雨が盾に弾け、連続する甲高い金属音が森に響いた。


 その隙に、サン・ショウは腰の鞘から剣を引き抜き、左手を刀身に添えて構える。


「……そこでずっと固まっていろ。好都合だ」


 森がざわめき、空気が揺れた。

 刀身が柔らかく光を帯びた瞬間、彼は大地へ突き立てる。


「“戦技・精霊剣せいれいけん深根天槍しんこんてんそう”」


 ドォンッ!


 大地が揺れ、人間軍の足元から巨大な木の根がいくつも槍の形となって突き上がる。

 隊列は崩壊し、前衛から後衛までの騎士達が悲鳴と共に空へ弾き飛んだ。


「……くそ! なんなんだあの技は!?」


 斧を支えに立ち上がったグロセルが、サン・ショウを鋭く睨む。


「……答える義務などないと、先程言ったはずだ」


 刀身の切先を向け、仮面を直しながら低く告げた。


 崩れ散る人間軍へ、アガマ部隊が上空から弓と魔法で畳みかける。

 うめき声と炸裂音が重なる中、サン・ショウはグロセルを見据えながら歩を進める。


「……戦闘は数がすべてではない」


 音もなく剣を振り抜き、それをグロセルが斧で受け止める。

 火花が散り、薙ぎ払う斬撃を、サン・ショウは流麗なバク転でかわした。


 やがて、グロセルが吼える。


「王国騎士団副団長の名に懸けて、ここで貴様を討つ!」


 斧を高く掲げ、振り下ろす。

 刃が青白く輝き、凍てつく冷気が周囲を覆った。


「喰らえ!!」


 氷の結晶を纏った巨大な斬撃が地面を削り、サン・ショウへ迫る。


「魔法付与武器……だと? ……それでも無駄だ。“——戦技・精霊剣・根氣創盾こんきそうじゅん”——」


 地面へ手を触れた瞬間、根がせり出し、盾の形となって氷の斬撃を受け止めた。

 創造された盾は瞬時に凍りつき、氷の微塵が宙へ舞う。


「これでも駄目なのか……? 魔王軍四天王とは……これほど」


 斧を握る手が震え、汗が頬を伝う。


「……この森では、すべてが俺の味方だ。あきらめろ……討たせてもらう」


 サン・ショウが剣を納め、柄に手を添えて抜刀術の構えを取る。

 縁金が鳴り、舞い落ちた葉が地へ触れた瞬間――紫電一閃。


 刃がグロセルの喉元へ迫った、その時。


 ガキィィン!


 神速の抜刀を、虹色に輝く巨大な大剣が受け止めた。


「アラン殿……!」


 アランはグロセルを背に、刀身を押し返しながら言う。


「グロセルさん、ここは俺に任せてください。俺の仲間も応援に向かっています。あなたが崩れては戦況が破綻する! ……行ってください!」


「すまない……頼む、勇者よ!」


 言い残し、グロセルは立て直しへ走る。


 火花の散る激突の中、アランは柄を握り直して名乗った。


「あんたが四天王か。……俺の名はアラン、人間側の――勇者だ!」


 大剣を振り上げ、サン・ショウを吹き飛ばす。

 距離が開き、森閑の中二人が静かに隙を伺う。


(大剣の男……ようやく来たか)


「勇者アラン……敵なら、消すまで」


 激しい戦闘音の中で、二人だけが静寂にいた。


***

 その頃――

 後方の木の上では、スミレが矢を避けながら身をよじらせていた。


「いやん! ちょっ……危ないじゃないの!」


 枝の上で腰をくねらせ、くねくねと回避。


 双子の嘘つき……

『ここは多分大丈夫だから、私たちは行ってくるね〜』

 とか言ってたくせに!


 ガマちゃんは木と同化して隠れるし。

 ──魔王国の襟巻カメレオンは高性能!

 ……って、そういう問題じゃないのよ!!


 そんなツッコミの最中、下から鬼の形相の二人の兵士が飛び込んでくる。


「おい! アレ落とすぞ!」

「先輩? ……あの人、人間では……?」

「はぁ? あんな男か女かわかんねぇバケモンが人間なわけねぇだろ!」

「そ、そうですね!」


 ……いや〜ん、全部聞こえてますけど?

 絶対許さないんだから。てかこの体勢キツい、腰が死ぬ。泣く。


 矢の雨は容赦ない。避けるたび怒りがメラメラ。


「あんっ、ちょっ……やめっ、やめ……やめろってぇぇぇーーー!!」


 ――“口撃スキル 発動”――


 ピンクの衝撃波が走り、兵士たちがビクンと固まる。


「はい止まりました〜。いい子ね。そこで待ってなさい」


 枝にしがみつきつつ慎重に降りる。


「ちょっと〜、アタシの下着見たら殺すからね?」


 兵士たちはブンブン首を振る。

 その顔、“何か言いたい”のバレバレだけど、許さな〜い♡


 背後に滑り込み、腕を首へ絡ませる。


「アンタらさぁ……さっきから人をバケモノ呼ばわりとか、失礼じゃない?

 アタシね、傷ついたんだけど?」


 先輩が震え声で言う。


「ま、まさか……人間だとは……」


 後輩が即座に乗る。


「わ、私は人間かもしれないと思ってました!」


 罪の押し付け合い。ほんと笑える。


「はぁ〜……何言っても許してあげないけど。

 ま、いいわ。じゃ……一発いっとく?」


「な、何をするつもりだ!?」

「何って?──そりゃ、ナニを蹴り上げんのよ♡」


「えぇっ!? やめてくださーーーい!!」


 アタシの美脚で昇天させてあげるわ。


「では! スミレいっきまーす! キックオーフ!」


 ブンッ!!


「「あ”あああああああああぁぁぁぁぁ!!!」」


 深淵の森に、男たちの悲鳴が響き渡った。

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