3話
それから、舞琴はどうにか落ち着きを取り戻した。
やってしまったものは仕方ない。
なら、切り替えが大切だと自分に言い聞かせる。
「今の私どう思う?」
「え?どうって?」
なら、せっかく掴んだチャンスをものにしてみせる!
こんな機会もうないかも知れない。
蓮太郎は唐突な質問に意図が察せず聞き返す。
勢いで質問したせいで、内容を説明するのを忘れた舞琴は慌てて補足する。
「その……話し方とか……み、見た目とか」
「ああ、なるほどね。そうだね。今の方が話しやすいよ。それに」
「うん?どうしたの?」
恥ずかしそうに問いかけた舞琴に蓮太郎は視線を外してしまった。
どこか頬が赤くなっている蓮太郎はゆっくりと言葉を紡いだ。
「可愛いと思う……」
「そ……そうなんだ」
舞琴と蓮太郎はお互いに照れる。
蓮太郎は舞琴を褒めたことで。褒められた舞琴も視線を逸らしてしまう。
舞琴の服装は清楚系と言った感じた。
少し寒いので、クリーム色のカーディガンに薄緑のプリーツスカート。
普段、舞琴が好んで着る服装だった。
「柊さん。そ、そろそろ出ようか。ちょうど飲み終わった頃だし」
「そ……そうだね」
居た堪れなくなった2人は席から立ち上がる。
蓮太郎は自然に伝票を取ると会計に向かおうとする。
舞琴は慌てて止める。
「私が払うよ。色々迷惑かけちゃったし!」
舞琴は財布を取り出し引き留めようとする。だが、蓮太郎は微笑んでこう言った。
「ちょっとくらい、カッコつけさせてよ」
「……え」
舞琴はまた固まってしまう。
蓮太郎は会計に向かった。彼の何気ない優しさに照れてしまう舞琴だった。
蓮太郎が会計を済ませて、2人はカフェを出た。
「滝くん、明日は暇?よかったら私と会ってくれない?」
解散する前、舞琴は勇気を振り絞りデートに誘う。
戸惑う蓮太郎は人差し指で頬を掻いている。
(ま、まさか断る理由を考えてる?クラスメイトでしかない私じゃ図々しかった?で、でも……)
「ほ、ほら!お金も早く返したいし!大金だから、学校で渡すのも気が引けると言うか!学校で盗難あるかも知れないし。それに、私も早く返したいしというか!もっと仲良くなりたいと言うか!……あれ、今のは違くて!……いや。別に仲良くなりたいってのは本音で……あれ、私何を言ってーー」
「落ち着いて柊さん。深呼吸深呼吸」
舞琴は考えすぎてしどろもどろになる。蓮太郎に促され深呼吸をする。
「あのさ、柊さんって意外に抜けてるよね」
「ぬけ…え?」
「だって学校だと落ち着いてるのに、今日はいろんな柊さんが見れる」
蓮太郎は混乱する舞琴に微笑んだ。
どう言葉で表せば良いかわからない。蓮太郎は予定を確認する。
「……お昼なら空いてるけど」
舞琴は頷いた。
「……わかった!また明日!」
嬉しさのあまり、舞琴はそう言って走り出す。
足取りは軽くなり、翼が生えているようだった。
「ちょっと待って柊さん!」
だが、数十秒たった後、蓮太郎は慌てて後を追ってきた。
どうしたのだろうと立ち止まる。
「滝くんどうしたの?そんなに慌てて」
息を切らせながら走ってきた蓮太郎を気遣う舞琴。
蓮太郎は呼吸を整えると、呆れ顔となる。
「やっぱり柊さん抜けすぎるよ」
「さ、さっきから失礼にも程があるよ!私も怒るの時は怒るんだけど?」
心当たりのないポンコツ扱いにムッとした舞琴。
そんな姿に蓮太郎は困り顔で聞いた。
「当日、何時にどこに集まるの?連絡先ないから交換しよ?」
「……あ」
舞琴は恥ずかしさのあまら、徐々に顔が真っ赤になった。
2人は連絡先を交換した。
連絡先を交換して、12時に駅前に集合となったのだった。