試合終了
風花は、仰向けになったまま顔をしかめていた。「頑張り過ぎた代償」を負った小さなお腹には、赤くなった無数の痕跡が残っている。深く呼吸をするたびに、ズキリとした痛みが腹の奥から湧き上がってくる。
「悔しいなー…」風花はぽつりと呟いた。「今回こそは、ボール落とし免れると思ったのに。あれを試合後にやるの、すっごくお腹痛いから…ほんとにキツいんだってば…」
その声には悔しさと、どこかあきらめにも似た感情が滲んでいた。
カナは、そんな風花の横でタオルを持ち、額の汗を優しく拭いてやっていた。口元には、勝者の余裕が漂っている。けれど、その目には風花への尊敬も、きちんと宿っていた。
そして、風花がようやく呼吸を整え、少しだけ目を閉じた瞬間――
「風花。賭けを覚えてる?」
その一言が、スッと刺さるように風花の耳に届いた。
風花の目がゆっくりと開き、カナの顔を見上げる。カナは、ニヤリと笑っていた。まるで、待ちに待ったご褒美の時間がやってきたかのように。
「うぅ……カナ、まさか今やるつもりじゃ……?」
「まさかじゃないよ。ちゃんと覚えてるでしょ?『試合に負けたほうが、5KGのメディシンボール50回落とし』って。風花が決めたルールだよ?」
「うぅ……覚えてるけどさぁ……っ、今の私のお腹、完全に壊れてるのに……鬼だよカナ……」
カナはくすっと笑いながら立ち上がると、風花に肩を貸して立たせる。
「安心して。ちゃんと、優しく落としてあげるから――最初の10回くらいはね?」
風花は顔を覆った。
「ぜったい優しくないやつだ……」
そして、風花は「罰ゲームタイム」に臨むべく、静かな部室に連れられてゆくのだった。