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異世界オネェ~20センチのピンヒールで階段から落ちた先は魔王領だったわ~  作者: 夢想PEN
第2章 戦場に咲く乙女の華

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ちょっと~、喧嘩やめなさいよ

  今日も優雅な一日が始まる。

 朝日に照らされて、キラキラお化粧が映える。

 そう、アタシはいいオンナ。


 サン・ショウちゃんと街にいって、買った化粧品が思った以上に肌にあう。

 でも、アイシャドーはやっぱり派手な方がいいわよね~。

 この世界にもあるのかしら? もし無いならアタシが作ってみたら大儲け……アリね。


 そんなことを思いながらアイラインをゆっくり引く。


「このキリっとした目じりが大事なのよ——」


 ドガァアアン!!


 城内を揺るがす衝撃音。

 アイラインは崩れて、歌舞伎役者みたくなる。


「な、何!?!? また魔物の襲撃!??」


 ドアを急いで開けると、メイドたちが悲鳴をあげて騒いでいる。

 ちょうど通りかかったハジカミちゃんを捕まえる。


「ねぇ、ハジカミちゃん! 今の音はなに? みんな大丈夫なの??」


 ハジカミちゃんが肩を揺らし、大きく息を整えて言った。


「……スミレさま! また始まりました!」


「また? またって何がよ」


「ソルト様と、シュガー様の兄妹喧嘩です!」


「……はぁ?」


 同時刻、城内一階・玄関ホール


「シュガー! 今日という今日はぜっっったい許さないんだから!」


 ソルトが、身の丈ほどの鎌を大きく振りかぶり、シュガーを狙って振り下ろす。

 床を抉る衝撃と共に赤い絨毯がはじけ飛ぶ。


「そんなのが僕に当たるわけないじゃん!」


 シュガーが軽やかなステップで鎌をかわす。

 そして互いに距離をとり、魔法の詠唱を始める。


「“清かなる水の奔流よ、荒れたる波間の渦潮よ”——」

 ソルトの伸ばした手に水が集まり始める。


「“浄なる炎の奔流よ、荒れたる火間の業渦よ”——」

 シュガーの手には火が集まり、火球となる。


 二人が詠唱をし始めたその時、

 スミレが二階から参戦。


「ちょっとぉー! 二人とも何してるの!? お城がめちゃくちゃじゃない!」


 ソルトが、魔法を手に溜めながら言う。


「うるさいわね! 新入りは黙ってて! 今忙しいの!」


「そうだよ! これは僕たちの問題なんだ!」


 ふーん。……あぁ、そう。()()()()()ね。自己中が過ぎるわね。

 こちとらメイクが崩れて顔面がかぶいてんのに??


「とりあえず、やめてちょうだいな……」


 もちろん二人は聞く耳を持たない。


「——“水球・蒼波弾……”」

「——“火球・紅破弾……”」


 そして、それぞれの魔法が臨界に到達したその時───


 ——“口撃スキル発動”——


「やめろって言ってんだろぉぉ!!! こんのクソガキどもがー!!!」


 城内を揺るがす野太くドスの効いた声と、ピンクの衝撃波。


「「ヒィィィッ!!!」」


 双子はビキィッと固まり、冷や汗ダラダラ。

 メイドさんたちも涙目でピシッと背筋が伸びている。


 メイドさん達ごめんなさいね。

 ……でも、今はこいつ等を締めなきゃならないの。


 アタシはゆっくり螺旋階段を下りて、動けなくなっているソルトの背後へ。

 肩に手を置き、真っ赤なネイルでソルトの首元を小指から順に、皮膚を優しく刺していく。


「……ねぇ? ソルトちゃん? なんで二人で暴れてたのかな〜? オネェさんに教えてくれないかなぁ?」


 優しくて、甘くて、そしてドスの効いたオカマの声。


「あっ……あっ……シュガーが、私の隠してたお菓子を取ったの!」


 怯えながら吐き出した喧嘩の理由。


 お菓子? はい解散。


「あんたは言い訳あるのかい? シュガー」


 目線を向けると、歯をガタガタ言わせながらシュガーが答える。


「……だって、いつもソルトだけ美味しいの食べてるんだもん!」


 思わず深いため息が出る。


 そしてソルトに拳骨を一発。

「いたーい!」


 そのままシュガーに近寄って二発目の拳骨を食らわせる。

「うぅ……!」


 二人の中央に立ち、説教開始よ。


「アンタら、こんなにめちゃくちゃにしてどうするの? これ誰が片付けると思ってるの? アンタらこれ片付けたことあるわけ?」


 二人は顔だけ横にふる。


「……そうよね。さっき、二人の問題ってほざいたわよね?

 アンタら二人だけの喧嘩なら止めないわ。

 ……でも、周りを見てみなさいな? この惨状を片付ける人がいるわよね?

 もしかしたら、巻き込まれて怪我をしてたかもしれない。

 ……それは四天王としてふさわしい事なのかしら?」


 また二人は首を横にふる。


「そうよね? 守る立場の人が仲間を傷つけたり、迷惑かけちゃダメじゃない。

 ……今度から外でしなさい。

 それと、片付けもちゃんとしなさいね? ……分かったかしら?」


 二人は無言で頭を縦にふる。


「返事は!!?」


「「はいぃぃい!!」」


 こうして朝の大騒動が終わった。


 ───その日の午後


 補修工事を手伝わせた二人を呼び出し、食堂へ。


「ちょっと、二人ともそこに座って待ってなさい」


 奥からトレーを押してきて、銀色の蓋が被さった皿を二人の前に置く。


「これは……?」

 シュガーが言う。


「まぁ、開けてみなさいよ」


 二人が同時に蓋を開けると、そこにはフワッフワのパンケーキ。

 上にはホイップクリームが贅沢に乗っかり、チョコのソースがかかっている。


「わぁ! おいしそう! これ、何ていうの?」

 ソルトが目を輝かせて言う。


「これはね、“パンケーキ”っていうの。アタシの必殺料理よ。

 これでオトコを……んっ、なんでもないわ。とりあえず食べてみなさいよ」


 アタシがそう言うと、双子ちゃんは一気に頬張り始めた。


「「美味しー!!」」


「そう。……よかったわ。アンタ達が喧嘩しないで、いい子にしてたらまた作ってあげる」


 ソルトが、パッと動きを止め、口にパンケーキを入れたまま話す。


「ほんと? また作ってくれる?」


「えぇ。アタシは嘘は嫌いなの」


「「いえーい!!」」


 双子は顔を見合わせ、ハイタッチする。


 その日を境に、

 アタシは二人から『オネェ様』と呼ばれるようになった。

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