第20話 やっぱり武術都市
林道を抜け、山間部を超えた先、ノルディーとやらに着いたのは夜半過ぎ。
途中、あのクマ公を含め計4回も魔物に遭遇し、到着時刻が大幅に遅れてしまった。
あの街道、要所を警備兵で固めてはいたが、それが余り意味を成していない様に感じて。
――逆に警備兵がエサになっておびき寄せてんじゃねーの?
なんて思いつつ、改めてこの国の危機的状況を実感させられた。
商業で栄えたという大型都市。
その壮大な街並みを見たオレは度肝を抜かれた。
深夜にも関わらず煌々と輝く街の灯、静けさとは程遠い大通りの賑わい、営業中の店の多さ。
決して態度に出さないオレと違い、色々見て回りたいと騒ぐアリィ。
だが、未成年には悪影響な店も数多く存在し……因みにジョセフィーンも未成年だとさっき知り……
今夜はもう遅いので宿を確保して一泊、散策は明朝からという事でアリィに納得させる。
宿を探して数分、意外にもソレはすぐに見つかった…と思いきや。
何も知らないアリィが指差したのは 【LOVE☆HOTEL】 の看板。
動揺するジョセフィーンを余所に、平静を装うオレは 「ここは高い、普通の宿を探すぞ」 と即座にその場を立ち去らせて。
――世間知らずってのは恐い……
結果、この町にしては閑静な通りの脇に見つけた 「普通の宿」 でチェックインを済ませた。
3人部屋が満室との事で、今回は男女に分かれての宿泊。 まぁそれが普通か。
そうして翌朝――
ドンドンドンッ! と激しいノックの音で目を覚ましたオレ。
犯人はアリィ。 どうやら同室のジョセフィーンも叩き起こされたらしく、早く出掛けたいと興奮気味のアリィに急かされ、コーヒー1杯飲む時間も与えられぬまま宿を出た。
街に射し込む朝日、澄み渡る青空、高く散らばる雲、つまり本日も晴天。
3人でまず向かった先は、宿探しの際に発見したデカい案内板の設置してある広場。
「まず朝メシだが、飲食街は………っと、あったあった。」
「意外と近いな」
「ご飯はいいから商店街に行こうよ~!」
アリィの考えは百も承知。 買う必要の無い物までブラブラと見て回りたいって事だろう。
はっきり言ってお断りだが、オレがそう告げるより早くジョセフィーンが口を開いて。
「悪い事は言わん、朝はきっちり食べておけ。」
「え……まさかジョセって3食欠かさず食べる派!?」
「当然だ。 中でも朝食というのは最も重要で、1日の活動量に応じた栄養バランスを考えて……」
相変わらずの口調で、意外にも朝食の大切さを語り出すジョセフィーン。 妙な光景だ。
「じゃあ、どうやってそんな体型を維持してるのー?」
「…知らん、体型の事など考えた事も無い。」
「えー! じゃあダイエットしたこと無いの!?」
「ダイエット? なんだそれは。」
「うそぉぉぉ知らないの!? んっとね、ダイエットっていうのは……」
今度はアリィが、ダイエットについてを熱く語り出して。
女の会話に付き合っていたら日が暮れそうなので、程々で食い止めて飲食街へ。
どの店に入るか迷った結果、ジョセフィーンの要望でサラダ系が豊富な店をチョイス。
彼女が相当なグルメで、栄養面にまで気を配る女性だとは知らなかった。 意外と家庭的な剣士だったりして。
食事の際に次の行き先を相談すると、闘技場か商店街かに絞られ……多数決の結果、アリィには悪いが闘技場に決定。
「闘技場なんて興味なぁい。 私だけ商店街に行っちゃダメ?」
「ダメだ。 逸れたら厄介だし、またスリにでも遭ったらどうするんだよ。」
「うぅぅぅ……」
案内板に従って闘技場へ向かう途中も、終始アリィは文句ばかり。
都市というだけあって途方も無く広いこの町で、単独行動は極力控えようと事前に決めていた。
それもあって、個人的には酒場も覗きたいが、多数決になると負けそうなので我慢しておく。
「おおおっ!」
ソレは町のほぼ中心部に存在した。
広場を挟んだ周辺にも様々な建物があるのだが、群を抜いて巨大なソレこそ…
「闘技場……これデカ過ぎないか!?」
「国民の税金でこんな物を建てるとは、まったく阿呆な国王だ。」
「すごーい! 私こんな大きな建物……初めて見たっ!!」
流石のオレも興奮を隠せなかったが、全く乗り気じゃなかったアリィまで大はしゃぎ。
対照的に、冷静過ぎるジョセフィーンの言葉には思わず笑ってしまった。
興奮冷めやらぬまま正面入り口前まで行ってみると、閉ざされた門に1枚の張り紙が。
『やってきました恒例の武術大会!! 集え!! 屈強な戦士達よ!!』
やたら大きな文字で書いてあるその下に、開催日時と出場受付の締め切り日も小さく表記されており。
「おい! 開催は3日後だってよ!」
「ふむ、受付は……今日までだな」
「ちょっ……」
その瞬間、キラーンと目が輝いたオレに気付いたのはアリィだったようで。
「レグザ……まさか……」
「出たい! こうゆうの大好きなんだよオレ! すっげー面白そう!」
「……やっぱり」
見物だけでも楽しめる武術大会。 更に出場まで可能となれば、これほど愉快な事は無い。
受付ギリギリのタイミングで訪れた幸運を天に感謝したい程、オレは乗り気になってしまい。
「出てもいいか!?」
「…大会までの3日間、どうするつもりだ?」
「んー……酒場にでも行けば魔物退治の依頼とかあるだろうし、それで時間を潰せばいいさ。」
「なら構わんが……」
何故かジョセフィーンに確認するオレ。
彼女の許可を貰ったは良いが、アリィが何やら怪訝な表情を浮かべていて。
「危ないよぉ……ケガとかしたらどうすんの……?」
「心配無い、ちゃんと手加減するし。」
「い……いや……相手の心配してるんじゃなくて…………まぁ…強いから平気か……」
そんなこんなで、闘技場脇にある大会事務所を訪れたオレ…と付き添い2人。
そこで受付を済ませると、直前に貰った大会規約書類に目を通す。 まぁ普通は先に見るんだが。
――大会はトーナメント式の個人戦で、上位8名は国家討伐隊への入隊権利を得る。
――武器の持ち込みは基本的に自由、魔法は全面的に禁止。
――原則として命の保証は出来ない。 しかし相手を殺した者は失格で、相手に敗北を宣言させれば勝利。
――如何なる怪我にも大会側は責任を持たない。 ※治療代は自費でお願いします。
――優勝者は首都に招待され、国王より特別報奨金を賜る。
「ヤバい……本気で楽しそうだコレ」
3つ目の項目を見たアリィが青ざめる中、異常なまでに胸を弾ませるオレであった。