6-11 ファイナルループ攻略の設計図
俺達は、ファイナルループゾーンの地図を見上げた。
1 仕掛けなし <現在地点
2 HPダメージ
3 アイテムショップ
4 罠
5 宝箱
6 戦闘
7 仕掛けなし
8 コイン一割ロスト
9 MP全喪失
10 六つ進む
11 コイン二割ロスト
12 仕掛けなし
13 ゴール
14 十進む
15 戦闘
16 戦闘
17 戦闘
18 宝箱
「分かれ道は無いわね。それに短くて単純。このすごろくは、先に進むにつれコースは単純化、そして凶悪化する。最後のゾーンだけあるわ」
「ひとつひとつ検討していこう。時間制限があるわけじゃないし」
「そうね」
「うん」
1 仕掛けなし
「まず第一のマス、つまり俺達が立っているここだ。当然仕掛けは無い」
「十八のマスを過ぎれば、ループして一からになる。周回のときにここに停まれば、一服できるね」
「そうだな、ラン」
2 HPダメージ
「次に第二のマス」
「HPダメージマスね。これまでもたくさんあったわよ、このマス」
「問題は、このループに宿屋が無いことだ。だからランの回復魔法で治すしかない」
「回復なら任せて」
ランが頷いた。
「そこにも問題がある。装備品の特殊効果が失われたことだ。さっきの『三つのパニッシュメント』とかいう罠で」
「そっか。私が調子に乗って回復してたら、MPが無くなっちゃうんだね」
ランが装備するアーティファクト「則天王の指輪」は、HPMP無限回復効果がある。その効果はもう無い。
「ポーションを使えばいいわ。ランちゃんの回復が凄いから、ほとんど使ってないでしょ」
「そうだな、マルグレーテ。でもポーションは、戦闘時の緊急回復用に取っておきたい。俺やマルグレーテでも使える回復手段だからな。戦闘時以外はランの回復魔法を使い、頃合いを見てMPポーションでMPを回復するのがいいだろう」
「そうね、確かに……」
3 アイテムショップ
「次はアイテムショップ。これは問題ないよね、モーブ」
「そうだなラン。むしろ周回時には毎周踏みたいくらいだ。今の話だが、ポーションだってここで補充できるしな」
4 罠
5 宝箱
「次の罠マスは嫌ね。中身がわからないから、事前にここで分析のしようがないし」
「さっきの『三つのパニッシュメント』、サードループゾーンだったもんね。ファイナルループの罠だからねーこれ。もっとひどい内容かも……」
ランが眉を寄せた。たしかに絶対踏みたくない。てか踏んだら多分その瞬間に詰む。
「次の宝箱マスには停まりたいところだわ」
「そうだな、マルグレーテ。ループが進むごとに宝箱の内容は良くなってるし、単に持ち点を減らさずに済むというだけでも助かる」
6 戦闘
7 仕掛けなし
8 コイン一割ロスト
「で、戦闘、仕掛けなし、次がコイン一割ロストかあ……。ロストは地味に嫌だね」
「ランちゃんの言うとおりね。今のわたくしたちの獲得コインが約三百八十万。加えて投げ銭が約四十万。合計四百二十万くらいだから、一割失うと、三百八十万。過去の歴代一位が三百九十万だから、一回踏むだけで、わたくしたちは一位の地位を失う。一位更新報酬の一億二千万コインはもらえないから、賞品『従属のカラー』交換は無理だわ」
あれ客引き用であって、もともと獲らせる気がないからな、このカジノ。だから見せ金同様の「一億枚」という、とんでもない交換レートになってるんだし。
「いや多分、投げ銭分は減らないはず」
「どうしてそう思うの、モーブ」
「さっきのパニッシュメントでコインを全部取り上げられたけど、投げ銭はそのままだったろ。つまりコイン操作は、獲得コインのみってことさ」
「そう言えばそうね……」
マルグレーテは、俺の腕を胸に抱いた。
「さすがはモーブ。……わたくしなんかより、ずっと頭がいいわ」
「あまり持ち上げるな。俺、天狗になりたくない」
判断が狂うからな。
9 MP全喪失
「次がMP全喪失。これも嫌なマスだねー。このループ、マイナスマスが多すぎるよっ」
ランは呆れたような声だ。
「ここに停まったとしたら、回復せざるを得ないもん。この後で戦闘マスを引くことを考えたらね。……だからここでMPポーションがごっそり減るし」
溜息をついている。
「たしかに。二回も踏んだら、えらいことになるな」
10 六つ進む
「俺、これが一番嫌だわ」
「これを引くと、せっかく近づいたゴール素通りだものね」
「しかも六つ先って戦闘マスだよ、モーブ」
11 コイン二割ロスト
12 仕掛けなし
13 ゴール
「コイン二割ロストは凶悪だ。細かく端数計算しないとわからないけど、一度踏むだけで一位脱落した上、再奪還はまず無理になるだろ」
「よっぽど投げ銭がブーストしないと無理でしょうね」
「戦闘マスはコインを大量に稼げるよ、モーブ。だから挽回も可能だと思う」
「たしかにランの言うとおりなんだが、そうなると今度は持ち点がな……」
リッチー野郎のせいで、さっきはたった一戦で三十六ものダメージだったからな。
「先生が居ないから、戦闘は長引く。これまで以上にダメージを受けるわ。それにここはファイナルループ。モンスター自体がかなり強くなっているでしょうし」
「考えたくもないわ」
「とにかく、サイコロでなるだけ早くゴールマスを引くことね」
「マジ、それに尽きるな」
14 十進む
15 戦闘
16 戦闘
17 戦闘
「この一帯、キツいねー」
頬に手を当てて、ランが溜息をついた。
「多分、どれかの戦闘マスに引っかかりそう」
「下手したら二連戦もあるわよね。十五マスから、サイコロで一か二が出たら連戦決定」
「十進むマスは、三連戦闘スルーできるしゴールに近づくから、一見神マスに思えるが……」
「宝箱ふたつとアイテムショップも通り過ぎちゃうよ」
「ランちゃんの言うとおりね。おまけに進んだ先が、『6 戦闘』マスだもの。一瞬喜ばせてから地獄に突き落とすパターン……。事実上の四連戦闘コーナーだわ、ここ」
マルグレーテの瞳が陰った。
18 宝箱
「『13 ゴール』を通り過ぎちゃったら、とにかくここまで行きたいよね、モーブ」
「マジだわ」
通り過ぎるなら、「宝箱」、一に戻っての「仕掛けなし」「HPダメージ」「アイテムショップ」と続く、このゾーンまで進みたい。それなら致命的なダメージはないし、むしろ色々回復のチャンスもある。
「さて、分析はひと通り済んだ。サイコロを振るか」
再度、地図を確認した。
1 仕掛けなし <現在地点
2 HPダメージ
3 アイテムショップ
4 罠
5 宝箱
6 戦闘
7 仕掛けなし
8 コイン一割ロスト
9 MP全喪失
10 六つ進む
11 コイン二割ロスト
12 仕掛けなし
13 ゴール
14 十進む
15 戦闘
16 戦闘
17 戦闘
18 宝箱
「この地図だ。……マルグレーテ、何の目を出せばいい」
「もちろん十二を引いてゴール。次点で四か六、十一の目、宝箱か仕掛けなし。残りは全部ダメね」
溜息をついている。
「絶対避けたいのは、七の目のコインロスト、八の目のMP全喪失。九もダメ。十は致命的」
「頭痛くなってきた」
いい目を引く確率は、三割強か……。
「じゃあ振るぞ。……いきなり戦闘の可能性はある。心しておけ」
「うん」
「わかったわ」
俺が振ると、サイコロは緑に輝いた。
●「緑」。その色が示す数字は……。
次話「泥沼の苦闘」一挙五千字、明日公開!
モーブ……。




