噂
闇の中でそれの声が聞こえた。
「おめでとうございます。約1時間分を取り立てました。取り立てたものは帰還後発動します。それでは。」
声がするほうに手を伸ばし叫ぶ。
「待ってーーーーー」
布団からばっと体を起こし、固まる。どうやら戻ってきたみたいだ。体の隅から隅を見ても特に変化はない。気になってごみ箱を見ると、時計だったものがある。
「なんだったの。」呟き、カーテンに体を預ける。
視線を落とすと隙間から光が出ているのに気づき、外を見る。
そこには絵本の世界でしか見たことのない朝日があった。
なぜだか涙が流れる。
私は空を眺め続けた。
日は1時間ほどで西に沈んでいった。
ある日のバイトの帰り道、不審者にあった。
「この前はいいものを見せてくれてどうも。目が慣れるのが早かったからか、見にくくなるのはちょっとだけだったね~。」
フードの下は少し笑っているように見えた。
「なんの用です。というか、あの世界何だったんですか。いろいろと怖かったんですけれど。」
「さあね。まあ、それは君たちが今後考えていくところさ。この町はまだ債権を持っているからね。」
イラッ。
「ちょっとくらい教えてくれてもいいのでは。」
「また今度、取り立て役になったらね。」
そう言って闇に消えていった。