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君と神隠し  作者: 雨世界
1/1

1 ねえ、なにしてるの?

 君と神隠し


 登場人物


 山里三夏 中学一年生の少女


 立花美生 中学一年生の少女


 白 幽霊みたいな、白い女の子 


 プロローグ


 寂しくないよ。あなたがいるから。


 本編


 神隠し。


 ……誰もいない。

 ……いない、いない。


 ねえ、なにしてるの?

 

 ……『神隠し』。

 或る日突然、人が消えるようにして、(理由もなく)いなくなってしまう。

 みんなが噂をしている、そんな不思議な現象が本当に起こるなんて、三夏は全然信じていなかった。自分の親友が、『神隠し』にあって、本当にこの世界から消えてしまう日がくるまでは。


「はっくしょん!」

 山里三夏は大きなくしゃみをした。

「寒い」

 三夏はその体を震わせる。


 それもそのはずで、三夏は白と水色の中学校の制服姿であり、(持っているカバンも、中学校の指定の肩掛けカバンだった)深い山の中を歩くにしては、軽装過ぎた。


『大丈夫ですか?』

 そんな三夏に優しい声をかける『人』がいる。

 それは『白い女の子』だった。


 全身が真っ白な(それも淡く光り輝くような、不思議な白さをした)女の子が、三夏を先導するようにして、山の中の道を歩いていた。


 その女の子は、よく見ると、普通の人間ではないことがわかった。


 言葉を喋ってはいるけれど、口はない。

 女の子の声は直接、三夏の頭の中に聞こえているようだ。女の子は口だけではなくて、目もない。鼻もなく耳もない。(ただの形だけがそこにはあった)


 そんな白い女の子は体重がないように、大地の上に足はつけているけれど、ふわっと空中を浮き上がるようにして、(月の上を歩いているみたいだった)三夏の少し前を歩いている。


 その女の子のことを一言で表現するのなら、『幽霊』というのが一番正しい表現かもしれない。(実際に、その白い女の子は本物の幽霊なのかもしれない)


「ねえ、白ちゃん。目的地まで、あとどれくらい?」

 肩で息をしながら、三夏が言う。(こんなことなら、ちゃんとさぼらずに、真面目に体育の授業を受けていればよかった)


『うーん。そうですね……』

 そう言って、白ちゃんと呼ばれた白い女の子は足を止めて、きょろきょろと周囲の深い緑色の森の風景を見渡した。

 それから三夏を見て、『きっともうすぐです』とにっこりと笑って(目も口もないのだけど、白が笑ったと確かに三夏にはそう見えた。


 ……本当かな?


 三夏は思う。

 もしかしたら私は、このまま白ちゃんに森の深い場所にまで誘い込まれて、『神隠し』の新しい犠牲者になってしまうのかもしれない。と三夏は思った。


 でも、それでもいい。

 それでも仕方がないのだ。


 だって、美生を助けるためには、森の奥にいくしかない。『神隠し』にあって消えてしまった美生にもう一度会うためには、私が美生のいる場所にまで行かなくちゃいけないんだ。

 三夏は思う。

 三夏の頭の中には美生の笑顔があった。その眩しい美生の笑顔だけが、三夏に勇気と力をくれた。

『三夏さん。どうかしたんですか?』空を見て笑っている三夏を見て白が言う。

「ううん。なんでもない。さ、先を急ごう。早くしないと日が暮れちゃうからね」三夏は言う。

『はい。いきましょう』にっこりと笑って白が言った。

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