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第15話 盗賊ホイホイ大作戦

「フ~ン…フフフ~ン…フフッフ~ン」


なんて鼻歌混じりで買い物中のオレ。

何の気兼ねも無く自由に行動出来るというのは素晴らしい。 やはりジョセフィーンに子守りを任せて正解だった。

しかしこの町、食い物に全くハズレが無い。 試食する度に買っていたら荷物の量がえらい事に。

余りに美味くてつい衝動買いしてしまった保存の利かない珍味類はもう食べてしまおう。 と、取り敢えず荷物整理の為、宿へ戻る事に。


「見つけた!!」


――はぁ、見つけましたか。

両手にドッサリ荷物をぶら下げご機嫌に歩いてると正面からその声が。

相手の姿も視界に入っていたが、そんな声は聞こえてません的な芝居を演じてみたオレ。


「レグザ! ごめんね! ごめんなさい!」

「は……?」


息を切らせ駆け寄って来たアリィがいきなり謝るもんだから、イヤな予感しかしない。


「とりあえず落ち着け。 まず、ジョセフィーンはどうした?」

「えっと、私に貰ったレグザのお金が盗られて、スリが来てくれて、ジョセを追いかけて行っちゃったの!」


どーー考えても文章的に変だろその台詞。 落ち着けと言うのが分からんのかコイツは。

まぁ必要な単語は全て入ってるようで、何とか解読に成功。


「金の事は気にするな、仕方ない。 しかしスリとは……噂の盗賊団がついに出たか」

「ねぇ! ジョセ大丈夫かな!? もし相手が恐い人だったら……!」

「あの女なら心配ない、ってかもう捕まえて金を取り返してくれてるかも……って……待てよ」


ピカーン、とそこで鋭い想像力が働いた今日のオレは実に冴えてるかも。

盗人を捕まえるだけなら何も心配はいらない。 ジョセフィーンの強さと 「すばしっこさ」 はオレが認める程だし。

心配だとしたらむしろその後。 彼女が盗賊団の1人を捕まえたら、金を取り返して大人しく保安所に引き渡すだろうか。


答えはNO。

仮にオレなら、その盗賊からアジトの場所を聞き出し、傭兵団の時みたいに乗り込んで潰す。

ましてや彼女は傭兵団の元リーダー。 保安兵が頼りないのは承知の上だろうし、町に迷惑かけた罪悪感があるだろうし、あと正義感も強そうだし。


「アリィ、囮作戦だ。 盗賊もう1匹捕まえてアジト聞き出すぞ。」

「ほえ? なんで??」

「多分だが、ジョセフィーンは盗賊団のアジトへ向かってる。 ってかもう着いてるかも。」

「え!? どうして?」


ええぃ説明するのが面倒だ。

ここは要点だけ絞って話し、手っ取り早く済ませるべし。






荷物が邪魔なので1度宿に戻ったオレ達は、作戦決行の舞台として選んだ飲食街へ向かう。

その途中、全く状況を理解していないアリィにも分かる様に説明しておいた。


「ホントにやるの…?」

「仕方ないだろ、一味のヤツに聞かんとアジトの場所なんか分からんし」

「でも~なんで私が囮の役なの…」

「そりゃボーっとした田舎娘の方がスリも狙い易…」


――ヤベ、言っちまった。

と、後悔しても遅いので、ここは開き直っておく。


「ちょっと! それ失礼! 田舎娘は認めるけど、ボーっとが余計!!」

「あ、そこ認めるんだ?」

「んぁ~もう! やればいいんでしょやれば! その変わり、狙われたらちゃんと捕まえてよ!」

「任せろ」


そんな遣り取りしてる内に、昼時で混み合う飲食街に到着。

囮役であるアリィには “沢山お金が入ってますよ” 的なパンパンの巾着袋を持たせる。

配置する場所は通り中央、大きな木の下。 かなり目立つ場所で、そこで突っ立っているのが狙われ易いだろうと予想。

つまりアリィには “男と待ち合わせ中の町娘” を演じさせる。 まぁ実際、そこら辺の設定はどうでもいいのだが。


「いいか、余りキョロキョロせず、どっか一点を見つめてボケーっと立ってろ」

「何その指示…っていうか、レグザは何処に居るつもりなの?」

「教えたらこっち見そうだから言わない。 だからって探すなよ」

「えー!! 何かあったらちゃんと来てよね!?」

「心配すんな、近くで待機してる」


…とまぁ作戦開始。

我ながらベタな作戦だとは思うんだが、アジトの場所を知る為にはこの方法しか思い付かない。

だが、もしオレの予想が大ハズレで、ジョセフィーンが大人しく宿に戻ってたらお笑いだ。

まぁしかし当たってるだろう。 感情は表に出さずとも、考えてる事は非常に読み取り易い女だから。


さて、オレは所定の位置に着くとしよう。






「お嬢さん、よろしかったら僕とお茶しませんか?」

「あ、いえ……人と待ち合わせしてるので……」


………。


「ちょっと道を尋ねたいんじゃが、サリーという人の家を探しておっての……」

「ごめんなさい、この町に住んでないので分かりません……」


………。


「お嬢ちゃん可愛いね~! チラシモデルの仕事とか興味無い? 親御さんは一緒じゃないのかな?」

「……遠慮しておきます」


………。


「もしかして、お暇してる~? 今からどっか遊びに行かない?」

「いえ、彼と待ち合わせしてますので………」


………。

待ってるこっちが段々アホらしくなってきた。

なんで他人からあんなに話しかけられるんだ。 しかもナンパとか、この町ではロリ系がモテるのだろうか。

スリ野郎よりナンパ野郎に狙われるとは全くの予想外。 このまま続けるべきか、ちょっと歩かせてみるべきか、正直迷う。


決め兼ねている内に、今度は何やら怪しげな黒いローブを纏った人物がアリィの元へ。


「あなた……不吉な相が出ております……」

「え?」

「近い将来……とてつもない災厄に見舞われるかもしれません……」

「な、なんですか……? 占い師さん?」


積極的に話し掛けてくる占い師とは怪しい事この上ないが、まぁスリ以外は無視の方向で。 アリィ頑張れ。


「私は旅の占い師……もし……不幸を回避したければ……1つ方法があります……」

「どうすれば……?」

「この護符です……これを肌身離さず持っていれば……あなたは救われます……」

「ほ、本当ですか!?」


おいおいおい、完璧に怪しい流れだろが。 まさかアリィ、本気で信じてるんじゃないだろうな。


「嘘など申しません……しかしながらこの護符……とても貴重な物で、無償でお譲りする訳には……」

「……お幾らですか?」

「救いを求めるならば、その身を捧げる覚悟が無ければ意味がありません……ですからお手持ちの金銭を全て……」

「いや、それは……」


あの占い師、じゃなくてペテン師、流石に強引過ぎてバレバレだ。

しかしこの場所は邪魔が多過ぎる。 これは1度出て行き、アリィに作戦変更を伝えようと思う。

実は、あるショップの屋根の上に寝そべっていたオレ。 人の流れがよく見える絶好の監視ポイントだ。

人に見られぬ様、登った時と同じく店の脇に降り立つ。

と、その時。


「ちょっとぉ! 放しなさいってばぁっ!!」

「くそっ……! てめぇが放せ!」


その声に導かれて通りに出ると、なんとローブ姿のヤツがアリィの手から巾着を奪おうとしている。

ははぁん、これは状況から察するに、作戦成功の可能性がある。 つまり結果オーライかも。


「やめんかい!」

「!?」


ガッ!


駆け付けたオレは背後から手を回して相手の首を締め上げる。

周りには既に人が集まって来ていたが、ここは気にせず事を進める。 まず顔の部分だけローブを剥いで相手が男だと確認。


「うっぐぅぅ……!」

「アリィ離れてろ。 で、お前は何者だ?」

「うぐぐぐぐっっ!」

「じゃあ3択問題を出すから、答えは行動で示せ。 テーマは 『お前の正体』 な。」


巻き付けた腕の力をあえて少し緩め、相手の出方を窺う。


「1、金に困ってる旅の占い師。 2、手際の悪いマヌケな詐欺師。 3、おバカな盗賊団の一味。 さぁどーれだ?」

「………ぬぅんっ!」


瞬間、相手は腰元から素早く何かを取り出す。

取り出したナイフを掲げ、背後のオレにそれを突き刺そうとした……が、そんな事は想定の範囲内で。

その腕をガッシリ押さえ、後頭部に強烈な頭突きをプレゼント。


ゴッ!!


「ぐぅっ……がっ……ぁぁぁ……」

「ちと強過ぎた、おでこ痛い。」


ドサッ


足の力が抜けた相手の体はオレの腕からスルリと抜け、そのまま地面に倒れ込む。

気絶させるつもりは無かったが、反抗的な態度が気に食わなかった為、つい加減を忘れてしまった。

アリィと野次馬の視線が痛い。 誰かに保安兵を呼ばれる前に、何処かに引っ張って行かなければ。


「よし、答えは3だな。 これでアジトの場所が分かるぞアリィ。」

「何で盗賊って分かるの……?」

「ん~ナイフ持ってたし、好戦的だったから。 以上。」

「……」


ベタな作戦が功を奏し、無事に捕える事が出来た詐欺現行犯の盗賊。

ジョセフィーンが1人で終わらせていない事を願いつつ、アリィと共に盗賊団のアジトへ向かう。

約1名の人間バカを引きずりながら……



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