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第50話 到着、首都カルバナ

今朝はホヴィンの声で起こされた。

珍しく夢を見たのだが、その内容が実に凄まじい。


アリィとマコの2人からデートに誘われ、ニヤけている所をセフィに斬られて。

死の間際、上半身裸のホヴィンがフンッフンッと鼻息を荒立て迫り来るという、世にもおぞましい夢。


しかしまぁ、両親や村の惨劇を聞いたその夜に見る夢とは思えない。

能天気というか、ポジティブというか、この神経の図太さには我ながら呆れてしまう。


「おはよ、朝っぱらから腕立てか…」

「オッー起きたかッフン! どうだッフン、レグザも一緒にやらんかッフン!」

「…遠慮しとく」


――筋トレは構わん、しかし服は着てくれ。

――汗まみれの絨毯…掃除する者の身になってやれ。

掛けたい言葉は幾つもあったが、敢えてこの場は控えておく。


暑い、非常に暑苦しい、そんな朝だった。

と同時に、初めてホヴィンから名前で呼ばれた朝でもあったが。




出立は夜明けと共に。

そんなオレの意向は、見事なまでに皆の足並みを揃えさせた。

宿の食堂で朝食を済ませ、揃って外に出てみると、そこには既に御者の1人が待っていて。


「準備万端でっせ、ほな行きまっか」

「おおう」


言いつつ、彼の言葉遣いに下らない疑問を抱く。

――しっかし何処の方言だよ一体…。


早朝の内に発つ理由は、国王への謁見を今日中に済ませる為。

ここイーファはキングロードの中間地点で、つまり首都へは前半と同じく半日以上掛かるのだ。

のんびりしていれば日が暮れてしまい、入城すら許されない、という訳。


宿近くに待機させてあったお馴染みの高級馬車。

それに乗り込み、首都へ向けて再びキングロードを突き進む。






「好ミ?」

「うん。 マコさんの、理想の男性像」

「優しイ人、好キ。 強引ナ優しサ、もっと好キ」


道中、車内では何故か恋愛論に花を咲かせる光景が。

昨夜の影響なのか、やたら元気なアリィによる質問攻めが展開されていて。


「強引な優しさかぁ、じゃあジョセはー?」

「…こっちに振るな」

「そんなこと言わずに~ジョセも女の子なんだし、ね?」

「まぁ…私より強い事が大前提」


――らしい台詞だなオイ。

呆れつつも答えるセフィ、だが明らかに理想とは違う。

当然それでは納得いかないといった様子のアリィ、引き続きセフィの理想を問い詰める。

一方では、新規加入のマコとチックに家族自慢をするホヴィンの姿も。


なんて愉快な仲間達。

魔道士に、剣士に、格闘家に、弓使いに、盗賊、と実に多彩な面々。

しかしこれが戦闘時には心強いメンバーで、一見役立たずの盗賊も、その逃げ足の速さから囮に使えるという利点が。


ぼんやりと、皆の会話を聞きながら。

敢えてそれに加わらず、ここ数日の出来事を1人振り返る。


ノルディー到着以降は色々あったが、中でも特に気になるのが魔物の動き。

大会時の乱入事件、その直前から群れを成して町を点々と襲撃、その影響かミクサ方面には全く出現しなかったという不気味な傾向。

まずナトゥーラ付近に大量集結したのが偶然か、それとも魔王の意志に因るものか。

それら全てが1つの意志の元に起こった事だとすれば、何か目的が有るのか。


ここで思い出すのが、ホヴィンと共に仕留めた獣人の残した言葉。

ワガアルジ(我が主)、ノオコガ(?)、ツイニミツ…カッタ(ついに見つかった)、サゾ…ヨロコバレル(さぞ喜ばれる)。


コーディから得た情報を兼ね合わせ、新たな事実に気付いてしまう。

あれはきっと 「主のお子」 と言っていたに違いない。 更にもう1点。

忘れかけていたが、あの獣人の血は酷く青っぽかった。 そして、親父が命と引き換えに倒した獣人の血も青かったという。

特殊な部類の獣人という共通点が、同じ目的を持っていた可能性と結び付けてしまう。 


更なる共通点として。

オレの故郷に押し寄せた大群と、ナトゥーラからノルディーにまで至った大群。


つまり総合的に考えると。

魔物共がオレを探す為だけに動いている、なんて気味の悪い考えに行き着いてしまうのだ。


――まさかな…。

思いつつ、どこか完全に否定し切れない自分が居て。


ゾクッと。

得体の知れない不安に襲われつつ、この先すべき事を再確認する。

――魔道の町とやらに行って…アリィの使命を確認して…魔王探して…んで会って…真相確かめて…いや、もうその前に倒しちまうか…


「はい、レグザのば~ん」

「…んぁ? バーン?」

「何ボーっとしてんの? レグザの番だよ、理想のタイプ教えて」

「ああん!? なに、女子限定じゃねーの?」

「何それ、誰が決めたの?」


冷たく吐き捨て、既に返答待ち体勢のアリィ。

そして何故か、セフィとマコからも熱い視線が飛んでくる。

――全て前フリかアリィ? オレに聞く為の前フリだったのか?


「あー…愛情豊かな…い、いや家庭的な…な、なぁぁぁぁぁ聞くな聞くなあああああっ!!!」


叫び、その結果。

前の御者2名を含め、見事に全員の注目を集めてしまう。

真面目に答えようとした自分を責めつつ、染まった頬を隠す為、両手で頭を抱えて俯き瞑想タイムに入る。


「ハッハッハ!! おもしれぇ勇者だなぁオイ!」

「フフ、勇者レグザが照れてる~!」


ホヴィンに便乗し、アリィにまで茶化されてしまう。

――勇者…あぁ、オレってやっぱ勇者なのね。


考えてみれば、“剣士” という称号はセフィにこそ相応しい気がして。

オレの称号は良く言えば “勇者” 、悪く言えば “暴れん坊” か “絶叫男” 、もしくは “拳闘士” といった感じだろう。


――いや、拳闘士はホヴィンか。

なんて心で呟きつつ、浴び続ける注目と笑い声にひたすら耐える。

そうしてキングロード後半の旅は、赤っ恥をかいたオレの一人舞台で幕を閉じた。






目的地に着いたのは昼過ぎのこと。

王城都市と呼ばれ、この国の首都でもあるカルバナ。

同じ都市でも商業都市ノルディーとはスケールが違い、巨大な城を中心に広がる街並みは、雄大の一言で片付けるのが申し訳ない程。


キングロードは街を突っ切り、城の南門まで一直線に伸びていて。

そこを辿る馬車は終点まで止まる事なく、賑わう街を見物しながらの往訪となった。


「見えてきましたでーあれが城門ですわ」

「うおデカッ!」


街自体の門もノルディーを凌ぐ程の巨大防壁で、しかし城門はそれ以上。

門兵は両側に1人づつだが、他に見張り台的な物も設置されていて、こちらを見下ろす兵士もチラホラと。


「私らの仕事はここまで、後はどうぞご自由に」

「ほなサイナラ、城に入れてもらえるよう祈っとるで」


間もなく止まった馬車は、オレ達を降ろすと即座に来た道を引き返して行く。

どうやら入城まで世話する義務は無いらしいが、方言混じりな御者の残した言葉が気になる。


鉄壁の城塞を前に、しばし立ち尽くす6人。

圧倒的な迫力と、それに掛かった莫大な費用を想像したオレが一言。


「セフィ、多分オレも同じ事考えてる…言葉に出してみないか? 一緒に」

「…あぁ」

「いくぞ、せーの…」

『馬鹿国王』


バッチリ意気投合。

したところで、自称 「勇者」 らしく胸を張り、先頭切って歩き出す。

この時、すんなり登城を果たせる気がしなかったのは、きっとオレだけじゃない筈。



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