表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/70

第28話 武術大会、開幕

「ぶっ……ゴホッゴホッ!」

「ど、どうした? 大丈夫か?」


武術大会当日。

余裕を持って会場入りしておこうと、集合時刻よりも大分早めに中央広場までやって来た訳だが。


「平気平気、コーヒーが変な気管に入っただけ。 これ見て思わずムセたわ……」


まだ朝も早いというのに、闘技場前に溢れ返る人の多さには度肝を抜かれた。

他国で1度こういった大会を観戦した事はあるが、この街では規模も注目度もケタが違う。 云わば特大イベントって訳だ。


アイスコーヒー片手に、2人のレディをエスコートすべく、先頭切って人を掻き分け突き進む。

目指す先は出場者専用入口。


「ここら辺なら見つけてもらえるか……よし、アリィはここで待ってろよ。」

「うん、2人とも頑張ってね! 応援してるよ!」


そんな言葉で見送られ、セフィと共に入口へ向かう。

目立つ街燈前にアリィを置いて来たのは、後から来る酒場ファミリーを待たせる為。


実は昨夜、宿をチェックアウトして酒場店主ホヴィンさんの家に泊まらせてもらった。

すっかり打ち解けたミシェアさん(奥さん)の提案で、どうやら家族揃って応援に来てくれるらしい。






出場者が最初に集められたのは、闘技場内部のガランとした巨大な部屋。

集合時刻も迫り、全員揃ったのかは知らないが、人数はもう既に150人を優に超えている程。


戦士達がひしめく空間で、やはり大半を占めるのがムサい男連中。

如何にもレスラー的な、態度までデカい巨漢集団。 部屋の隅に座り込み瞑想中と思われる道着姿の武闘家。

その他も実に多種多様で、武器で目立つ順に言えば巨大斧に長槍に大剣に刀、あとは片手剣に棍棒に短剣、中にはトゲトゲ鉄球付きの鎖を装備してる兄ちゃんも居る。

――これ、確実に死人が出るんじゃね?


出場者の面々を初めて確認し、セフィも誘った事を少しだけ後悔した。

他人ひとの連れにジロジロと色目を使ってくる男共。 オレが隣に居なければ、確実にセフィは絡まれていただろう。




『お待たせ致しました! 出場者の方が全員揃われた様ですので、これより簡単なご説明をさせて頂きます!』


拡声器によって大部屋内に響き渡った女性の声。

ざわざわと騒がしかった室内も、その声に反応してピタリと静まり返る。


『まず大会の趣旨と致しまして、本大会は飽くまで武芸を競う大会であり、加えて国の討伐隊へと迎え入れる為の強者を求める大会でもあります! 魔法は一切禁止というルールですが、これは魔道士に関しては国王様の特別な計らいで討伐隊へ迎えるケースが多い事と、皆さん方が存分に力を発揮して頂けるようにとの配慮から出来たルールですので、どうぞご理解の程を!』


それは非常に正しい見解だと思う。

魔道士なんか加わったら、大会としてのパワーバランスが崩壊してしまう。


『それでは次に、予選トーナメントのご説明をさせて頂きます! まず1つ申し上げますと、予選の段階で拳と武器がぶつかる事は決して有りません! 皆さんにはここで、完全武装派と完全格闘派の2組に分かれて頂きます! その上で、武装派の方はAブロックとし、格闘派の方をBブロックとさせて頂きます! 武器をお持ちの方で格闘にも自信がお有りの方は、どちらかお好きな方を選んで頂き、その選択によってブロックが決定となります!』


――武装派って……強盗団じゃあるまいし……


『因みに! 武器をお持ちの方でBブロックを選ばれた方は、武装を解除しての参戦となりますので、どうかご了承ください!』


――ふむふむ。


『各ブロック毎に、クジで決めた組み合わせによる1対1のトーナメント戦を行い、総計の勝ち残りが32名に達した時点で予選は終了となります! そして、その方々が見事に決勝トーナメント進出となる訳です!』


予選のブロック分けについては、成程と納得させられる。

例えば、未熟な槍使いと屈強な武闘家が対戦した場合、間合いの関係で武器持ちの方が実力の伴わない勝ち残りを遂げてしまうケースも有り得る。

武装・格闘共に、選りすぐりの人材を決勝トーナメントに進ませたいってのは、主催者側からすれば当然の話だ。


『それでは! 皆さまにはこれより、完全武装派か完全格闘派かの自己申告をして頂きます! その後、ブロック毎でクジによる組み合わせ抽選を行いますので!』


何処に居たのか分からない女性の説明が終わると、今度は脇の扉から数名の係員が入って来て。

どうやら申告の受付担当らしく、近くに居た連中がその前に並び始めた。


「私達はAブロックだな」

「オレはBにしとく」

「な、何故だ? 格闘に自信が有るのか?」

「いや、そうゆう訳じゃないが……もし予選でセフィと当たっちまったら、その先がつまらないだろ?」

「フッ……その先という事は私にも勝つ気か、面白い。 じゃあそれまで負けるなよ。」

「当たり前だ」




ブロック分けの為に長蛇の列に並び、組み合わせ抽選の為にまた並ぶ。

決まった対戦表が告知されるまでの間も、ひたすら待ち続けるという長くダルい時間。

待ち時間というのは戦士達の緊張感を高めるモノでしかなく、大部屋内は徐々に張り詰めた空気で満たされつつあった。


『大変お待たせ致しました! 予選トーナメント表が完成しましたので、どうぞご確認下さい! 尚、この後すぐに開会式が始まります! それが終わりましたら、各ブロック1回戦の第1試合にエントリーされた4名の方以外は、今後の選手控室となりますこの部屋で待機して頂くか、選手用の観戦スペースも設けておりますので、宜しければそちらもどうぞご利用下さい!』


「うは……やっぱ開会式とかあんのか……サクサク進めよ全く……」

「大規模な大会だ、仕方無いだろう。 国の要人や、時には他国の王族も観戦に来るらしいからな。」

「でも、当の国王自身は来ないってか。」

「馬鹿国王の事だ、防衛対策で忙しいんじゃないか?」


相変わらずの毒舌を聞きながら、貼り出された表で対戦順を確認する。

飽くまで対戦順のみ、相手など気にも留めない。 どうせ知らない名前だろうし興味も無い。


「ふぅ……こりゃお互い、開会式の後も暫く暇そうだなセフィ。」

「だが、どうやら予選は戦場を2分割して同時進行するらしい。 意外にテンポよく進むかもしれんぞ。」

「さぁどうだか……」


なんて漏らしつつ、ゾロゾロと移動し始めた戦士の群れに混じる。

大観衆の待つ舞台へ1歩また1歩と近付くにつれ、この妙な胸の高鳴りが何を意味するのか徐々に理解した。


――さてさて…果たしてセフィに対し本気で戦れるだろうか……

まぁつまり、そうゆう事。



今回の主役は説明役のお姉さん、なのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ