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3-4 ヴェーヌスの爆弾発言w

 その晩の宿屋。俺は寝台にぶっ倒れていた。ぐったりと。


「どう、モーブ」


 裸のマルグレーテが、俺の耳に口を寄せてきた。


「もう懲りたのではなくって。浮気は」

「こ、懲りた……」


 こんなん白旗降参だわ。


「ふふっ。珍しく素直ね。わたくしの下僕にしてあげるわ」


 唇を奪われた。熱烈なキスを浴びせてくる。


「まだ大丈夫であろう」


 ヴェーヌスが、俺の体に手を伸ばしてきた。俺の嫁九人は全員、素っ裸だ。宿で一番大きな部屋を押さえ、追加寝台を三つも寝室に運んでもらって連結した。もちろん、みんなで愛し合うためだ。


 いや正確に言えば、俺を懲らしめるためか。実際こうして、明け方まで全員を何度も相手にさせられたし。


「腹の娘も喜んでおるわい。お前の精を間近に感じられて」

「嘘つけ」

「嘘などつかん。この娘が生まれるのが楽しみだわい」

「どうして」

「モーブ様。魔族の子は、妊娠中の母親の行動で生まれ方が変わるのです」


 俺の腕を股で挟んだまま、アヴァロンが肩に口を着けてきた。はあ、プレイヤーの行動で自分のケイオスとロウが変わるゲームみたいなもんか。


「アヴァロンそっくりの子が産まれるんじゃないのか、普通」

「姿形は、モーブ様とヴェーヌスさんの子でしょう。きっとかわいいですよ。ふふっ」


 幸せそうに微笑んだ。


「でも種族が……ですね」

「変わるのか? 種族は普通に『魔王の孫』とかだろ」

「父上の孫に変わりはないわい。ただおそらく……」


 体を起こしたヴェーヌスが微笑んだ。


「淫魔として生を受ける」

「淫魔だと!」

「お前があたしに注いだからだ。大量に」


 待て待て待て待て。俺がしすぎたってのか。


「お、女の淫魔って……まさか」

「興味深いわね」


 寝台の端でごろんとこちらを向くと、リーナ先生がくすくす笑った。


「孫がサキュバスとして生まれたら魔王、今度こそモーブくんを殺しに来そう」


 先生は呆れ顔だ。


「よして下さい。考えたくもない」

「今晩だけだって、それ何度め? ヴェーヌスさんに精を与えたの。……そりゃ子供に影響出るわよ」

「魔王、どう思うかな、あはははっ」


 例によってのどちんこ丸見えにして、レミリアが大笑いした。


「待望の跡継ぎ、魔王を継がせる予定の孫娘が、サキュバスとして生まれてきたら」

「今度こそモーブ、殺されるかもね」


 マルグレーテが頭を撫でてくれた。


「俺の責任じゃない。魔族の特性が悪い」

「わあモーブ。そうしたらその子にも愛されるね」


 ランの爆弾発言。


「んなことないわ」

「でもサキュバスでしょ。しかも……もうモーブの存在を感じてるもん。モテていいねー、モーブ」


 無邪気な笑顔だ。そんなはずないとは思う。それに生まれるのは俺が老衰で死んだ後だ。まあ……このまま順調に長寿草摂取を続けたら、いずれヴェーヌスに近い寿命を得ることができるかもしれないけどさ。でもそれだって、育つうちに普通に恋人見つけるだろ。パパっ子になるとは限らないし、そもそも「パパっ子」というレベルの話じゃない。あり得るはずがない。


「ふわーあ……」


 目が覚めたのか、カイムが体を起こした。ハイエルフだけに、体も胸も、ひときわ白くて美しい。シルフィーやニュムと一緒に、集中的に責めたからな。三人で抱き合ったまま気絶してたんだわ。ふたりはまだむにゃむにゃ夢の中だ。


「あら、なにかしら……」


 寝台を軋ませて立つと、部屋の扉の前でしゃがみ込んだ。なにか封筒らしきものを拾い上げると、中の紙に目を通している。


「……モーブ様にです」


 俺の体を抱き起こすと、紙を胸に押し付けてキスしてきた。


「ん……」

「……なんの手紙だ」

「……ん……ご自分で……はあ」

「よしよし」


 体を引き寄せ、背中を撫でてやった。俺の胸に頬を寄せ、幸せそうに瞳を閉じる。ハイエルフは基本、感情を表に出さない冷ややかな存在なのに、俺の嫁になって変わったな、カイム。なんというか……もう、普通にヒューマンの新婚さん並に愛情表現を表に出してくるし。


「どれ……」かさかさ


 随分分厚い紙だ。そこに青のインクでなにかが書き連ねてある。




モーブ様


お寛ぎのところ申し訳ございません

エスタンシア・モンタンナのリゾートマネジャーより

モーブ様の招待をうけたまりました

ポルト・プレイザーですごろくやビーチバレーイベントでのモーブ様のご活躍を耳にし

エスタンシア・モンタンナでもモーブ様ご一行のイベント開催を計画中とのことです

ご協力頂ければ貴重なアイテムを提供したいとのことでした

一度リゾートにおもむき、相談だけでも乗っていただけると幸いです


弊宿マネジャー・アスタンシナ記す




「なんだこりゃ」

「なんだって、ねえモーブ」


 ランが顔を寄せてきた。目を細めて、文字を読み始める。


「なんか、リゾートでイベントしてくれって話だな」

「本当だ。……エスタンシア・モンタンナって、どこなんだろうね、モーブ」

「そこは著名な山岳リゾートね。大きな湖のほとりで、貴族や富豪が避暑に使うのよ」


 田舎貴族の家系とはいえ、さすがにマルグレーテは知ってるみたいだな。


「海のポルト・プレイザー、山のエスタンシア・モンタンナって、称えられてるわ」

「面白そうだよモーブ、行ってみようよ」


 ランはうきうき顔だ。


「そうだな……遊びなら俺は大賛成だ」


 ここんとこ、矛盾がどうたらとか辛気臭い義務の話ばかりでうんざりしていた。別に急ぐわけでもないし、遊びなら大歓迎だ。なんか浮気を疑われてるし(疑い……まあいいや、「疑い」ってことで)、リゾートで嫁の機嫌を取るのも俺の人生にとっては重要だ。


「でもなんで手紙なんてまどろっこしいことしたんだろうな。相談に来ればいいだけの話じゃないか」

「馬鹿だねー、モーブ。あはははっ」


 レミリアに笑い飛ばされた。


「きっと昨日、晩ご飯の後で相談に来たんだよ。でもモーブはその頃、あたしたちに攻められてた、寝台で。こらえきれないみんなの声がハモって聞こえてたら、ノックなんかできないよ。おじゃま虫だもん」

「あっ……」


 恥オブ恥。朝飯のとき、スタッフの顔見られないわ、俺。


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