借る
仲間が増えて、情報収集に戻ろうとしたとき、突如それは現れた。
「そんな、もう一時間もたったっていうの。」
少女の驚きを無視してそれは告げる。
「これより狩りを始めます。時雨町における現在の債権は約150年分です。頑張ってください。」
そういうとそれは分裂し、小さくなって私たちの周りを衛星のように飛び始めた。
そして、黒い線で右方向を指し示す。
「あっちへ行けってことじゃない。」そう言い、寝起きくんが走り出す。
「とりあえず、行ってみますか。」私たちもそれについていく。
しばらく進むと、強い光を放つ何かが見えてくるもまともに見ることができず、何の形をしているのかわからない。ただ、本能的に危険を感じてそれ以上進むことができなかった。
「狩りってあれをやれってことなのかな?」
「こっちがやられる側のように思えるんだけど。」
少女の意見に賛同する。やり方もわからないうえ、これ以上近づきたくないと思う時点でこっちが獲物だろう。だが、このまま逃げるのもよくない。
「様子見して、情報を得ましょう。逃げるのも、やるのもそれからだと考えます。」
「それもそうだね。」
今後の方針が決まり、再び光のほうへ向き直す。
その時だった。寝起きくんから回し蹴りをくらい、吹っ飛ぶ。起き上がって、「急に何をするんですか。」と言おうとした口が開いてふさがらない。
二人が闇に飲まれ、闇が小さくなっていく。そして、その横で強い光が笑っているように見えた。
考えるよりも先に、本能の届かない不思議な力が働き、光に殴りかかっていた。
しかし、次の瞬間には自分も闇に飲まれていた。