ククノ
〇夕暮れ 東京 公園
二郷堕古炉 - ニゴウダブル - (16)ベンチ に座って空を眺める。その前には通学 用 ロボ:@.jpが居る。
二郷「部活を休んで、公園に居るなんて… 俺ってなんだか…」
そこへ@.jpに乗り来た、星雲青華-セイ ウンアオカ- (16)
星雲「んもう!ダブルってば、こんなとこ に居てるんだから。ほら、これあげ る」
@.jpは、社会凡庸型AI搭載ロボットとして世界中で活用され、大きさは2mから30mと様々であり、バイクや自動車、重機、情報処理や様々な活用をしていて生活には必要不可欠となりエネルギーは、電気である。
彼らが乗るのは2.5mの人型ではある物の車輪が手足と胴体に着き、微可変式となっていて、細かな移動と作業を可能にする高校生にしては、少し機能が多いものとなる。
搭乗時は、ヘルメットと専用スーツを着用し背に跨る様に乗り、全面の画面で機能や状態の確認が出来る他、音声確認と念波超通信での感覚的確認も可能となる。
そのブレインコントロールにより感覚的な操作と基本AIに基づき自立行動する仕様だ。
二郷堕古炉は、星雲青華が投げて来たジュースを受け取ると、今日の出来事を話した。
星雲青華の表情は、曇った。
「けど…」
とだけ告げ電子式モータにイグニッションし、ブレインコントロールでの操縦モードへと移行した。
- レベルB 帰宅AIシステム起動 -
「それじゃ、また明日。そうだ、学校での起動実験失敗は、ダブルのせいじゃないから大丈夫よ…っと?あ、あれ?!」
突然、地震の様な振動が街を襲う。
ベンチから立ち上がり@.jpに乗り込む二郷堕古炉。
「なぁ!オレ、実験参加はやめる!それにコレ多分、今日の実験失敗のせいだ。@.jp モードQに移行だ。AIはナビシステムに変更、目的地はローレライ。鳴き声は、犬に似てるアレで頼むよ」
- オーケイ ダブル ワン ト ホエマス -
「出て来いよ今日こそ…っ!」
星雲青華とは、反対に走り出した二郷堕古炉を追う者が居た。
黒いゴミ袋の様な物体だ。
その固まったゴミ袋の様な物の先に、銀色の棒が飛び出しており、今にも何かを発射しようとしている。
しかし時速60kmで走る二郷に追いつけず、ビルの隙間へと空を飛んで入ってしまった。
- ニゴウ キマシタ -
「え?何処に?!」
二郷堕古炉が、返事をすると目の前から無数の小さなドローンの様なモノが飛んで来る。
二郷堕古炉は、それを1つ掴んで確認する。
「コレだ!博士の言っていた宇宙人の宇宙船から少し漏れて隠れてた電機生物!@.jp回収モードに移行したい、けっどもぉ?」
@.jpを走りながら回転させるも無数に飛んでいる、円盤の様なドローン型電機生物を捕まえる装備は無い。
二郷堕古炉は、ヘルメットへと超通信を送る。すると@.jpは、走行モードから多目的ロボットモードへと可変する。
@.jpの手足の車輪は、手と足に変形し胴体の車輪は、肩や腹、腿の部分へと分裂し移動する。
二郷堕古炉へと張り付く様に変化した@.jpは、他のモノとは違う。
博士と呼ばれる改造屋に改造された改造ロボであり、通常よりも細かな動きに対応する。
「いや、コレ…変形したって1個ずつ掴んでも…30匹くらい居るかな…いやっ、でも、これは…アレでコレでぇ…けっどもぉ!」
とりあえず3mほどジャンプして、また1匹掴んでみた。偶然にも2匹捕まえれていた。
「あ、2匹捕まえれてる…固まって飛んでるからか…」
電機生物は、不思議と捕まえると動かなかった。@.jpの鳴き声で鎮静化出来ているのかもしれない。
「博士、なんか隠して無いかな?」
- ナニモ アリマセン -
溜息をつく二郷堕古炉の前を、高速移動する2m程の黒いゴミ袋。
「えぇ!な、なに?!」
目をやると高速で移動しながら電機生物の群れに突っ込んでは、何処かへ行く事を繰り返す。
「違うタイプの電機生物!それも大きいし…でも使えるかも!」
とりあえず@.jpの物入れに3匹を収容し、黒いゴミ袋の電機生物についている銀の棒目掛けて飛んだのだが、しかし。
目を開けると海の上空だった。
「夕暮れサンセットにトワイライト…輝く海に…白いっ雲!?」
一瞬にして高度を上げた黒い電機生物に捕まり、魔法の箒で空を駆ける魔女へと進化した@.jpであるが、二郷堕古炉は喜びはしない。
「あ、あのぉ~、俺って帰れるんでしょうか?何処まで行きますかぁ~?@.jpって空も飛べないし、そんなに丈夫じゃあ無いんですけど…」
下を見ると小島が見えて居た。
次には、海の中へと入り小島の下にある海底洞窟へと進んだ。
ヘルメットをしながらも息を止める事に必死の二郷堕古炉と、雨に濡れても平気なだけの@.jp。
- ワタシ オヨゲマセン ノデ ダブル ワタシ カイスイ ハ ニガテ デ イキ ツヅキマスカ レーダ デハ モウスグ サンソ ガ アリマス -
目を瞑って息を止め、何かを考えている二郷堕古炉。
次々と巻き起こる事態の最終章は、目の前の宇宙船と博士だった。
「やあ~、二郷。こんばんは。あれ?どうなったの?」
黒いゴミ袋は、博士の隣りで座って居る。
二郷堕古炉は、ただ黙って居た。
ゴミ袋から1人の女の子が出て来る。
ロボットに見える感じの。
頭に銀の棒が飛び出し、髪と思わしき部分と同化している。そのせいで130センチ程の身長が150cm位に伸びていそうだ。
「ハジメマシテ。ダブル!ワタシは、宇宙から来た電機生物の姫ククノと言うワ!ヨロシクネ!街に居た電機生物をミセテ」
- リョウカイ シマシタ -
二郷の指示が無くても@.jpは、AIを働かせ物入れから3匹の電機生物を出した。
それはククノの近くへと行き周りを飛んで居た。
それは頭の棒に近付くと黒いゴミ袋の様になり、棒の中心の穴に吸い込まれた。
「早くて見えなかっただろうケド、街に居た電機生物は、ワタシが回収したわ。小さなドローンと同化していたノネ」
ククノの足元にドローンが転がっていた。
「ハ、博士!俺に回収しろって言ってたの嘘だったんですか?!この子が回収するの?」
「いや…な、なんて言うか~、目立つし止めたんだけど、飛べるし何処にでも行けるとか言ってワタシ ジャ ナイト モドセナイ とか言って会って2日目だし、なんか良く分かんなくて…学校来たのも、僕の改造場の機械に偶然居た電機生物を捕まえに来てたみたいで~話してたら、そんな感じかなぁ~?ってキミに頼んだんだよ。@.jpの改造バレて落ち込んでたし元気出せよっ!て意味で~」
「…」
二郷堕古炉は、頭を落とし悲しんで居た。
星雲青華から通信が入る。
「もしもし~聞いてる~?寝てるかな?!街でドローンがいっぱい落ちてたんだって。友達が1個拾ったとか言って明日、私に見せたげるとか言って…」
「知ってる。俺の前にも3つ落ちてる。俺も明日オマエに3つあげるわ」
「あ、起きて…え?なんで?ドローンって雨みたいなもんじゃないよね?不思議なんだけど!」
「それよりコレ見て」
「え?!ナニコレ?新しいAIロボ?@.jpの新型?博士もいるじゃん!てか後ろの…UFO?」
「俺、今日、家に帰れないかも」
「宇宙行くとか?博士~!ワタシもUFO乗りたい~!」
それを聞いたククノと博士は、首を横に振り二郷を見ていた。
「ダメだって」
「え~!おケチ3人組!」
「てか俺、この島から帰れます?博士どうやって来たんですか?」
ククノの背に乗る博士と抱き抱えられ空を飛ぶ@.jpと二郷。
博士は、濡れている。
「あの…なんかすんません。俺が帰りたいとか言ったばっかりに…ククノさん。重く無いですか?」
「ワタシは大丈夫ですよ、何でも良いんで」
「僕は大丈夫じゃないですよ~、何でも良くないんで~人間だし~」
とりあえず学校の研究所でククノと別れ帰って来た。
超高速飛行で帰るククノは、あの島まで1分とかからないそうだ。
博士のせいで30分はかかった。
「あの…電機生物問題って解決ですか?」
「ん~多分だけど、そうかなあ~?」
「んじゃ、俺帰りますね!」
帰宅し帰りが遅いと怒られるも、部屋に行きベッドに寝る。
---翌日。
部屋の窓から見える景色は、魚型の電機生物が無数に居る光景だった。
水族館の様になった世界は、とても綺麗だったが街中に叫び声とサイレン。
そして警報が鳴って居た。
家の中も五月蝿い。
「今日、学校…」
「何言ってんのよ!休みよ!それよりパパも何か言って!」
「ん~、テレビじゃ害は無さそうって言ってるけど…」
「アレ、宇宙から来た電機生物って言うらしいよ」
「へぇ~、良く知ってるなパパ、初めて見たわ」
「私もよ…」
家族の会話を終えた二郷堕古炉は、星雲青華へと公園に会いに行く。
「ダブル~!見て~!」
星雲青華の@.jpの手には、エンジェルフィッシュ型の銀色に照り返してる電機生物が居た。
「あ!捕まえてる!ククノに怒られるぞ、空に返せよ!」
「え~、もったいない、おケチ~」
そう言って星雲青華は、@.jpに離す様に念波を送った。
エンジェルフィッシュ型は、空へと飛んで行き群れへと帰る。
「はぁ~、凄い事になっちゃって。ダブルは、どう思う?この事態」
「ん~昨日、話したり見せたりしたのが原因だし、コレあげるドローン3つ」
「正直、要らないし博士にあげたら?でも1個だけもらおかな?」
星雲青華は、物入れにドローンを1つだけしまった。二郷は、残りの2つを物入れにしまい空を眺めた。
「そうだ!@.jp、鳴き声を試してみよう!えーと、猫は?」
- ワカリマシタ ニャア ト ナキマス -
人には聞こえない鳴き声を出し@.jpは、空へと飛ばす。
「ん?な、なんか集まって来てない?それとアレぇ~」
「ククノだ!おーい!ククノ~!」
「あ、ダブルサン、オハヨウゴザイマス。大変な事になりました。ワタシ、1人では、全部捕まえられないんでス。増えました突然イッパイに」
博士へと通信するも寝ている様で、代わりのAIが出ただけだった。
ククノと電機生物を捕まえると伝言を残した。
「ねぇククノちゃん、私、星雲青華って言うの。よろしくね!」
「ハイ、よろしくお願い致しマス」
2人は、握手をしている。
二郷は、記念撮影をした。
次には3人で。
「ハイ、ワタシは宇宙から来ました。飛行船は島に、少し漏れた電機生物は、多数に分かれてしまい増えました。地球には沢山の資源があり移住しようと思ってると思います。融合と分離を繰り返して居ます。人も対象としています」
2人は青ざめている。
「え?なんて?」
「冗談だよね?あの魚って何なの?生きてたやつ?海の中の?」
「ハイ、ワタシは、やめといた方が良いと言いましたが聞いてくれなくて…どうしましょう?」
「そ、その頭のやつでは無理なの?昨日みたいな感じで…」
「ハイ、お腹がいっぱいで無理です。今の数を食べる計算だと3ヶ月程かかります。その間もタクサン、増えますシ。ずっと食べきれないデスネ」
「ぴえんダヨネ!」
星雲青華の顔は、引き攣っている。
二郷は、空を見ているが何も言わない。
@.jpの鳴き声は、何処まで届いているのかも分からない。