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第24話 迷える女神

正にニューバージョン魔道士の完成。

今時の町娘風な身なりに加え、お洒落リュックを背負ったカジュアルな装い。

これは敵を油断させて魔法をぶっ放すという奇襲戦法には大いに役立つかも。 まぁ有効なのは対人戦のみだが。


「ここにも居ないね……」

「あぁ……この武器屋だと思ったんだが」


買い物を終え、宿に戻ろうとジョセフィーンを探しているのだが、どうも周辺の武器屋には見当たらない。

まさか本当に逃げてしまったのだろうか。


「アリィ、あっちの店も探してみよう。」


夕暮れ間近、モール内の武器屋を片っ端から見て回る。

品揃えの良さから、つい目的を忘れ店内に目を奪われる事も多々……そこはアリィに怒鳴られ制されて。

完全に日が落ちるまで探し回ったが、それでもジョセフィーンは見つからず。


「……町の外に行ったのかもしれない」

「え! なんで?」

「1人で掃除に行きたいと言ってた、魔物の。 まぁアイツらしいが……」


少々心配だが連絡手段も無い。 とりあえず宿に戻って待つ事に。

迷子じゃあるまいし、別行動を望んでいた事も知っているので、保安所に捜索願いを出したりは当然しない。


宿に戻るとアリィは、自室に荷物だけ置いて神聖な男部屋にズカズカと入って来た。

不安気な表情で終始ジョセフィーンの身を案じていたが、オレには別の意味での心配事が1つあった。

買い物に嫌気が差したというより、この3人旅自体に嫌気が差したのではなかろうか…と。


結局この日、ジョセフィーンは宿にも戻って来なかった。

募る不安が更に膨れ上がり、オレが殆ど眠れなかった事はアリィも知らない。






そして翌朝――

昨日とは逆に、ドンドンッと隣室のドアを叩いたのはオレ。

寝顔を見ると萌えてしまうので、ドア前から大声で呼び起こす。

カラス戦と買い物で(むしろ買い物でか…)疲れていたのだろう、心配していた割によく眠れたらしいアリィ。

宿に戻る可能性も考慮し、アリィを部屋で留守番させ、1人で町へ出る。

目的は当然、ジョセフィーンを見つける為。


もし魔物掃除に出向いたとすれば、思わぬ強敵に傷を負わされ身動きが取れないという事も考えられ。

オレはまず目撃情報を得る為、4ヶ所あるという町の出入り口全てに足を運んだ。


「…って感じの女剣士を探してるんだが、昨日の午後に通らなかったか?」

「細身で美形の女剣士ねぇ……見たら絶対に覚えてるし、というか見てみたい。 あ、つまり通ってないって事ね。」


余計な一言が付け加えられた門兵の返答にはイラッときたが。

ともあれ、4つ全ての門で聞いた限り、ジョセフィーンは町の外へ出ていない。

門の通過には必ず門兵のチェックが入るので、馬車に乗って出たという可能性もこれで無くなった。


当初の予想通り、このデカい町をぐるりと一周するだけで大幅な時間を食ってしまい。

腹の虫が昼時を告げる頃、オレは昨日のショッピングモールに足を踏み入れていた。

次の手段は、ショップ店員への聞き込み。


「…って感じの女剣士なんだが、昨日の午後ここに来なかったか?」

「気の強そうな女戦士なら来たかな、黒髪でゴツい体の。 短剣を1本買って行ったよ。」


とにかく、武器屋という武器屋を片っ端から当たって行ったが――


「茶髪で細身の女剣士だ、来てないか?」

「見た気もするけど……分からないな。 まぁ会話でもしてたら覚えてるんだけどねぇ」


大勢の戦士が訪れる武器屋で、特定の人物をはっきり覚えている店主など殆ど居らず――


「昨日の午後、茶髪、細身、美形、女剣士……来てないか? 話してないか?」

「あー見たぞ、べっぴんな姉ちゃんだった。」

「行き先とか言ってなかったか!?」

「そんなもん知るかい。 何も喋っとらんし、何も買わんかった。 知っとるのはそれだけだ。」


幾つかの情報を得るも、有力なモノは何1つ無く――


『女を探し求める武器屋巡り』 という奇妙な行為も終盤に近付いた頃。

ごった返す人混みの中でほんの一瞬だが、視界の隅に見覚えのある人物が映ったのをオレは見逃さなかった。

――ジョセフィーン!


人を掻き分け、掻き分け、進みゆく。

もう見失ってしまったが、その方向から決して視線を逸らさぬように。


「ジョセフィーン!!」


人の群れを抜けた先、とある街角でついに彼女を発見。

オレの呼び声が聞こえなかったのか、こちらを振り返りもせず只ボーっと歩いていて。

更に歩み寄ったオレは、そこである事に気付く。


ジョセフィーンの横に見知らぬ人間が1人、寄り添うようにして歩いている。 そして、それはどう見ても男。

長身に黒マント姿の男は、なんと彼女の腰に手を掛けている。


「おいジョセフィーン! こんな所で何やってんだ!?」


明らかに届いたであろう背後からの呼び掛けに対し、振り向いたのは何故か男の方のみ。


「誰だお前……」

「おいこら! おいって!」


男は警戒心を露にジョセフィーンを抱き寄せるが、構わず強引に詰め寄って尚も呼び掛ける。

だが、幾ら呼ぼうと肩を揺さぶろうとも反応は薄く、無言のまま気の抜けた表情で俯くばかり。


「何だお前は……! 離れろ!」

「うるさい! お前こそ何だ! ジョセフィーンに何をした!!」


必死に纏わり付くオレ、引き離そうとする男、その2人の間でされるがままのジョセフィーン。

やっとの事で視線を合わせてくれた彼女がオレに放った一言。


「あなた……だれ……?」


愕然とし、掴んだ両肩を思わず手放してしまう。

単にふざけているのか、冗談キツいぜと言わせたいのか、秘密の彼氏を見られて恍けているとでもいうのか。


初めて芽生えた妙な感情に心を乱されたオレから、いつもの冷静な判断力は完全に失われていた。



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