今日は嘘でもついてみたい
お風呂上り、自室のデスクチェアーに腰を掛ける。
今日も一日が終わった。
今は春休みだけれど、たまにラインをするくらいでずっと自習をしていたため、この寝るまでのフリータイムが安息の時間だ。
小説の続きを読もうかと思ったが、その前に今日の日記をつけるとにした。
引き出しから日記を取り出し、最新のページに“四月一日”と書き入れた。
「エイプリールか」
珍しく独り言が出た。
小花さんがラインで変なことを送ってきていたけれど、そういうことかと妙に納得した。
僕も嘘の日記でも書いてみるか。
早速ペンを手に取ると、架空の日記を書くことにした。
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砂川武蔵、三十歳。
今は東京都清瀬市ではなく、山梨県甲府市に住んでいる。
仕事はまあまあいいところに務めていて、新年度での転勤の都合で今のところに配属となった。
まったくもって知らない場所ではないので、何とかやっていける気がする。
それに二人の子供もまだ小さいし、転校ということでもない。
妻には負担をかけてしまうかもしれないが、仕事以外でも出来ることは積極的にやっていきたい。
この幸せを守れるのだったらなんだってする気持ちだ。
コメディアンに妻を侮辱されたら手を出す勢いだ。いや、やはりそれは良くない。対話で解決しよう。
ちなみに僕の妻の名前は……
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「やはりこういうのは苦手だ」
そうつぶやくと日記を閉じて、小説を手に取り昨日の続きを読むことにした。