1-4-2 R18フラグ開放
「よく頑張ったな、ラン」
「うん……」
汗まみれのまま俺に抱き着いて、ランは息も絶え絶えだ。はあはあと荒い呼吸に伴い、裸の胸が激しく上下している。
「痛かったか」
「うん……」
ランはまだ、それだけしか言えない。意識朦朧といった雰囲気。体からは、まだどんどん汗が湧いてくる。
「そうか。悪かったな、ラン」
汗で頬に張り付いたままの金髪を、整えてやった。
「でも……モーブは……気持ち良かったんでしょう」
「ああ。気持ち良かったぞ」
「ならいい」
俺の脇に顔をすりつけてきた。
「モーブが気持ち良ければ、私も幸せなんだ」
「ありがとうな」
俺は嘘をついた。ランがあまりに痛がり、上にずれて逃げようとするので、かわいそうになって最後まではいけなかった。何度か体を動かしただけで中断したから、俺の欲望はどこかに放置されたままだ。
「モーブ……好き」
キスに応えてやった。リビドーがどうとか言いだすとややこしいが、少なくとも俺は精神的には満足している。征服感……というか、ついにメインヒロインを攻略したという満足感がすごくあるし。攻略どうとかより先にそもそも、ランへの愛おしさが心からとめどなく溢れ続けている。……なに性欲とかは、別になんとでも処理できる。今はこれでいい。
「おいで、マルグレーテも」
「……」
無言で、マルグレーテも抱き着いてきた。
「……なんだマルグレーテお前、泣いてるのか」
「ランちゃん……良かったわね」
マルグレーテは、俺の胸に涙を落とした。どうやら、ようやく俺と結ばれたランに、強く感情移入したらしい。
「ランちゃんは昔から、モーブのことを大好きだったんですもの……」
「そうか、ありがとうな、マルグレーテ」
「その……モーブ……」
マルグレーテは言い淀んだ。
「どうした」
「あの……わたくしも……」
言葉が途切れ、俺の脇に顔を突っ込んできた。恥ずかしいのだろう。耳まで赤くなっている。
「その……」
「マルグレーテ……」
顔を起こさせると、唇に指を当てる。そのままゆっくりと唇を撫でてやると、マルグレーテは瞳を閉じた。俺の指が唇を優しく撫でるままにさせてくれる。
「お前に言わせて悪かったな」
「……」
「いいのか」
黙ったまま、マルグレーテは頷いた。
「わたくし、モーブを愛しているもの。ただひとり、モーブだけを……」
体を起こすとマルグレーテを横たえ、キスを与えた。瞳を閉じ、マルグレーテは俺の唇を受け入れている。
「ラン……」
「うん。マルグレーテちゃんも、幸せにしてあげて。……私と同じくらい」
俺の背中に口を着けると、ちゅっと音を立ててキスしてくる。
「マルグレーテ」
「モーブ……」
横たわったマルグレーテにキスを与えた。瞳を閉じ、マルグレーテは俺の唇や舌が動くままにさせている。いつもなら自分から俺の舌を吸ってくるんだが、今日はおとなしい。
「いいんだな、マルグレーテ。後戻りはできないぞ」
お父様の言いつけどころか、マルグレーテは今晩、純潔を失うことになる。俺によって。
「いい……。モーブなら……」
まっすぐ見つめられた。月明かりに瞳が輝いている。
「お父様も、もう全ておわかりになっているわ。わたくしの心はこれから一生、モーブだけのものだと。……そして体も」
俺の手を握り、指を絡める。ふたり指を絡め合ったまま、見つめ合った。
●
翌朝。天使のようなふたりに抱かれたまま、俺は目覚めた。緞帳の隙間から、朝の光が寝室に差し込んでいる。裸の俺達に遠慮するかのように、おずおずと。
「モーブ……」
むにゃむにゃ言うランを、そっと抱き寄せる。
まさに夢の一夜だった。処女ふたりと童貞の初体験だったから、いろいろぎこちなかったとは思う。
でもそれを割り引いても、女の子の体って、あんなに気持ちいいんだな。ひとりで処理するのと違って、一回一回体を動かすだけで全然感覚が違う。おまけに俺が動く度に反応があるから、どえらく興奮する。
それに体の関係って、心も強く繋がるんだな。なんというか、これまでよりずっとランとマルグレーテを愛しく感じた。
抱き寄せたふたりの背中を撫でながら、俺は思ったよ。
この朝が永遠に続いてくれればいいってな。俺に抱かれたまま夢の世界で遊んでいるふたりが、永遠に幸せなままでいてほしいと。
●明日公開の次話から、新章「第二章 行き倒れエルフ」突入! 新ヒロイン「レミリア」が登場するのでお楽しみにー。




