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俺とやっくり  作者: クスクリ
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若禿(前書きⅤ)

 一缶五千円の飲む発毛剤は変わらず飲み続けていたが、残念ながら、30歳までに禿とおさらばする計画は泡と消えた。と同時に、親父からの結婚圧力が段々と強まって来た。

 土を口に入れたみたいな食感のこの発毛薬、もう効能がないのは分かってきていたが、飲まないと情緒不安に陥った。一度に30粒、1年以上も続けると吐き気を催しだした。それでも目を瞑って飲み続けた。よく、身体を壊さなかったものだ。その点は良心的だったなと発売元には感謝してもいいかも。


 俺は27歳のとき、四駆に嵌ってパジェロを手に入れた。これこそ趣味と実益の両立だといい気になり、ひたすら林道を走り込んだ。林道が問題なくかっ飛ばせるようになったら、次は四駆コースのかっ飛びだ。俺の行き付けの四駆専門中古車屋、ファミリー自動車の社長が俺の希望を叶えてくれて、平尾台に四駆のスピードコースを造営してくれた。このことで俺は本格的にスピード競技にのめり込んだ。

 暇さえあれば走りに行った。パジェロもタイヤ径を小さくし、走りに徹した足回りに変えてタイムを削ることだけに徹した。狭い、ユンボで道をつけただけの、石ころごろごろのアップダウンの激しい無茶荒れたコース、その走りは凄まじかった。ユーチューブにその動画をアップしているが、何しろ32年前のことだ。現在の平尾台のその場所は駐車場になって当時の面影は全くない。


 初めの内は、一台ずつ走ってタイムを競うタイムトライヤルで満足していたのだが、次第に最も激しい四駆の競技、「よ~いどん」の一斉出走方式のスクランブルレースに食指が伸びだした。当時は四駆の全盛期で、各地でオフロードレースが開催された。MB関係にもこの競技の第一人者がいた。増岡選手だ。彼はこの競技で名を売り、MBの広告塔にまで出世した。パリ-ダカールラリーにもワークス体制で参戦した。競技を引退した今も、全国を回ってMB車の宣伝活動に活躍してくれている。


 30歳のとき、四国香川の長尾町で毎年開催されていた本格的なオフロードレース、香川4WDフェスティバルに参戦した。人生を賭けたつもりになって、平成元年・3年・4年と三度参加したが、結局大した成績は上げられなかった。それと、地元で開催されていた年間四戦のオフロードレース、「浜の耐久レース」にも参戦しだした。こちらは、レベルの高い中央のレースとは一線を画す草レースではあったが、凌ぎ合いは激しかった。でも、十数年の参戦で、年間は取れなかったが、三度優勝した。

 オフロードレース参戦を機に俺の交友関係も変わった。それまで付き合っていた、俺を四駆に引き摺り込んだ顧客の山田とは一時期縁を切った。この山田が後、従妹を俺に紹介してくれて結婚することにはなるのだが。


 その頃漸く、MB自動車販売にも女性セールスマンを活用する来店客専門の店頭課ができていた。受付の裏、来店客に見えないように自販機が設置されていて、訪販で疲れて帰って来た夕方、ここでコーヒーブレイクしながら店頭課の名倉と駄弁るのが俺の日課になっていた。 

 頭は、「ハゲしいな!桜井くん」状態ではあったが、MB社内では誰もできない、オフロードレースに参戦して戦っているという事実が俺の自信に繋がって、店頭課の女性セールスの名倉と打ち解けることができたのだろう。高校・大学・豊前屋とフラれ続けたうえに禿げて、MB社内では恋愛に奥手になっていた俺には信じられないことだが。


 これから先を語るのに欠かせない登場人物は、名倉の同僚の同じ店頭課の首藤奈美ちゃん、俺より8歳年下の同僚・田中、新卒で入社して俺と同じ課に配属された伊藤、俺と同じパジェロスポーツターボに乗る宮川さん、MBの先輩・西村から紹介して貰った同じパジェロのスポーツターボに乗る古庄さん、古庄さんの行き付けのスナック・メルローズ、古庄さんから紹介して貰った四駆ショップのハンズ、ハンズに紹介して貰ってパジェロを売った大手ビール会社の廣井さんと平井さんだ。

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