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2-2 幽霊船ラルゲユウス号

 俺達とアレギウスを乗せた曳航船は、幽霊船の周囲を一周した。


「あんまりきれいな船じゃないわね」


 マルグレーテが呟いた。


「そうね。……でも長期間漂流していたとも思えない」

「どちらかというと、現場でガンガン酷使されてきた実用船という感じだよね」


 レミリアの言うとおりだ。なんというか、荒れた海だろうが連日海に乗り出す、漁師の相棒といった感じ。木製だがあちこち凹んでおり、ペンキも剥げかけだ。接岸の衝撃を受け止めるためか、革の空気袋が舷側に並んで下げられているが、それもいくつかは萎んでいる。


「まあ、漁船じゃあないな、これは」

「運搬船といった感じね。乗客や荷物を運ぶための」

「ええリーナ先生。俺もそう思います」


 前世知識で言うなら、瀬戸内海とかで小島を結ぶ連絡船とかフェリーといった印象だ。ちゃんと客室らしき部屋と窓も見えているし。


「ねえモーブ、あれ、名前だよね」


 ランが指差す。


 たしかに舳先へさき側の舷側に、「ラルゲユウス号」と書かれていた。だがこれも、文字がかすれかかっている。


「名前から船籍とかわからないのか」

「はい、モーブさん」


 アレギウスが唸ると、人狼の唇から牙が覗いた。


「最初に中に入った船員の報告で、船長が魔導通信で問い合わせました。ただ船名からは、所属がわかりませんでした。……少なくとも、ポルト・プレイザー周辺の船ではありません。……ただ向こうの大陸の船の船籍などわかりませんし、こちらの大陸でも全土の船を統一して管理しているわけではないので」

「だよなー」


 この世界は、世界政府が中央集権的に管理しているわけではない。日本で言うなら戦国時代くらいの感じで、各地に王やら豪族やら公、宗教政府などがそれぞれのやり方で、各地を治めている。それもそれぞれ、魔族と戦っているからな。このあたりは、原作ゲームまんまだわ。


「船尾に被水ひすいデッキがあります。あそこから乗船しましょう、モーブさん」

「あの、水面に近いデッキか」

「ええ。船型からして、あそこは荷揚げや荷降ろし用でしょう。あまり……ポルト・プレイザー周辺では見ない船型です」

「船倉に荷物を運び込むために、低くなってるんだね」

「ええランさん、そのとおりです」


 手を振って、アレギウスが操船席に合図する。操船スタッフが、曳航船をそこに寄せた。


「よし」


 獣人らしく身軽にひょいと乗り移る。手を伸ばした。


「手に掴まって。ひとりずつですよ。接舷したとはいえ、両船の間には隙間があります。落ちて船の間に挟まれると、波で船が動いて潰され、死にます」


 縁起でもないわ。でもまあ小さな船は危険だからな。気を抜けば波で揺れて落水だってあり得るし。


「あたしは平気だよ。森エルフだから身軽だし、バランス感覚は最高っと」


 ひょいっと、レミリアが飛び移る。イケメンにいいとこ見せたいんかな、こいつ。


「じゃあお願い」


 リーナ先生が、アレギウスの腕を掴んだ。こっちの船では、俺が腰を支えてあげる。


「よっ……と」

「次はわたくしね。……モーブ、支えていてね」

「任せろ、マルグレーテ」


 無事に全員、乗り移った。


「報告によれば、船内は真っ暗です。窓のない部分は。……どなたか、トーチ魔法は使えますか」

「私使えるよ」


 ランが手を上げた。


「あと、リーナ先生と」

「なら安心ですね」


 アレギウスは微笑んだ。


「私が先に進みます。モーブさん」

「おう」

「相談しながら内部を探索しましょう。私と並んで下さい」

「わかった。……レミリア、お前が次だ。いつから漂流しているかわからん。床が腐っていては危険だ。エルフの観察力で、足元を警戒してくれ」

「まっかせてー、モーブ」


 他三人にも適宜役割を振ると、俺とアレギウスは船内への扉を開けた。


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