若禿(前書きⅠ)
すいません。このまま書き進めたかったのですが、テーマを変えて別の角度から「俺とやっくり」を書いていきたくなりました。題名は、「若禿」です。
このテーマ、ずっと書こうかどうか迷っていたが、やはり書いておくことにする。今じゃないと書けないような気がするから。俺の人生を左右したのは左足切断か、若禿か?
もう還暦を迎えて社会活動に加わることもなくリタイア生活を送っているから書けることなのだが、半々ではないかと思っている。俺は、頭は切れるが髪がない。正直、定年1年前に会社を辞める決断をした理由を今分析すれば、障害者差別40パーセント、若禿40パーセント、その他20%だ。このその他20%はまだ書けない(嫁が見てしまうから)が、40パーセントの若禿は書ける。
会社に若禿は俺を含めて二・三人しかいなかった。営業では俺だけだ。俺は若禿のために必ず実年齢より上に見られた。醜悪なビジュアルをもうお客さんにも社員にも曝したくなかった。
禿は正常な生理的現象であるとし、病気としては扱われない。癌・臓器疾患・脳疾患などに比べたらそう悩むほどの問題ではないと一喝されて簡単に片づけられてしまいそうだが、当人にとっては人生を左右するほどの遺伝的疾患だ。脱毛症の男性はヨーロッパで多く、東アジアや東南アジアでは少ないとされる。薄毛率が比較的低い東アジア(特に日本と韓国)では、若禿は昔から軽蔑される風潮がある。
家に籠ってネットをしていたら、あの手この手、手を変え品を変え、養毛剤・育毛剤・若禿予防・若禿対策・若禿改善策、そしてダイエットの広告が忙しく俺の視界に飛び込んでくる。それだけコンプレックス産業の市場が大きいのだろう。要するに、藁をも縋る奴に甘い言葉を囁いてぼろ儲けだ。
俺に言わせて貰えばデブは遺伝ではない。本人の日頃の不摂生の賜物だ。仰天ニュースにも出て来るが、絶対スリムになってやるぞ、という強い意志のもと、食事制限して死ぬ気で走れば痩せる。一日何も食わなかったら確実に1キロは体重が落ちる。1回小便をすれば200グラムは落ちる。一日五回トイレに行けば1キロは痩せられるという塩梅だ。忍耐力がなくてやり切れないだけだと俺は決め付ける。
身長173の俺の維持したい体重は66キロ台。昨日の朝計った体重は66・8キロ、1パック6個入りの100円タコ焼きと食パン1枚で昼飯を抑えて、晩飯まで5回小便して、晩飯前に計った体重は66・3キロ。普通に食っても66キロ台は維持できるだろうと、俺の十八番、焼き飯(3人分作るが、息子は大盛、俺は普通、嫁が一番少ない)を作ったが、食後計った体重は何と67・5キロ、1200グラムも増えていた。腹八分で納めたつもりだったのに感は当てにならない。だから、今日もタコ焼きだ。これで3日連続。あとは小便の回数で体重調整だ。