月明かりの散歩と遊園地
月明かりの下を歩いていた。夜の町並みは静かで、営業している店はほとんどない。あるといえば居酒屋だったり、深夜まで開いているラーメン屋ぐらいだろうか、時刻は深夜の2時過ぎだった。ちらほらと人が通り過ぎるだけで、すこし寂しい町並みを私は通り過ぎる。
別に目的があって外を歩いているわけじゃない。ただ外の空気に触れて気分を変えたいだけだった
それは昨日のある事件のせいだ。
私は友人と一緒に朝から遊園地に来ていた。その日は休日で人がたくさんいた。まずはチケットを買わないといけないけれどそれも長蛇の列で埋まってしまっている。あと2時間くらいはかかりそうな雰囲気に私はげんなりした。
「なあ、本当にここに並ぶのか?」
私は嫌そうな顔をして言う。
「うん。そうだよ。時間はかかるかもだけど、我慢して待った分楽しいはずだからね」
と友人は笑顔で言う。
何が楽しいのか?入る前にこんなにも待たされるだけなのにと考えながら私と友人は列の一番後ろに並ぶ
「まだ時間があるから、行きたい場所を考えておこうか?何から行きたい?」
と友人は尋ねる。私は別に行きたいと思わないけど一応答えておく。
「ジェットコースターでいいよ。お前か苦手そうだし」
友人は少し困った顔をしていた。
「確かに苦手だけれど君が乗りたいなら仕方ない付き合うよ」
私も別に乗りたいわけではないけど友人の面白い顔を見れるかもしれないから言ってみただけだった。
「別に無理して乗らなくてもいいぞ?私はどこでもいいし」
「ありがとう。心配してくれてじゃあ後で観覧車にでも乗ろうか?」
友人は笑顔で言う。
「別に心配なんかしてないから、いいよ。観覧車だな」
私は慌てて言った。それからたわいもなく友人と話しているとやっと列の一番前まできてチケットを二人で買った。
ここの遊園地はそこそこ有名なところでもあり、中に入ると人でごった返していた。あまりにも人が多いので人酔いしそうな感じだ。
友人は私の方を見て
「さすがに今日は人が多いね。一応君が迷子にならないように手を繋ごうか?」
と言って手を差し出してくる友人。
私は恥ずかしがりながら答える。
「迷子になんてならないよ。けどお前が迷子になるかもしれないから手をつないでやってもいいぞ?仕方なくだからな」
私は差し出した手をそっと握った。
友人はちょっと笑いながら握った手を軽く握り返した。
それから私と友人は遊園地の中を歩き回ってジェットコースターに乗ったり、観覧車に乗ったり、ランチをしたりした。気がつくと夕方になっていたので最後にお土産の売っている場所に二人で入った。
店の中にはお土産屋らしく、クッキーやら、チョコレートの入った箱のものや、Tシャツやら、キーホルダー、ぬいぐるみなどなどいろんなものが置いてあった。私は辺りを見渡して何か欲しいものがあるか探した。
やはりここは無難にキーホルダーだろうか?鍵とかカバンに付けられるし?と私が熱心に見ていると隣から声がかかる。
「キーホルダか、いいね。良かったら二人で一緒のを買おうか?記念にもなるし」
と友人は何気なしに言う。
私は考える。記念?確かに友人と遊園地に行くのは初めてだし、いいのかもしれない。だけど一応私は女性。友人は男性。一緒にキーホルダーを付けてたら、恋人に間違われないか?別に私は気にしないけど友人はどうだろう?
「いいけど、でもそれってなんか恋人どうしでする事じゃないか?恥ずかしくない?」
すると友人はためらいなく答える。
「僕は気にしないよ。恥ずかしくもないし、君とは友人だからいいかなって、ダメかな?」
私は友人にそっぽを向きながら答えた。
「そうだな。友人の証だな。いいんじゃない。一緒に買いましょう」
良かったと友人は言いキーホルダーを2つ選んでレジに持っていった。
なんだ私の勘違いだったのか?恋人どうしじゃなくて友人同士でもするんだな。良かった。焦って恋人にでもなる?って言いそうだった。危ない。危ない。別にあいつの事は嫌いではないから、付き合ってもいいけどと考えていると友人が小さな袋を持って帰ってきた。
「はい。これ君の分。お代はいいから僕に付き合ってくれたお礼と思ってよ」
私はさっとその袋をひったくる。
「ありがと、別に気にしなくていいよ。好きで付き合ってるだけだし」
友人は嬉しそうな顔をして言う。
「じゃあ帰ろうか?もう日が暮れそうだし」
私は頷き二人で遊園地を後にするのだった。
これが昨日のでき事だった。
私は家に帰るなりその袋を開けてみた。中から出てきたのは小さなイルカの形をしたキーホルダーだった。
なかなか綺麗でいいな。私は早速家の鍵につける事にした。それからベッドの上で寝転びなからキーホルダーをずっと眺めていたら気がつけば夜になっていた。時刻は深夜の時間だった。私は何をしていたのか?まるでこれは友人にもらったキーホルダーが嬉しくてたまらないみたいじゃないか?うーん。どうかしてるなたかがキーホルダーをもらっただけでよし、散歩にでも行こう。
そして現在に至る。私は近くの公園に着いていた。辺りには小さなブランコがあったのでそこに座って見た
そして考える。今はただの友人だけれどいつかは恋人になるかもしれないなと、いや、あいつの気持ちも考えると友人のままかもしれない。
どちらにせよ私にとってはどうでもいいことかもしれない。私はただ友人と一緒にいらればいいのだから、そんな事を考えながらただ一人ブランコをこいでいた。明日が楽しみだな。きっと友人は一緒に買ったキーホルダーを付けてくるだろう。
私もキーホルダーを付けて行く。友人はどんな顔をするだろう?私はどんな顔をするだろう?と考えながら夜はふけていった。