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6-1 俺達と猫の旅立ち

「さて……」


 俺は見回した。深い森に朝日の木漏れ日が射している。聖地の前に、俺と仲間が勢揃い。ああ、猫のシュレだけは、狼神アルドリーの背中に乗ってるけど。乗馬のように。


 狼神アルドリーはその後も丸一日、俺達を放してくれなかった。というか有り体に言えば、ランとマルグレーテを。さんざんっぱらナデナデ&ブラッシングをさせ、晩飯も朝飯も、俺達と一緒に焼いた肉とかを食べて。夜は夜で、猫のシュレと一緒に丸まって眠る。なんか妙に仲いいんだよな。動物同士だからだろうけど(というか動物と動物神か)。


 泊まりは例の聖地……というか巣穴だよな、もうこれ。馬も周辺の草をたらふく食べられて幸せそうだったし、まあこれはこれでいい休息にはなったよ。


「俺達はもう行くよ、アルドリー。旅をのんびり続けたいし」


 それにどこかでもやもやも解消したいしな。


「うむ」


 アルドリーは頷いた。


「モーブ、それに皆の者もご苦労であった」

「背中が痒くなったら、また呼んでね、アルドリーさん」


 ランが背筋を撫でると、アルドリーは尻尾をぶんぶん振った。


「うむ。なにかあったら呼びかけるわい」

「そんなんできるのかよ。俺達、これから辺境を巡るってのに」

「あら、モーブ様」


 アヴァロンが、くすくす笑った。


「アルドリー様は神格。そのくらい、朝飯前ですよ」

「そうなのか、アルドリー」

「……悪さするでないぞ、モーブ」


 睨まれた。なんだよ、アルネに続き、こいつも俺の行動を把握できるのかよ、怖っ。……てか、寝室は覗かれないだろうな。


「にしてもなあ……」


 猫のシュレは、アルドリーの背中で丸まって瞳を閉じ、ごろごろ言っている。


「こうやっているとお前らマジ、猫と犬だな」

「んなーん」

「わんわん」

「いやアルドリー。犬の鳴き真似やめろ。どでかい狼が、キモいだけだわ」


 この野郎、俺をからかいやがって。


「もうシュレ。そんなにアルドリーが気に入ったんなら、ここで暮らすか。俺はそれでもいいぞ」

「……」


 どうする……とでも言いたげに、シュレがアルドリーの瞳を見た。振り返ったアルドリーも、黙ったまましばらく猫を見つめている。


「……」

「……」


 ややあって、猫がまた瞳を閉じた。器用に香箱座りをしたまま。


「……どうやらこの猫はモーブ、お前と共に歩みたいようだ」

「この子は前も、彷徨える魂を救うように寄り添っていたしね」


 ニュムが頷いた。


「多分、猫なりに使命感でも持っているんだよ、モーブ」

「モーブと一緒なら、食いっぱぐれないと考えておるやもな」


 ヴェーヌスは冷静だ。というか魔族だけにふんわかした幻想を持たないんだわ。


「アルドリーと暮らすと、生肉くらいしか食べられなさそうだもんね。おいしいもの、他にもいーっぱいあるのに」


 レミリアの言葉に、スレイプニールがうんうんと首を振る。ウチの二大食いしん坊だな、もうこれ。レミリアもエルフのくせに馬と同レベルでどうするという気はするが。


「では行け。余は見送らん。……淋しくなるでな」


 反転すると、振り返ることすらせず、すたすたと聖地の中に消える。背中から飛び降りたシュレは、俺の脚を駆け上り、肩に留まった。猫のくせにオウム並だな。


「よし行こう。もうみんな、休養充分だろ」

「そうねモーブくん」


 リーナ先生が、俺の手を引いた。


「今日は私が御者役をするわ。だから隣でかわいがってね」

「えっ……」もやもや

「いやあねえ。そういう意味じゃないわよ。仲良くやりましょうってこと」


 思いっきり笑われたわ。くそ。


         ●


 それから数日。俺達は順調に山道を進んだ。もやもやは……まあ……それなりに適当に。俺達も馬も……ついでに猫も絶好調。毎日食べて飲んで笑ってぐっすり眠って。


 ……そんなある日、レミリアが奇妙なものを見つけたんだ。



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