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侍女マリアの日記6

ゼン医師が帰国されて数日後に、鬘屋から連絡がきたので私はとりにいきました。



鬘屋の店主はいい仕事をしてくれました。


「とても質のいい髪の毛だったからついはりきっちゃったよ。今度は譲ってくれないかな?」



「いいえ!二度はないです!」



店主をびっくりさせてしまいましたが、リネージュ様の御髪は二度もこのような事態にはなりません!

リネージュ様も負けないと仰ってましたので!



ですがこの鬘を早く届けて差し上げたかったのです。


息を切らせながら屋敷に戻りました。

リネージュ様はお庭で日光浴をされていました。

頭の部分は私が編ませていただいた帽子をかぶっておられます。

でも、これならと思い、静かに…でも急ぎでリネージュ様にお声がけいたしました。

私に気づいたリネージュ様がふと目元を柔らかくした表情でした。



「あら?マリア。用事は済んだの?」



リネージュ様は立ち上がろうとしてふらついてしまいました。

私は急いで、リネージュ様を支えに走りました。

そして椅子に掛けていただきました。


「ごめんなさいね。有難う」



「いえ、とんでもございません。用事のほうは済みまして、今日はリネージュ様に受け取ってほしいものがございます。」



「あら、何かしら?」



私はそっとリネージュ様の膝の上に包み紙を置きました。



「まぁ?お土産?何かしら」



細い指でゆっくりゆっくりと包み紙を開けてくれています。

私も内心はドキドキです。だってこれわたしの独断でしたので。


「これは…」




リネージュ様は一言呟いて、じっとその鬘を見つめておられました。



「これは、リネージュ様の御髪でございます」



「あの時の…?」


私はリネージュ様の目を見つめながらお伝えしました。


「あの時、抜け落ちてしまった髪の毛を拾い集めて、ナミル医師たちに相談いたしました。女性にとって髪の毛は何にも代えがたいものです」



「あ…」


「よ、余計なことだったかもしれません、私の独断で鬘屋で作ってもらい、今しがた出来上がったということで取りに行ってまいりました。申し訳ありません。」


勢いよく私は頭を下げました。

もしかしたら余計なことだったのかもしれないと今更に思ったのです。



「いいえ」



「え?」



「いいえ…とても嬉しいわ」


リネージュ様の優しい笑顔がそこにはありました。



「有難う、マリア。これつけてくれる?」



「か、かしこまりました!!」


私はリネージュ様からそっとその鬘を受け取りました。


「リネージュ様、お部屋でセットさせていただきたいと思います。」



「そうね、そろそろ一度部屋に戻りましょうね。」



リネージュ様も立ち上がり、私たちは部屋に戻ったのでございます。


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