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第12話 vs ジステア傭兵団

ヒュッ!


べシッと。

命中した女の素早い一閃が開始の合図。

いつぞやの状況と似てなくもないが、今回オレは剣を使えないので肉弾戦。


「おらぁ!」  ズガガガガッ!!


まず少し離れた1人に対して拳の猛打を浴びせる。

この男は、リーダーを手篭めにすると言われた時、誰よりも威勢良く賛同していた大馬鹿野郎だ。


女が剣を抜いた為、防戦の為にと戦士達も武器を構えてきた。

その種類は…剣に曲刀にナイフに手斧に槍に、鞭使いまで…と、実に様々。

素手のオレにとっては恐ろしい限りだが、扱う腕が足りないヤツらばかりで大いに助かる。


「遅いっ!」  ベシッ!  ドスッ!  ベキャッ!


「ぬるいっ!」  ドガッ!  ズゴッ!  バスッ!


オレの武術は…蹴り5割、拳2割、裏拳1割強、肘打ち1割、頭突き少々…と、そんな感じ。

狙いは特に決めていないが、中には一撃で倒れるヤツも居て、余りの弱さからとても傭兵とは思えない。


ビシッ!  シュバッ!  バシッ!


女の方も全く不安を感じさせない動き。 ヤツらに比べて速さスピードが違い過ぎる。

素早く間合いに詰め寄り、相手の武器を受ける事も無く峰打ちをヒットさせるたくみな剣捌けんさばき。

その洗練された剣術は、荒っぽいオレの技より遥かに華麗で鮮やかだ。


「どぉらっ!」  バゴッ!  ドスッ!  ゴッ!  ズドッ!


開始早々後ろに下がったサブリーダーを含め、立っている戦士はもう半数程だが、それでもまだ多い。

周りを完全に囲まれたオレと女は、互いの背を合わせて数秒の間を置く。


「おい、もっと静かに戦れんのか。」

「なっ……ほっとけ!」


バゴンッ!!


共闘している相手に文句を言われつつ、向かって来た男に 「無言で」 蹴りをお見舞いする。


「これで文句ないだろが!」

「フッ……やれば出来るじゃないか」


ヤバい、完全に女のペースに乗せられている。 というか、単に馬鹿にされているだけなんじゃ。

落ち着けオレ、落ち着けオレ、と言い聞かせても、なんか段々ムカついてきた。 


「ええぃ! いちいち鼻で笑うなぁ!」   ドスッ!   バシッ!   ドカッ!   ガスッ!


「オレは武術家じゃなぁいっ剣士だぁっ!」   ズゴッ!   ドガッ!   バスッ!   ズシャッ!


口の悪い女と平常心を保てない自分に対する不満を叫びつつ、前方のヤツらを怒りに任せて薙ぎ倒す。

なんかオレ、さっきまでより強化変身パワーアップしたような気が。 


「はっ!」   シュバッ!   ビシッ!   ズッ!   バンッ!  


オレに呼応されたって訳じゃないだろうが、何故か掛け声を加えて立ち振る舞う女。

しかしまぁ女にしておくのは勿体無い強さ。 あの素早い動きに怪力パワー融合ブレンドさせたら天下無双の剣士になるんじゃなかろうか。


後半戦は実に圧倒的な展開で進んだ。

あっという間に数を減らされていき、敵の数人は逃げ出そうとする始末。 当然、誰も逃がさず気絶させたが。

臆病なのかボス気取りなのか、ルヴァンと呼ばれていたサブリーダーは最後まで向かって来なかった。


そして、残ったのはヤツ1人。 姿勢よく立ち、剣の切っ先を真っ直ぐ相手に向ける女。


「ルヴァン、命令を聞く気になったか?」

「へっ……お断りだ……悪いが逃げさせてもらうぜ」


そう言ってヤツが懐から何かを取り出す。

オレにはそれが何かすぐに分かったが、女の方は理解すると同時にもう動いていて。


キィンッ!


「うおっ!!」


ルヴァンがそれを投げる為の準備動作をとる直前、女がその手元に剣を振りかざした。

瞬間、宙に舞ったそれを上手くキャッチした女は、改めて剣の切っ先をルヴァンに向ける。


「閃光弾とは高価な物を持っているな、ルヴァン。」

「くっ……!」

「どうせ私が倒した魔物の報酬で買ったんだろう?」


もうオレの出る幕は無いようだ。 後はこの女の好きな様にするだろう。


「呆れた奴だ……痛みを以て罪の重さを知れ!!」


バシュッ!!


「ぐっ……がぁぁぁぁっ……」


女の言葉通り、痛みを以て成敗されたルヴァンはその場にうずくまり、程なく意識を失い横たわる。

戦闘終了。 と同時に、悪党廃絶完了。






予想外の出来事に見舞われたが、当初の目的通り傭兵団は壊滅させた。


アジトである倉庫内で気絶している総勢57人の傭兵共。 保安所まで運ぶ訳にもいかず、倉庫まで来てもらった保安兵に縄を掛けられ連行された。

中には捕まる程の罪を犯していない奴もいるだろうが、事情聴取の為に1度は全員が確保される事に。

後で知った事だが、集会をサボって酒場に行っていたヤツらもちゃんと捕まったらしい。


あの女も、自らリーダーだと名乗って連行された。

現場にいた事で、一味の1人かと疑われたオレを 「こいつは無関係だ」 と突き放した女の態度は相変わらず冷たいものだったが、その時ばかりはささやかな優しさの様なものを感じ取れた。


アリィの待つ宿へ戻ったオレは、アジトへ乗り込んだ経緯を全て話した。

黙っておいても良かったが、どうせ後で知られるだろうと思ったから。

その際、連中の懐を弄って取り返しておいたペンダントも手渡す。


後で知られると思った理由は、あの女には改めてもう1度会おうと心に決めていたから。

事情聴取とやらが済めば女はすぐに解放される筈。 なんというか、ヤツも同じ悪党じゃないかと少しでも疑ってしまった事を一言詫びておきたかった。




「もう! 私だって戦えるのにぃ! さっき魔法の練習してたんだよ!」


ペンダントが戻って喜ぶかと思いきや、危険な場所に単独で乗り込んだ事を責めてきたアリィ。

いや、あんなに落ち込んでいた新米魔道士が役に立つとは思わないって。 っていうか、対人で魔法なんか使ったら殺しちまうだろが。


「魔法は魔物相手の時に見せてくれ。 それより明日の朝、保安所へ行くけど一緒に来るか?」

「行く! 女剣士の顔が見たい! それと、今度すっごい魔法見せてあげるからね!!」

「分かった分かった、楽しみにしとく。」


ともあれ、ペンダントを取り戻した事でアリィに元気が戻った。 悪党揃いの傭兵団が壊滅し、迷惑していた町の住人も喜ぶ。

思い通りの結末に気分もスッキリした事で、今夜はよく眠れるだろうと確信する。

ところが、いざベッドに入ったオレはどうにも寝付けなかった。 捕らわれた女の処遇が気になって仕方なかったから。

――すぐに解放されればいいが。


同室故に隣のベッドで眠るアリィは、同じく寝付けないのかゴソゴソしている。

考えてみれば、家族でもない男と同じ部屋で一夜を共にするのは初めてだろうし、落ち着いて眠れないのも無理はない。

そんな風に思っていたオレに漸く眠気が襲ってきた頃、隣のベッドから立ち上がって近付いて来るアリィの気配を感じた。


何故かドキドキしてしまった理由はこの際置いといて、起こされたくないオレは眠気に身を任せる。

すると、オレの足元付近で立ち止まっていた気配が、今度は枕元にまで迫って来る。


「ペンダント………取り返してくれて………ありがと…………」


耳元で囁かれた言葉。

はっきりと聞き取れたが、オレはもう寝てるフリをしておいた。

成程、礼を言うタイミングを逃して寝付けなかったのかとそこで理解する。



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