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2-3 野良猫の巣

「えらい騒ぎだったな……」


 結局その晩、エリナッソン先生のゴーゴン孤児院に泊まらせてもらうことになった。ガキ共が俺達にひっついて離れなかったからだ。


「結局泊まることになったし」


 泊まるとはいっても、なんせ貧乏孤児院だ。宿泊の謝礼ということにして、馬車の食料だの日用品を大量に持ち込んだ。なに俺達には問題はない。ちょっと雑魚を狩れば、俺の「レアドロップ固定」スキルで金は稼げるからな。


「いいではないか。たまにはこんな夜も」


 俺と同じ藁布団に寝ているのは、ヴェーヌスだけだ。


「病気の小僧もとりあえず安定しておったし」

「まあな」


 病気のハックルな。ランの回復魔法でとりあえず元気にはなったからな。慌てて薬草を取りに行く必要はない。とはいえ巫女アヴァロンの見立てでは、どうやらただの病気ではないらしい。なにか呪いとかその類のようだ。だからいずれにしろ薬草とやらを入手して、根本的解決は図らないとならない。


「それにあたしは嬉しいわい。……こうしてお前とふたりっきりで」


 俺の胸に頬を寄せてくる。


「それ、俺とお前が人気なかったからだぞ」


 実際、他の嫁には漏れなくガキがひっつき虫となってる。それぞれの寝床で野良猫のように何人もくっついたまま眠ってるからな。エリナッソン先生は恐縮してたよ。みんな不幸な育ちなので、人……特に母親代わりの存在に飢えていると。


「人気がないから、こうして……」


 甘えるように、キスをねだってくる。ここは個室。ふたりっきりだからな。


「……ん。はあ……」


 溜息が熱い。


「こうしてふたりだけで楽しめるというものよ」

「お前、ガキにくっつかれて凝固してたけどさ」

「……なんだ」


 睨まれた。


「あんなんで子育てできるのかよ。……腹に俺の娘が宿ってるんだろ」

「育てるわい」


 真剣な瞳で見つめられた


「愛する男の娘だからのう」

「ヴェーヌス……」

「それに……、慣れておらんだけよ。あたしは魔族だからな。子が産まれたら存分に愛してやれるわい。モーブの娘を」

「そうか」

「だからお前も、長寿草をいっぱい食せ。あたしはお前と子育てを楽しみたい」

「結構食ったけどな」

「まだ全然足りんわ」

「……頑張るよ」

「それに……モーブが長生きになれば、あたしは……」


 また顔が近づいてきた。


「あたしはずっと幸せでいられる。お前のようないい男に、いつまでもいつまでも愛してもらえるからな」


 俺の服をはだけると、胸に口を着けてきた。


「モーブ……あたしも……」


 俺の手を、自分の胸へと誘う。


「ここは孤児院だぞ。不謹慎だ」

「あたしは魔族だぞ」


 くすくす笑う。


「不謹慎なのが当然ではないか。それにお前は……」きゅっ


「もうあたしを求めているようだが」

「握るな、恥ずかしいわ」

「なにが恥ずかしいのだ」にぎにぎ

「くそっ」


 ヴェーヌスを組み敷いた。


「知らんぞ俺は」

「それでこそあたしの婿だ。魔王の娘を手籠めにした、不埒な人間……」

「誰が手籠めだ。同意……というかあの晩はむしろ俺がお前に誘われたんじゃないか」

「父上との対決が翌朝だ。なんとしてもお前の種を仕込む必要があったしな。あたしとお前、それに……嫁の皆が、生きたまま魔王城を立ち去るために」

「なんでもいいよ、もう。……覚悟しろよな、ヴェーヌス」

「……なにを」


 楽しそうな瞳だ。


「神聖な孤児院を汚す。始めたのはお前だからな」

「精々、声を出さないようにしようぞ……」

「全ては明日からだ。明日、ビックルを連れて現場に出向こう。ハックルも行きたがってたな。とりあえず元気になったし、なんせ元が悪ガキだ。ビックル同様、冒険大好きみたいだし」

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