4-4 お嬢様を洗ってみた
「……じゃあ、次はモーブね。洗ってあげる」
洗い場で、ランがこっちを向いたんで、俺は背中を向けた。
「ラン、頼むよ」
「まずシャンプーだよ。目をつぶってねー」
頭に、ランの指を感じた。優しく、指の腹で洗ってくれる。
「おかゆいところは、ございませんかー」
「全部」
「やだもう。モーブったら」
冗談もいつもどおりだ。シャンプーが終わると、湯で流してくれる。
「次は背中ねっ」
背中に、ランの手を感じた。上下左右に動く。次に腕を洗う。この時は体を密着させるから、背中にランの胸を感じるんだ。これが楽しみでなー。天国のように柔らかな物体が当たって、ランに合わせて動くし。
何日かに一度は、先が硬くなってるのがわかることもある。そのときが特に気持ちいいんで、俺の中では「当たりの日」ということにしている。
あーちなみに、今日は当たりだな。背中で円を描くように突起が動くから、さすがの俺も、あやうく下半身に血流が集まりかけたわ。タオルで隠してるから見えないだろうけど、タオルが持ち上がってるのはランでもわかるからな。
まあランは無邪気で、こういう男の生理知らないみたいだから、気にせずに洗ってくれるんだけどさ。なんたって俺の真似して、ちゃんと肛門までていねいに洗ってくれるからなー。
「はい、終わりー」
ランがほっと息を吐いた。
「気持ち良かった? モーブ」
この言葉には、裏の意味はない。ランは純粋に「洗ってもらうのが気持ちいい」という発想で発言してるんだわ。
「うん。ありがとな」
「へへーっ。私、うまくなったでしょ」
「ああ。なんというか、天国の心持ちだった」
本音だ。なんせ危うく全立ちするところだったし。
「わあ、良かった」
抱き着いてきたから、またしても背中に胸を感じた。
「モーブ……」
肩に頬を寄せ、前に回した手で俺の胸を撫でる。ちょっと下りたとき、タオルを持ち上げる硬いものに触れて、驚いたように手を上げたけど。
「さて、次はマルグレーテちゃんの番だよ」
「わ、わたくしぃ」
マルグレーテの声が裏返った。
「モーブに洗ってもらいなよ」
「いいわよ。自分で洗うから」
「でも背中、洗えないよ」
「ならそれは、ランちゃんに頼むわ」
「私もまた温まりたいしね」
すっと立ち上がると、湯船に入っちゃった。
「モーブ上手いよ。安心して」
「そ、そう……」
おそるおそるといった感じで、湯船から出てきた。
「な、ならまあ……」
俺の前に背中を見せて座る。
「こ、このまま洗ってちょうだい」
「タオル外せよ」
「髪なら洗えるでしょ」
それもそうか。
「ならまあ、目をつぶってろ」
「うん……」
おとなしくなった。髪を留めている何本かのピンを外してやると、マルグレーテの髪が、ざっと広がった。
「きれいな髪だな」
「よ、余計なこと言わないで」
緊張した声だ。
「咬み付くなよ。褒めただけじゃないか」
「ほ、褒めてくれたの」
「そりゃそうだろ。きれいだって言ったんだから」
「あ、ありがと」
なんか混乱してるみたいだな。湯を掛けると俺は、シャンプーを始めた。
たしかにきれいな髪だわ。ランとはまた髪質も違うし。細くて素直。これ、手入れもかなりしてるんだろうなー。ランはなんての、野生ならではの美というか、そんな感じだからなー。
「気持ちいいだろ」
指で頭をマッサージしながら、聞いてやる。
「うん。……あっ」
ぴくりと、体が震えた。
「み、耳に触らないで」
「生え際洗ったんだ。少しくらい我慢しろ」
「わ、わかった」
あら、素直になった。
「ほら、もう終わったぞ。背中洗うからタオル取れ」
「め、目をつぶってて」
「わかったよ」
仕方ないから、目をつぶってやったよ。ごそごそ音がする。
「も、もういいわよ」
「おう」
目を開けると、マルグレーテの裸の背中が見えた。とはいえ、タオルで肩から腰まで前を隠して、がっつり押さえてるけど。
「手が疲れるだろ、それだと」
「そう思うなら、早く洗ってよ」
「わかったよ。人使いが荒いな」
苦笑いだわ。
手に石鹸を塗ると、背中に置いた。
「ひっ」
それだけで飛び上がってるな。
「びっくりさせるな。手を置いただけじゃないか」
「ご、ごめ……」
「じゃあ優しく洗うからな、痛かったら言えよ」
「うん」
野生のランとは違い、貴族の令嬢だ。肌が弱いだろうことは想像がつく。ことさらていねいに、俺は洗い始めた。
たしかにキメが細かいわ。まったり優しく包容力のあるランの裸とは異なり、線の細い、敏感なカモシカのような体つきだし。ちょっと思春期前の少年を思わせるところがある。まあそうは言ってもやっぱりすごく柔らかく、さすがは女子といった感じだけど。
「次は腕な」
「うん」
慣れてきたのか、声から緊張が消えた。
タオルをひっつかんだままの腕を、撫でるように洗ってやる。
「あんまりくっつかないで。背中にモーブの胸が当たってる」
か細い声だ。
「仕方ないだろ、前に手を回してるんだから」
「そ、それ以上は行かないで、そこだと胸に触っちゃう」
「はいよ」
タオル越しなんだからいいだろとは思うが、なかなか注文が多い。
脇腹から脇の下に手が進むと、また飛び上がった。
「ダ、ダメよそこは」
「じっとしてろ」
「……うん」
俺が脇の下を洗う間、下を向いて黙っていた。
背中に手を戻し、尻から肛門に指が進んでも、じっとしている。
「……っ」
「くすぐったかったか。ごめんな」
「も、もう大丈夫?」
声が震えている。
「もういいぞ。前は自分で洗えよ」
「うん」
俺が体を離すと、そっとタオルを取った。脇に置く。
「あんまり見ないで」
「わかってるよ。背中しか見えないから安心しろ」
「そうね」
手早く、自分で胸や腰、脚など洗っている。
「なら俺、先に湯船入ってるからな。来いよ」
「わかった」
ざぶざぶ。
「ねえモーブ。マルグレーテちゃんって、きれいな体だよね」
「そうか。ランからは全部見えてたもんな」
「うん。お肌もきれいだった」
「そうだなー。でもランのほうがきれいかな」
「本当?」
「ランに嘘はつかんよ」
「嬉しい。モーブ……」
俺の肩に頬を寄せると、俺の腕を抱いてきた。
裸の状態でそれされたの、初めてだわ。腕に胸を全部感じるし、手の先がランの腰に来るから、脚の付け根のぷっくりしたところや筋を、指に感じる。
ラン、かわいいよなあ……。
さすが、ゲームでメインヒロイン張るだけあるわ。
「わ、わたくしも入っていい?」
俺とランが密着してるのを見て、戸惑ってるみたいだな。
「いいぞマルグレーテ。体が冷えるからな。早く来い」
「うん」
近寄ってきて、俺の隣に位置取った。先程とは異なり、俺の隣だ。それに忘れてたのかもしれないが、タオルがない。だから歩いてくるとき体、全部見えたぞ。背中が少年っぽかったからスリムな感じかと思ったけど、胸、けっこうあるじゃん。さすがにランには負けるが、充分、スタイルいい部類だわ。
「ランちゃんとモーブって、毎日こんな感じなの」
「そうだよマルグレーテちゃん。だって天涯孤独。ふたりっきりの幼馴染だもん。他に頼れる人もないしね」
「それもそうか」
いやランもマルグレーテも、ブレイズのこと忘れてるぞ。
「繋がりが強いのも当たり前ってことね。うらやましいわ。わたくしにはそんな友達いないし」
「いるでしょ。私もモーブも、もうマルグレーテちゃんの親友だよ。もう忘れたの」
「そうだったわね」
マルグレーテが、近寄ってきた。俺の腕に、自分の腕が当たるくらい密着する。透明の湯を通して、きれいな胸と体が揺れていた。
「よろしくね。モーブ。それにランちゃん」




