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6-8 アヴァロン姉妹と「依代の儀」

「さあ、モーブ様」

「おう」


 三人のアヴァロンに手を引かれるようにして、俺は神殿の長い廊下を進んでいた。道々話を聞いたが、いよいよ依代を得て正巫女の座を受け継ぐ時が来たため、次女と三女は祖霊によってここ聖地に戻されたということだった。


 よくわからんが、テレポートのようなものだろう。バニーアヴァロンとか、客にすごろく景品を渡している途中に消えたから、カジノは大騒ぎになっただろうと笑っていた。


「それで依代の儀って、俺はなにをすればいいんだ」


 ランやマルグレーテたちは、カエデと共に、神殿の祠の前に残された。俺ひとりだけ、こうして神殿のさらに奥に案内されているわけよ。


「依代ってくらいだから、俺にケットシーの祖霊かなにかが降臨して、お前らに正巫女の座を授けると口走るとかなんとか、そういう儀式なんだろ」

「ちょっと違いますね」


 巫女服姿の長女が、くすくすと含み笑いした。


「祖霊はそんな軽々しい存在ではありません」


 悪かったな。昼ドラレベルの陳腐な想像力で。


「すぐにわかりますよ、モーブ様」


 冒険者の服を着た次女が、俺の手を握ってきた。手のひらは微かに、汗で濡れていた。


「痛い苦しいなどはないので、ご安心下さい」

「モーブ様に喜んで頂けるといいのですが」


 バニースーツ三女が、甘えるような声を出した。


「依代を迎えるのは、私達も初めてなので……」

「というか、一生に一度のことなのです」


 長女は、目の前の引き戸を引いた。


「ここです、モーブ様」

「ここって……」


 広い。板敷きの道場のようで、どえらく明るい。片側一面が床から天井まで届く掃出し窓になっているためだ。窓外は縁側になっており、しっかり手入れされた大きな芝の庭を通して、借景として聖なる泉と滝が見えている。微かに滝の音が聞こえていた。


「俺は正座でもすればいいのか」


 なんか禅寺の修行場のようだ。


「今、準備します。さあ……」


 長女が呼びかけると、次女が横の引き戸を開いた。中から布団状のなにかを取り出し、床に広げ始める。


 三女は背中に手を回すと、なにかごそごそやっている。やがて紐が落ちると、バニースーツがすとんと足元に下がった。スーツがスーツだけに、下着は着ていない。あのビーチバレー大会でも目にした、アヴァロンの裸体が現れた。だが今回は水着すら身に着けていない。きれいな胸から和毛に覆われた下半身まで、丸見えだ。


「おいおい……」


 思わず、両手を半分だけ上げちゃったよ。降参のポーズで。そんな俺に構わず、長女も巫女服の袴を落とした。こちらは、ふんどしにも似た白い下着が見えている。白い布を注連縄しめなわのように太くり、腰の周囲と局部を隠すように巻いたものだ。


 上を脱ぎ輝くばかりの裸を晒すと、「褌」に手を掛けた。尻尾を避けるように、撚った布は背面で二股になっている。


「あの……」


 布団を広げ終わった次女も冒険者の服を脱ぎ、全裸になった。


「どういうことよ。誰か説明してくれ」

「モーブ様……」

「モーブ様」

「モーブ様ぁ……」


 三人は、俺を取り囲んだ。猫目がみんな、しっとりと濡れている。三つ子だけにほぼ同じだが、末っ子はやはり、少し甘え声。長女が一番しっかりした声。やはり立場がキャラを育てるんだな。


「依代になって下さい、モーブ様」

「どうすればいいんだ」

「私達に……精を……下さい」

「せ、精!?」

「はい。よろしくお願いします」

「ちょっと待て。どういうことよ」

「どうもこうも……」


 長女はくすくす笑った、


「私共を、モーブ様の女にして下さい。それこそが……依代の儀」

「いや……いきなりそんなことを言われても」

「モーブ様は、私のことをお嫌いですか」

「いや、かわいいと思うよ。三人とも。その……きれいだし」


 倒錯した状況に、頭が混乱してきた。裸のかわいい娘三人にぴったり密着され、まるで夢の世界のように現実味がない。いつの間にか、俺も半裸にされている。


「ならばよろしいではないですか」

「これにどういう意味があるんだよ」

「ですから、儀式ですよ」

「ちょっと待て。心の準備が……。てか風呂入らせろ。俺、あの泉でどえらく汗掻いて、どろどろだ」

「いいのです」


 長女の瞳は、ますます濡れてきた。猫目の瞳も開き気味になっている。


「たくましい殿方の匂いがしますから。私達の大好きな、モーブ様の……」

「最初にモーブ様にお会いしたときから、こうなってほしいと願っておりました」

「かわいいです、モーブ様ぁ……」

「これで……本当にいいのか」

「ええ。依代の儀は、巫女代々の一番重要な儀式。そのために私達は修行を重ねているのです」


 ふと思い出した。居眠りじいさんは、カエデと体を重ね、子を成したという。それも依代の儀だったのかも……。そういえばカエデはさっき、「わたくちたちとゼニス様は恋をし」って言ってた。わたくしではなく、「わたくしたち」だ。じいさんももしかして、三つ子を相手にしたってことか。


「さあモーブ様、横になって下さい」

「私共に身も心も任せて」

「殿方とのことは、母に習っておりますゆえ……」


 促され、俺は横になった……。


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