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1-1 北西へ! 馬車の旅一景

「はあー、おいしかった」


 山鳥の骨を、レミリアは背後の森に投げ込んだ。あぐらを組んだまま。


「はしたないぞ、レミリア」

「いいんだよ。骨は獣も食べるし、森の栄養になるもん」


 けろっとしている。


「エルフの知恵だよ。もう長く付き合ってるんだから、知ってるでしょ」

「そうじゃなくて、あぐらを組んだままってとこだよ。食べた命に敬意を払って、せめて立って投げろよ」

「やだ……おっさん臭い。それでもあたしのお婿さん?」


 口に手を当てて、うふふふ……と笑う。悪かったな。俺の中身はおっさんだわ。前世で死ぬほど苦労した社畜だからな。


「それにしてもお前、変わらんなあ」


 思わず口を衝いた。


「変わらないって、なにが」

「いやその……」


 俺が口ごもると、マルグレーテが引き継いだ。


「あなたもお嫁さんになった。だから少しはおしとやかになると思ってたのよ、モーブは」

「やだ。読心術?」

「モーブの考えていることくらい、わたくしわかるわ。単純だし」


 くすくす笑ってやがる。


「はあ? もう少し敬えよ」

「それに……」


 俺の手を取る。


「わたくし、モーブが大好きですもの。心が通じ合っているのよ」

「たしかに、一理あるのう……」


 目をつぶったまま、ヴェーヌスはうんうん頷いている。自分の山鳥を食べ終わると、そのまま音を立てて骨を噛み砕いた。


「あたしは大人しくなったからのう、モーブを婿に迎えて」

「あははははっ、嘘ばっかり」


 のどちんこ全開で、レミリアが笑い飛ばす。


「ヴェーヌスはいつだって大暴れでしょ。魔王の娘がなに言ってるのさ」

「嘘ではない。少なくとも……その……床ではモーブにされるがままである」


 反論してから、ヴェーヌスは赤くなった。


「いやなんだ……その……」


 手でぱたぱた頬をあおいでいる。思わず自爆して恥ずかしかったか。


「それならあたしも同じだし」


 擦り寄ってきたレミリアが、俺の腰に身を預け、首に手を回してくる。


「ん……」


 キスしてくる。


「……はあ」


 ようやく唇を離すと、嫁となって以来藍色になった瞳は、しっとり濡れていた。


「ずるいレミリアちゃん。私も――」

「それならわたくしも」


 ランとマルグレーテが抱き着いてくると、キスをねだる。遠慮からか俺達を見ていただけのリーナ先生とアヴァロンもやがてそれに加わり、押し倒された俺の服は、誰かの手で脱がされ始めた。


           ●


「はあ……」


 一時間後、俺はうたた寝から覚めた。少し肌寒い。俺達の馬車は、北西にあるエルフの森を目指して連日進み続けているからな。緯度に加え季節の変化も加わって、日々感じる気温は下がりつつあった。


 裸の嫁が、俺を囲むように草原のそこここに転がって、うとうとしている。先程までの汗が、ようやく引いてきたところだ。


「やっぱり結局、こうなるか……」


 最後のひとりが嫁になったことで、馬車内の秩序は大きく変わった。これまではレミリアの目もあるし、表立って乱れることはなかった。


 でも今やレミリア含め六人揃って俺の嫁だ。夜は狭い馬車内で誰はばかることなく全員と交わるようになったし、朝も昼も、隙あればこうして愛を確かめ合っている。俺の心と体は嫁全員の共有財産みたいなもんで、誰といつこういう関係になってもも、誰も文句は言わない。むしろ自らも参加してくる。


 そんな状態が、俺も気に入っていた。もはやアドミニストレータが俺の暮らしを邪魔してくることはない。転生してのこの人生を、目一杯楽しむだけさ。


「モーブ……様」

「よしよし」


 夢ううつで身を寄せてきたアヴァロンを抱き寄せると、背中をさすってやった。アヴァロンの尻尾は、ゆっくりと揺れている。


「モーブ……」


 目を覚ましたマルグレーテが、俺の体のそこそこに唇を這わせ始めた。汗で噴いた塩を舐め取ってくれているんだ。


「さて……そろそろ行くか」


 体を起こすと、マルグレーテの髪を撫でてやる。


「ほら、もういいだろ。マルグレーテ」

「ん……もう少し……モーブ……好き……」


 仕方ないなあ……と思ったが、俺のほうもまた高まってヤバくなっている。時間はかからないから、まあいいか。マルグレーテの口、温かいし。


 俺は空を見上げた。一羽の小鳥が、傾きつつある太陽を追うように飛んでいる。北西に向かい。俺達を先導するかのように。

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