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俺とやっくり  作者: クスクリ
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4話 ランサーEXターボ

 注文はしたものの、俺のパジェロが手元に届くのは早くて9月だ。俺より川本の方が待ち遠しいようだ。

「木村さん、パジェロはいつ入ってくるんな?」

「はい、三ヶ月は掛かるそうです。すいません」

「別に謝る必要はねぇんやけどよ」と川本は何か釈然としない様子だ。

 最初はみなが乗ってない車を手に入れたことに得意になって、フルオープンにしたジープに子供を乗せて楽しんでいた川本だったが、それも飽きてきたようだった。


「遊びに来んな」という川本の電話を取った俺はほいほいと即行で出掛けて行く。日報は一応あるが、出そうが出すまいが勝手だ。一日の仕事はほとんど管理されない。どこに行こうが自由で、ただ車さえ売ってくれば良かった。

 ホテルやまなみの客室は8部屋。一階が来客用の車庫で二階が客室だ。ホテルの敷地に入ってきた車は、一階に停めてシャッターを下ろし二階に上がって行く。

 川本は各部屋に地名を付けている。「松山」とか「大阪」とか。その中で事務所に隣接した部屋だけ空き部屋にして、一階の車庫にジープを入れている。

 川本は意味有り気にニヤニヤしながら俺を車庫に案内する。ジープの15インチのホイールはスタイルドホイールと呼ばれるスチール製だ。川本のジープはゴールデンブラック仕様だからホイールはゴールド塗装だったが、ピカピカのアルミホイールに換装されていた。タイヤはブリジストンの四駆用タイヤ、デザートデューラーの604の10Rだ。

「タイヤ・ホイール換えたんですね」

「凄いっすねぇ」

「ノーマルは195のカミソリタイヤやし、格好悪いで乗れんわ」

 自慢気に、「ラグナのアルミやでぇ」と言われても、俺は疎いから相槌打つしかない。

「次いでにスペアも替えたいんやが、アルミは高いけスチールで我慢や」

「木村さん前も見てや」と頭から突っ込んでいるため車庫の奥に俺を誘う。

 鉄製のバンパーを支える二本のアームフレームにランプステイを渡して、200パイのドライビンクランプが取り付けてある。ランプカバーには誇らしげにスーパーオフローダーのロゴ。

「どうや、決まっとるやろ」

「いいですねぇ」

「パジェロがきたらどげな風にするつもりな」

「即行でタイヤとアルミは替えるつもりです」

「そうよな。ノーマルじゃ乗れんよな」


 当時販売されていた四駆の雑誌は4×4マガジンだけだったが、パジェロを注文してからは俺もこの雑誌を書店で立ち読みするようになった。俺が今まで買った車は中古も含めて3台、このランサーターボの前に乗っていた中古のトレノはMB自動車に入社して二ヶ月後、先輩の知り合いに売り払った。トレノに付けていたアルミ・タイヤは外してランサーターボに付けた。

 ただこのランサーターボ、俺はインタークーラー付きの新型が欲しがったが、俺の直属のマネージャー、田尻が許してくれなかった。

「新型は売れて売れてしょうがない筈じゃ。お前まで回ってこん。旧型なら転がっとる。新人は在庫処理して会社に尽くさな」

 確かに、入ったばかりの新人は会社の指示には抗えない。それでもせめてLSDくらいは欲しがったが、その些細な希望も断ち切られた。為に俺が執った無駄金遣いの数々。


 どうしてもインターク―ラーを付けたかった俺は、会社近くのカーショップに飛び込んで、社外品の水冷インタークーラーをこれ見よがしに取り付けた。この装置、見た目構造がちゃちな上に本体が重たく、インタークーラーに冷却水を送るパイプが振動で時折抜け、只の吸入空気の筒と化す。リヤLSDは営業中に見つけたラリーショップ、江口に飛び込んで付けた。

 極めつけの無駄遣いはHKS製のVVCと燃料増量装置だ。チューニングショップの名前はTSレーシング、改造ど素人の俺はレーシングという店名に気圧されて、ここに頼みさえすれば、新型ランサー並みのパワーを手にすることができると本気で信じ込んでしまった。

 統一性がないチューニングは得てしてチグハグになってしまう。俺のランサーは只の自己満足に終わってしまった。その証拠に、俺は会社の整備の奴らに、「ド新人ランサーのカスタム仕様や!」と陰で笑われていた。

 

 そして極めつけ。俺がランサーの旧型を買わせられたのは12月だったが、年が明けたら整備の奴らが続々と新型のインタークーラー付きランサーを手に入れ始めた。

 何じゃ!社員まで回ってこんっちゅうんは田尻の口から出任せやったんか。何ちゅう上司じゃ。こげなことするけん新人の営業が長持ちせんのじゃ。

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