あげくの果てに
「長老、まだ、ですかね」
若い幽霊がしびれをきらして先頭を行く長老に聞いた。
もう何日も飛んでいるのだ。
「まだらしい」
「道を間違えたのではないですか」
「そんなはずはない、わしの記憶ではこのあたりだと思ったのじゃ」
急にあたりが白っぽくなった。
幽霊の一団をうすい白っぽい霧のようなものがおおった。
「ひゃあ!」一番後ろで女の幽霊が声をあげた。
「どうした?」
「きもちの悪い冷たいものが私の手をつかんだのです」
「手をつかんだと?そんなバカな、わしらをつかめるものなどありはしない」
そう強いけんまくでいった長老の首を細い光るウロコのようなものがくるくるっとまいた。
「わぁ!」長老は老人らしくないかわいらしい声をあげた。
その声と同時に白っぽいかすみが急にビリビリと音をたてて稲妻のように光りはじめた。
幽霊の一団は騒然となった。
まるでビニール袋に入れられてゆすられているかのようである。
そのうち「あっはっはっは」と声がひびいた。
「何もものじゃ!」長老は するどい目であたりの空気をにらんだ。
「私か?私はスーパー幽霊じゃ。君らはもしかしてここにあった青い星をさがしておるのか?」
「そうじゃ、求めてきたのじゃ。純粋な心をもって恐ろしがる地球人を求めてきたのじゃ」
長老はツバをとばした。
「あっはっは」
スーパー幽霊の声はひとりひとりの頭に強くひびいて、あるものは耳をふさぎ、あるものは涙を流し、みな恐ろしさに小さくひとかたまりになっていた。
「そんなものはもうない。私がくってしまった。あまりに恐ろしがらないものでな。私は技にみがきをかけた。だから食う瞬間、それはそれは、腰をぬかしておどろいておった。ひとり残らず、いや、星ごとわたしがくってしまったのだ。」
「なんてことだ。今度はわしらが餌食か?」
長老は自分を哀しそうに見つめた。
「新しい星を探そうと思ったのじゃが、ここにいるだけで、あちらこちらから宇宙の果てからくるわ、くるわ。幽霊集団が。おもしろくてな、やめられないというわけじゃ」
「なんてこと!あたしたちが喰われるわ!」
女の幽霊はほおまで裂けた口をへの字にまげてなげいた。
「だいたい、きみらが安易に他を見つけようとするのがけしからん。みな技を磨かねばならんのに、だ。スーパーじゃよ、スーパー。常にな!」
ぶきみな笑い声があたりにひびいた