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衝撃的な告白を受けてから一心不乱に走りながら帰りたくもない自分の家に帰った。何故帰りたくないか…俺の育ってきた家庭環境は複雑そのものだから。帰っても誰も「おかえり」と言わない。誰も俺の事なんて興味もない。

5歳で大好きだった母親と死別。父親は数年もしない内に別の女と結婚。子供も出来て俺の存在は邪魔でしかなくなった。それからだろうか。生死について人より深く考え、死んだら亡くなった母に会えるんだろうかと常に思うようになったのは。


居場所?それって何。

家族?一緒に居て楽しいもんなの?


学校に行って教室入るとさ、皆が幸せそうに見えるんだ。自分だけポツンと外野に居て、人を妬んで。


あ…今気がついた。自分で自分の事を分かってなかった。俺は「普通」なんかじゃない。異常者だ。それに気付きたくなくて心に蓋をして普通の男子高校生を演じてるんだ。


「あら、もう居たの」


嫌悪感すら感じるその声で我に返る。

父親の再婚相手…継母だ。

一緒に暮らし始めて10年近く経つというのに、俺達の関係は良好ではなかった。血の繋がりなんて関係ないと言う人もいるけれど、それは同じ苦しみを味わった事がないからそんな綺麗事が言えるんだと思う。父さんも再婚してから変わってしまった。


俺…何で生きてるんだろ…

何処に居ても独りぼっちで孤独で虚しくて。

考えれば考える程涙が零れそうになり、此処では泣けないから急いで階段を駆け上り自分の部屋に入った。


そしてこんな時に黒須の言葉を思い出す。


「俺には心開いて欲しい」


いつからか氷のように冷たく閉ざしてしまった心。それをもし溶かしてくれる人が居たら…その相手が黒須だったら…


そんな夢物語を想像してしまった。

変だな…女の子との明るい未来は想像出来ないくせに、黒須との甘い将来は妄想出来てしまうなんて。

黒須は今日一日だけで俺の作り上げてきた殻を割ってしまった。


今だって継母と顔を合わせた事で不安定になっているのに黒須の事を考えると……


これって恋…なのかな…

男同士でも恋愛って出来るのか…


でも…俺は返事もしないで逃げ出したんだ。

弱虫で臆病でごめん…

どうすればいいのか分からない、じゃなくて…ちゃんと向き合って考える事から始めないと…


俺…本当は誰かに甘えてみたいんだ。ずっと寂しかった。俺だって思いっ切り笑ってみたい。そんな感情が初めて芽生えたんだよ。

この日、君に告白されて……

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