1-11 モーブ暴走w
「どういうことですか、ティオナ様」
「どういうこともこういうことも……」
俺の抗議に、ティオナ女王は苦笑いした。玉座の背もたれに背を預け、脚を組む。きらびやかなミドルスカートのドレスから、すらっとした脚が覗いている。
「そもそも瞳に現れたのは、森エルフの娘。我らには関係ない。勝手にそっちで対処しろ」
「で、でも、ファントッセン国王も協力するって言ったよ、ダークエルフの」
これまで大人しく話を聞いていたレミリアが、思わず……といった様子で抗議する。
「知らんのう……。それもダークエルフの都合。ファントッセンめは気まぐれな男であるし」
「ティオナ様」
シルフィーも口を開いた。
「我が君ファントッセン様は、エルフ全体の危機と判断されたのです。いくら霊力に優れたハイエルフと言えども近く、大きな危機に見舞われるに違いありません」
「ふむ……。さすがはファントッセンのお気に入り。型通りの反応しかせんのう……。まさにファントッセンの戦闘人形か」
取り付く島もない。
「もし我らが部族に影響が出るのなら、出たときにこちらで対処する。森エルフやダークエルフもそうすればよろしい。我らは神事を大事にしている。そのような些事など、無視の一択」
「エルフ全体の危機と、これだけ聞いてもか」
俺の問いに、ティオナは笑った。
「それは森エルフとダークエルフ神職の判断。当方の判断は違う。どっちが正しいかなど、どうでもよいこと。我々が判断した以上、もはや興味はない」
「ハイエルフ神職の判断のほうが、優れていると言いたいのか」
「もちろんだ。ダークエルフや森エルフとは異なり、我らは稚拙な感情に支配されたりはせん。運命のストリームを信じておる。世は万事、生々流転だと。その感覚は、祖霊も同じだ」
「ハイエルフ神職の判断に、間違いはないってのか」
「少なくとも森エルフやダークエルフ神職よりはのう……」
冷たい瞳だ。馬鹿にするでもなく、あざ笑うでもない。ただただ世事に興味がなく自分達の判断のほうが優れていると、信じ切っているのだろう。
「ならば勝負しよう」
俺の唇から、思わず言葉が飛び出た。止めることはできなかった。
俺はムカついていた。自分達の危機すらなかったことと無視して、尻尾を丸めて仮初の安寧に逃げ込むってのか。いや自分がその判断ミスで滅ぶなら、勝手にすればいい。でもこの女王の肩には、ハイエルフ全員の命が懸かってるんじゃないのかよ。それでも為政者かっての。
「森エルフやダークエルフの神職を見下すハイエルフに、どれほど神通力があるか、俺は確かめたい」
「面倒な奴じゃのう……」
女王は溜息をついている。
「どのように勝負をすると言うのだ。そもそもそこなエルフふたりは、ただの戦士。ささやかな霊力しかないではないか」
無感情な瞳だ。人生を悟り切っていて、怒りすら湧かないのだろう。
「俺には最強の神職がついてるからな」
巫女服姿のアヴァロンの肩を摑むと、ぐいっと前に押し出した。
「世界のために代々魔剣『草薙剣』を保管し、世界の安寧を祈り続けてきた『のぞみの神殿』正巫女。獣人ケットシーにして俺の嫁。アヴァロンと霊力勝負をしてもらおうか。そっちの最高の神職と。ハイエルフの矜持って奴を懸けて」
●モーブwww
次話から新章、「巫女勝負(仮題)」に入ります。皆様アヴァロンを応援してね(劇場でヒーローを応援するあれ)




