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第17話 一件落着?

これまで1度たりとも暴かれた事の無かった悪党の巣窟。

それも蓋を開けてみれば、所詮はセコい犯罪者共の溜まり場に過ぎない。

悪名高い盗賊団は想像以上に呆気無かった。 どいつもこいつも素早いだけで戦闘技術バトルセンスがまるで無い。 


「さぁ吐け、この中でリーダーは誰だ?」

「ちっくしょう……あの野郎……!!」

「野郎? それは誰の事だ?」

「てめぇにゃ関係ねぇ!!」


下っ端盗賊に案内させて乗り込んで来たアジトは、意外にも空き店舗の地下に存在していた。

案内役の盗賊は入口前で気絶させておき、中に入ってからも峰打ちで6人気絶させ、話を聞く為に残した最後の1人がこの中年男。


「これまでの悪事をたった8人で行ってきたというのか?」

「へっ、娘さんよ……随分と腕は立つみてぇだが、考えが甘いぜ。」

「なんだと?」

「オレ達ゃ200人以上の団員から構成された盗賊団だ。 ここ以外にも10ヶ所以上のアジトがあるんだぜぇ?」


それを聞いて唖然とした。 つまり、ここで片付けた奴らは盗賊団のごく一部で、私が1人で全てを片付けるには余りにも骨を折る作業。 これは大剣男レグザ魔道士アリィを呼びに戻るべきだったか。


「噂では小規模だと聞いたが……厄介な……」

「そうさぁ! つまりだぁ、姉ちゃんにここを潰されても痛くも痒くもねぇんだよ!」


さてどうしたものか。 この男を締め上げ他のアジトを聞き出し順々に潰して行く。 考えればそれしか方法は無いのだが。


「騙されんなネエちゃん! そんなの大嘘だぁ! しかもそのオッサンがリーダーだぜぇ!」

「なに!?」


入口の階段付近から大声で忠告してきたのは、最初に案内させた下っ端盗賊。 しっかりと気絶させておいた筈だが、もう目が覚めたとは意外だった。


「てめぇ……こらチック!! なんでこっちに連れて来たぁ!!」

「へへっ、良い機会だと思ってね。 その女剣士さん強そうだったし。」

「あんっ!? てめぇ何言ってやがる!!」

「自分の手は汚さず、いっつも踏ん反り返って酒浸りのリーダーに愛想が尽きたってこと。」


単純に考え、この会話から推測できるのはリーダーに対する団員の裏切り。 あの下っ端の言っている事が全て本当だとしたらの話だが。


「貴様らの言い争いに付き合っている暇は無い。 おい、そこの下っ端。」

「下っ端て……まぁそうだけど」

「事情は後で改めて聞く、偽れば容赦しない。 それと、本当にこの男がリーダーなんだな?」

「マジマジ、仕事以外では嘘をつかないのが俺の信条でぃっ!」

「……よし」


バンッ!


「ぐぁ……ぉぉぉ……」


そうと分かれば話は早い、と透かさず目の前の中年男に峰打ちを一撃。 更に間を置かず、下っ端盗賊の元に駆け寄る。


「さぁ話せ、このリーダーとやらが言った事はどこまで本当だ?」

「すげ~軽く倒しちまった~! やっぱアンタ強いんだね~!」

「そんな事はどうでもいい、早く教え…」

「オレを仲間にしてくれよ! 旅の人かい!? 1人旅? オレが一緒なら旅の安全間違い無し! さぁどうだ!」

「……」


ベラベラとよく回る舌を斬ってやりたくなった。 が、この盗賊から情報を聞き出さねばと踏みとどまり、一先ずこのむさ苦しいアジトを出る事に。


外に出ると、まず保安所への通報の為に近辺の住人宅を訪れる。 

そして、改めて盗賊に 「手早く話すか、舌を斬られるか、どっちがお望みだ?」 と問う。 顔に剣を突き付けながら。


相変わらず根性の無い奴で、迷う事なく前者を選んだ盗賊。

聞くと、ここがリーダー率いる幹部のアジトらしく、他にダミーのアジトがもう1つあるのだと。 そこには仕事を失敗して捕まった場合、アジトの場所を聞かれたら連れて行くという掟らしい。 乗り込んで来た奴を袋叩きにする為に。

この盗賊が正直に本物のアジトへ案内したのは、リーダーを倒して団を抜けるチャンスだと考えた為らしいが、そんな事はどうでもいい。

 

「そこへ案内しろ」

「了解! ネエちゃんならあっちの連中も軽いぜ~!」

「……言っておくが、そっちを一掃したら貴様も保安所へ連れて行く。」

「えええっ!? 仲間を売るのかよ~!」

「誰が仲間だ……」


腹が立つ度に剣を突き付け、黙って案内させる。 それの繰り返し。

この世で私が3番目に嫌うモノ、それは 「お喋りな軽薄男」だと、今この瞬間に決定した。






「レグザってどんな女の子が好み?」


次のアジトまでの道のり、魔法の自慢が終わったと思えば、次にアリィはそんな質問を投げ掛けてきて。

思春期の少女ってのは多感過ぎて、思考も行動も全く読めない。 少しは静かに歩けないものかと思いつつ、面白い質問にはきちんと答えるオレ。


「無駄口を叩かない落ち着いた女」


試しにそう言ってみると、何度か小さく頷くだけで無言になったアリィ。 上手く黙らせることに成功し、オレの作戦勝ちと言ったところか。

色んな事に興味を持つ年頃なのか、オレにも少なからず興味を抱いているようだが、世間知らず故の狭い視野で、安易に感情を揺り動かすのは勘弁願いたい。 

旅は楽しくするのが1番だと思う反面、今は魔道士としての修行に専念してほしいと思う訳で。


「あ、ジョセだ!!」

「えっ?」


どこかうわの空だったオレは気付くのが遅かった。 アリィの視線の先、前方から歩いて来るジョセフィーンの姿を確認。 加えてその隣には見知らぬ人影も。


「ジョセ! 大丈夫だった!? 心配したんだよ~!」

「お前達、何故こんな所に居る?」


ジョセフィーンに抱き着くアリィ。 それを嫌がって引き離そうとするジョセフィーン。 何とも言えず微笑ましい光景なのだが、横の小柄な男がニヤついているのがどうも気になる。


「まぁ…かくかくしかじか…で偽アジトに案内されたから潰して来た。 もしかして、本拠地の方はもう片付けちまったか?」

「チッ、また余計な手出しを……まぁいい、ならば後はコイツを連れて行くのみだ。」

「そいつ誰だ?」


そう聞いた次の瞬間、ニヤついていた男がズカズカとオレの前に歩み寄って睨みを利かせてくる。


「お前さ~えらくデカい武器背負ってそれなりに強そうだけど、偽アジト潰したってマジ?」

「……あぁ」

「へ~じゃあ、そこの美女と美少女はお前のツレって訳ね。」

「び……」


なんだろう、この軽いノリの男は。

もし殺して構わないなら今すぐ斬りたい程の衝動に駆られたが、果たして何者だろうか。


「……ここだけの話、どっちがお前のコレな訳? 両方とか言ったらマジ許せねぇんだけど……」


小指を立て、顔を近付け耳打ちしてきた男にイラッときたオレは、何処か彼方まで殴り飛ばしてやろうと拳に力を込めたが、そんなオレより早く動いた人物が1人。

彼女の拳が真上から垂直に、男の脳天に直撃する瞬間をオレは目撃した。

――うわ、あれ痛いぞ。


ゴッ!


「ぐごっ!」

「口を閉じろ阿呆が。 レグザ、この男を保安所へ連れて行ったらすぐに出発だ。 もうこの町に用は無い。」


そう言って男の襟元を鷲掴みにし、纏わり付くアリィも引っ張って強引に歩き出したジョセフィーン。

豪快と言うか何と言うか、相変わらず凄まじい女だと呆れる半面、何故か感心してしまったオレは1人置いてきぼりを喰らう。


結局この後、保安所に着くまでお喋り男の正体を聞き出せないオレであった。

――ま、盗賊なんだろうけど。



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