既知の世界はどこにもない
探索を始めてどのくらいの時間がたったのだろうか。変わらぬ光景、変わらぬ肌感覚、疲れない体、その他変化のないものばかりで気が狂いそうとも思えた。しかし、実際に狂乱することはなかった。少女とお互いのことを話しながら探索していたからだ。少女は学校帰りに時計を同じ不審者から受け取り、目が覚めたらここにいたこと、得手不得手、趣味なんかを話してくれた。
それからまた長い時間が過ぎ、話すこともなくなってきていたころ、再びそれは突然現れた。
「ちょうどいま、皆様が集まりました。よって規則3条に従い、狩りを1時間後に始めます。自分を見失った方、行先のわからない方、投げ出した方はご注意ください。ではまた1時間後に。」
そう言って砂のようにそれは崩れる。
「あなたはいまのどういうことかわかる?」震える声で少女が聞いてくる。
「何も。でも今ので一つ気づいたことがある。」
「何?」
「私たち以外にもまだほかの人がいるということ。探して、何か知らないか聞きに行きましょう。何もしないよりましなはずです。」
「そうだね、だったら善は急げだ。」
そうして走り始めた。
探し始めて体感20分、ついに一人、爆睡してる人を見つけた。
「よくこの人この明るさで寝られるね。」
「とりあえず起こして話を聞こう。」
とりあえず体を揺らしたり、電動ベットのように上半身を起こしてみるも、起きない。むしろ鼻提灯を膨らませる余裕まで見せてくる。割るか。パアアンと風船が割れるときのような音が響く。次の瞬間、「んひゃっ。」という声とともに頭突きがとび、顔を覗き込んでいた少女のおでこにクリーンヒットした。
「いたぁくない。ていうかここどこ。」
寝起きくんに状況説明、自己紹介をした。
狩りの5分前のことだ。