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第19話 街道バトル

人と魔物。 

この弱肉強食の世界において、その2つが共存しているとは言い難く。


人が存在すれば魔物も存在する。

そんな因果関係を何の疑いも無く受け入れている人類は愚かだと思い。


魔物誕生と進化の過程には何か特殊な理由が…もとい、魔物誕生と進化の歴史には何者かの意志が伴っているとオレは考える。

そして今、確実に生態系を乱すであろう魔物に出会い、また一段と深い感慨に耽る事に。


「オヤジさん! ここで停めて待っててくれ!」


街道を進むこと数時間。

夕日に染まる景色の中、前方に発見した別の馬車が魔物によって道を阻まれており。


「まず乗客達を逃がすぞ」


馬車を降り、急いで現場に駆け付けたオレ達は、御者ぎょしゃと乗客を避難させた上でソレに立ち向かう。


「ジョセフィーン、あれ倒した事あるか? 皮膚めっちゃ固いぞ。」

「知っている、マクスベアーだろう。 元はヒグマだから力も半端無い。」

「名前なんか興味無い、どうせすぐに殺すんだし。」


道を塞ぐのは巨大且つ凶悪なクマの化け物。

体長は4~5メートル程あり、体重はおそらく1トンを優に超え、立ち上がれば馬車より高い。

しかし既に退避済みとも気付かず、腰を丸めノッシノッシと近付き、太い腕で無人の馬車を突付く姿は少々愛らしくもあるのだが。


グゥルルルルゥゥゥ……


重低音の唸りは喉を鳴らす音。 現時点ではこちらの動向を気にしておらず、威嚇というより好奇心の現れか。

ヤツは人間より寧ろ馬車に興味があるようで。


ヒヒヒィィィィィンッ!!


危険な香りを嗅ぎ取った馬が猛烈に興奮している。 

まだ寝惚け眼のアリィには余り期待できないが、3人でのバトルはこれが初。

オレ1人でも倒せない事は無いが、確実に殺るには連携戦術チームプレイで行くべきか。 


「よし、ボボボでザックリ作戦だ。 ヤツは火を恐れる。」

「……ふむ」

「火で怯えさせて斬るんだね! 任せて!」


今の指示で理解したとは2人共スゴいなと感心しつつ、剣を取り敵の正面に回り込む。

近付く脅威を認識し、臨戦態勢に入ったクマはヌッと立ち上がり万歳ポーズ。 つまり威嚇のポーズ。


「へっ、その構えスキだらけだっての。」


とは言っても、迂闊に相手の間合いへ踏み込むのは危険。

動きは鈍いが一撃の重みは即死レベル。 ここは魔法の援護が来るまで距離を取りつつ引き付けて…


ヒュッ!   ビュッ!   ヒュオッ!


――うわ積極的……。

なんと大胆に間合いを詰め、素早い動きで敵を翻弄するジョセフィーン。

剣もビュンビュン振っているが、あえてくうを斬るのは牽制の為か、魔法を期待しての遠慮か。 

とにかく、その勇敢さに影響されたオレも間合いを詰め注意を引く事に。


目まぐるしい動きの2人に戸惑い気味のクマは、重量感たっぷりの前足で空振りの連続。

と、そこで攻撃準備を整えた背後のアリィを確認。 ジョセフィーンに合図し、1度身を引く。

寝起きとは思えぬ凛とした表情で魔力を練る姿はやはり魔道士で、その集中力は称賛に値する。


初式火弾魔法ファイディム!」


ボァッ!


……ングォウッ!!


アリィの手から放たれた炎の塊は、直線軌道で相手の胴体に命中。

だが、厚い毛皮と硬い皮膚が頑丈な鎧の役目を果たしており、殆ど効いていない様子。

それでも、恐怖という名のダメージは与えたようで。


「よし!」


ズバッ!!   ザシュッ!!


グァオゥッ……!!


透かさず斬り込んだオレとジョセフィーン。 

その斬撃は首筋と胸元にパッカリと傷口を作ったが、まだまだ浅い。


「おっと、道に倒したら通行の邪魔か……林に誘い込むぞ!」

「了解」


バサッと、脇の茂みに飛び込む剣士が2人。

致命傷には程遠く、怒り狂ったクマはその後を追ってズンズンと林の中へ。


立ち並ぶ木々を防御壁に、ジョセフィーンと目で合図を交わし、相手を囲う陣形で暫し牽制を続ける。

だが、鋭い爪と重い腕を持つクマにとって木など眼中に無いようで、ベキバキとそれを薙ぎ倒す様子からは苛立ちが見え隠れ。


――次の魔法が来るっ!

木の隙間からアリィの構えを確認したオレは、ジョセフィーンに手振りで合図し相手との距離を取る。


「連射いっくよーーーーーっ!!」


ボボボボボボボボボォッ!!


キタコレ。

ジステアの時には目を伏せてしまい、見る事が出来なかった連射バージョンだ。

極めて小さな火弾がアリィの両手から無数に、それも一直線にターゲット目掛け飛んで行く。


ガグォォォッ!!


見事に全て命中した火弾群。

喰らったクマは動揺して暴れ回り、ハエでも振り払うような仕草を見せていて。


ザンッ!!!


透かさず飛び掛かり、脳天へと振り下ろした大剣は深く食い込む。

オレが着地すると同時に、ドスッと首に一突き入れて来たのはジョセフィーン。 ダメ押しですね、分かります。


ドシャァッ!


今回、断末魔は聞かずに済んだ。

どうやら即死らしく、静かに、だが重々しい音を響かせ地に伏す巨大クマ。

――連携ってのも悪くないな……。


「お疲れ、最後の突きは要らなかったかも。」

「フンッ……念の為だ」

「お疲れさま~!! 2人とも凄~い!! ねぇジョセ、魔法見た!? 見た!?」


無事に倒したところで、また1人感慨に耽るオレ。

何を食ってるのか知らんが、あんな化け物がウジャウジャ居るようでは、食物連鎖の法則が乱れてしまうのでは…と。


まぁそんな事を考えても仕方無いし、とにかく出会った魔物は全て滅ぼすのみ。

いつか魔物の謎を突き止めて元を断つ方法を見出すのか、はたまた地道に退治して回る事になるのか。

どちらにせよ、ジョセフィーンの目的は今やオレの目的でもある。


いつの間にか他人の目的を優先している自分が、実はよく分からない。

己の未熟さを思い知った故か、仇を討つにも手掛かりが無い故か、或いは…


「馬車のオヤジさんを待たせてる、早く戻ろう」


言い放ったオレは、ふとジョセフィーンの横顔を見て立ち止まる。

今日のオレが、魔物の存在に関して妙に感慨深くなる理由が分かった気がしたから。


――いや、まさかな。

理解しつつ、有り得ない事だと否定してまた歩き出すオレであった。 



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