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翌日・部活開始前ーー「宿題勝負」結果発表

夕陽が、道場の障子を赤く染めていた。


いつものように稽古前、風花とカナは畳の上に立ち、無言で向き合う。

お互いの表情は硬く、しかし、どこか楽しげでもある。

これは彼女たちにとって、もう“儀式”のようなものだった。


「……じゃあ、言おうか。昨日の“宿題”」


先に口を開いたのはカナだった。

その声には、ほんの少しだけ勝者の余裕がにじんでいた。


風花は、拳を握ったまま、一歩も引かずにうなずく。


「うん。数、ちゃんと覚えてるよ」


二人の間に、数秒の沈黙が流れる。

外の蝉の声が、やけに大きく響いている。


「……私は、72発」

カナの声は落ち着いていた。


「……私は、69発」

風花は、わずかに唇をかみながらも、堂々と答えた。


たった3発。

でも、その差の重みを、2人は知っている。

眠気と、痛みと、恐怖と、何より“孤独”に打ち勝って叩き込んだ回数。

そのわずかな違いが、今日の勝敗を分けた。


風花は、くっと苦笑した。


「また、負けたか。2日連続だね……」


すると、カナは軽く笑って答えた。


「でも、昨日は“おかわり”10発も耐えたでしょ。あれは本当に凄かった。尊敬してる」


「……ありがと。でも、それとこれとは別。勝負には、ちゃんと負けたんだから――」


風花は、立ち上がり、腹に手を当てた。


「今日も、受けるよ。5KG、50発。ちゃんとね」


カナもまた、ボールを取りに向かいながら、静かに言った。


「了解。今日の風花には、昨日以上に本気でいくから」


道場に、また静かに緊張が走る。


夕陽の中、2人の“挑戦”はまだ続いていた。


この毎晩の「宿題勝負」が、確かに2人を強くしているのだった。

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