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侍女マリアの日記3

私はリネージュ様の御髪(おぐし)が落ちていくのを見ているしかなかったのです。





リネージュ様は、ご自分の手が届く範囲の髪の毛を引っ張られました。


「リネージュ様!!何をっ?!」



病気でさらにやせ細ってしまった腕でをひっぱられておいででした。


「マリア…」


「は、はい」


「髪の毛を一緒に引っ張って頂戴。そしてそのあと、頭を綺麗にしてほしいの…」


私の方からはリネージュ様の表情は分かりませんでした。

しかし、その声は本当にか細くて今にも消えそうだったのです。



「…かしこまりました」



私はそっとリネージュ様の御髪(おぐし)を触りました。


貴族として手入れを欠かさなかったリネージュ様の御髪はとても綺麗で手触りの良いものでした。


『きっと、売れば高価な(かつら)になる…そうだわ!!』



私は自分の思いついた考えはリネージュ様に伝えず、殊更丁寧にリネージュ様の御髪(おぐし)を大切に扱いました。


そして、紳士が髭をそる剃刀で丁寧にリネージュ様の御髪(おぐし)を剃りました。



「それは捨てておいて頂戴ね…」



やはり御髪(おぐし)が抜けたショックからなのか、食欲がなくなりその日は一日ベッドの上で過ごされました。


私は、医師団へリネージュ様の件を報告しました。

医師団は髪の毛も調べたいと私から取り上げようとしました。

しかし、すべてを渡すわけにはいきません。


「本当にすべて必要でしょうか?ご主人様(リネージュ様)に鬘を作って差し上げたいのです。少量でしたら調べるのに使っていただいて構いません、どうかお願いいたします!!」



医師団は難しい顔をしていたが、ある一人の男性が


「それは本当に必要なことか?」


「勿論でございます、男性には理解しがたいことかもしれません。女性にとって髪の毛とは命に等しいものでございます。病に侵され、髪の毛までなくなってしまったら心が…生きようとする気力は奪われると思います」



「ふむ…生きる気力か…」



一人で納得されずにどうかリネージュ様のものを取り上げないで!!と私は憤慨しておりました。

悟られまいと顔には出さずでしたけれど。


「…わかった。鬘に必要な分だけ持っていくといい。それ以外はこちらで管理させてくれ。あくまで治験に来てもらっているので協力してもらいたいのだ」



「有難うございます!!」



そうして私は無事に鬘屋にリネージュ様の御髪を持ち込むことができました。


そしてそれが出来上がるまで、リネージュ様の頭を冷やさぬように帽子を編むことにしました。

帽子を編んでいるとリネージュ様が

「いつもあなたの心遣いに感謝しているわ、それが出来上がるのを楽しみにしているわ」



心優しいお声をかけていただけて私は嬉しかったです。

リネージュ様にはさらに喜んでもらいたい、私が貴方に受けた恩を少しでも返したい…その一心なのです。


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