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04



 気が付けばもう、あたりは暗い。知らない間に結構な時間が流れていたようだ。暗くて二人の顔が認識しづらくなるが、どうあってもここを離れる気はないらしい。早いところ本題に入ろうと、話は続いた。



「さて、さっきのアレらだけど」

「…怪奇現象のことですね」



 ストレートに走ったものだ。帝サンはうんと頷くと、右手をそっとかざした。何の変哲もない、強いて言うなら綺麗な白魚のような手だ。ここに一体何が、と顔を近づけてみるが、やっぱり何もない。



「魔法、だよ」



 突然肩に重みが乗る。顔を上げれば、神代サンがあたしに後ろから乗りかかっていた。



「まほう…」



 やっぱりそうだったのか…。実際に目の当たりにしただけあって、驚きはそこまでない。信じられないけど、信じられない目に二度もあったのだ。まるで小説やゲームの中だけの話を目の前のするとは思わなかったけど。



「そんなもの…この世の中にあったんですね…」



 こうなれば、自称魔法使いさんにも見せてあげたいもんだ。



「まあ、正確に言えば、この『世の中』ではないな」

「…え?」

「いいよ、ややこしくなるからそれは」



 今の言い方、まるで魔法は「違う世の中」のものだと言ってるみたいだ。だとすれば、帝サンは…?

 …確かにややこしい。魔法だけでも非現実的なのにそれ以外のことはあたしの頭にはキャパオーバーだ。おとなしくしていよう。



「本当だったら、この真実を見抜いた人間は排除しなければいけないんだけど…」

「は、排除? それってさっきの口封じ…!」



 あたしが戦闘コマンドを引き出そうとすると、頭をぽんぽんと叩かれた。神代さんだ。安心しろ、という言葉が降ってくる。



「それはしないから、代わりのことをやってもらいたいんだ」

「交換条件ってやつね」



 帝さんが付け加える。



「交換条件…。それをすればあたし、殺されなくてすむの?」

「うん、うまくやってくれたらね」



 よ、良かったあ…。全身から力が抜ける。本当に殺されるとは思っていなかったけど、こうして生かされる約束をきちんと頂けて、余は満足じゃ。

 初めて見る帝サンのまともな笑顔も、とてもホッとする。



「うん、なんでもするよ! 何すればいい?」



 気を良くしたあたしは、体を乗り出して、帝サンの指示を待つ。そのせいで神代サンが地面に落ちたけど、気にしない。



「人を捜して欲しい」

「人を?」

「そう」



 なんだ、簡単そうじゃん。…という気持ちが伝わったのか、読んだのかもしれないけど、神代サンが寝転んだまま、あたしにそっと告げた。



「チグサを生かす口実だったんだよ」

「え?」

「そうとでも理由をつけないと、オージはチグサを抹消するしかなかったからな」

「…そのために?」

「そ、だから『交換条件』は必ず守れよ」



 帝サンがそんなことを考えていたなんて。全然気づけなかった。そのために、あたしがやらなくても十分に出来ることを、わざとあたしに手伝わそうとしてくれてる。魔法とかなんとか、分からないことだらけだけど、帝サンは普通の人間と同じ、優しい人間だ。

 …それを伝えてくれる神代サンもそうなのだろう。


 二人に会って、怖い思いとか、マトモじゃないことばかりだったけど、今はもう二人を信頼し始めてる。



「聞いてる?」

「あ、すいません、聞いてませんでしたっ」



 慌てて耳を傾ける。帝サンは小さくため息をついて、もう一度口にしてくれた。



「この学校に居るはずだから、見つけたらすぐに引き渡して欲しい」

「分かりました! このチグサ、命に替えても全うしてみせます!」

「…それを免れるための交換条件だっつっただろ」



 おっといけない、そうだったそうだった。

 …神代サン、そんな哀れな物をみるような目であたしを見ないでください。



「で、名前とか分かりますか?」

「あ、うん、ええと…」



 ええと? …待てども、帝サンの次の言葉は出てこない。どうしたんだろう、と神代サンと顔を見合わせる。神代サンが、上半身を起こして、帝サンの顔をのぞき込もうとしたとき、帝サンの左手が、神代サンの額に突きつけられた。


 ……え、ええっ?



「ごめん、ユーゼン」

「ああ、どうぞ」



 な、何を? 待って、それって一体…! 神代サンのあまりのウザさに限界が来ちゃったの! いやだからってそんな…!


 あたしが止める暇もなく、帝サンは指を弾いた。



「ああっ! 帝サンそんなことしちゃ…!」



 けれど、あたしが想像していたことは起こらなかった。もしかして、頭バーンとかそういうことかと思ったけど、そういうことじゃなかったらしい。蛍光灯のような白い光が帝サンの手からこぼれ、神代サンの額を照らしている。その間神代サンも帝サンも目をつぶっていて、何が起こっているのか全く分からない。



「――…ありがとう」

「どういたしま…ぐはっ!」



 勢いで飛びつこうとした神代サンを帝サンが顔面平手打ちで止めた。っはー、実に良い音が鳴りましたな。


 それにしても二人は一体何をやっていたのだろう?



「今のは、ユーゼンの記憶を見せてもらってたんだ。ちょうどリストを…ええと、捜して欲しい人の名前を忘れてた」



 から、神代サンの記憶を見た、と。なんかカワイイことするなあ…帝サン。絶対女の子の格好して欲しいよ、コレ。



「…魔法ってそんなこともできるんですね。あたしが思ってた魔法ってもっと派手なものかと思ってたから」



 欲望をそっと隠し、何食わぬ顔で帝サンに向かう。帝サンは頷いて、説明してくれた。



「実は今でも力を制限されてるんだけど、それでももっと、超能力に近いかもしれない。派手なものといっても、物質では小さな炎が一つくらいだ」



 物質?



「オージの魔法には二つの作用があるんだ。物質を操るものと、精神を操るもの。鎖を動かしたのは物質、階段を崩したり、今俺の記憶を見たのは精神を操るものだ」



 と…、なると、階段が崩れたのはあたしの幻覚だった、ってわけなんだ。…そりゃそうだね、冷静に考えれば、階段がなかったら大変だ。

 すごいなあ、魔法って。すんなり受け入れちゃうあたしも…すごいけど。なんとなく二人を疑う気持ちはなかった。昔から愚かとかいてバカと読むって言われてるくらいだし、分かってないだけかも知れないけど。



「それで、帝サン、名前分かりましたか?」

「うん、ばっちり。名前はね……」



 んん、また固まっちゃった。と、思ったら目をパチパチさせて、あたしを見てる。ええ? また忘れちゃった? 帝サンの脳味噌って一体どういう構造に…。



「千草二子?」

「はい」



 名前を呼ばれたので返事をする。けど、続く言葉はない。また、神代サンを見るが、神代サンは今度はあたしと顔を見合わせなかった。神代サンも何か気付いたらしい。ぽん、と手を打った。



「そういえば、そんな名前だったな」

「…もしかしてコレが捜し人の名前ですか」



 二人は息を揃えてこくりと頷いた。…こんなときだけ息ぴったしってちょっとズルイ。


 ……ええええ! あたし?





展開がのろくて申し訳ない…!いいから早く二子進行してください。


ファンタジーなど初めてで説明の難しさに絶望^^わかりにくかったらばスミマセヌ…


まだ本題に入ってない気もしますので、なるべくはやくすすめて参りますので、ユーゼンの半裸が気になる人はぜひオツキアイくださると嬉しいです!あ、半裸に秘密があるとかそういうわけじゃないんで!^^

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