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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

タロットカードは、知っている

作者: どんC

 

 *******************************


     タロットカード 【 塔 】

 

     破滅の警告


        あの日出たのは、塔のカードだった。


 ********************************


「フィリシア‼何をしているんだ‼」


 ギリリ…

 

 いきなり手首掴まれた。かなり痛い‼

 私の手首を掴んでいるのは、元婚約者の兄だ。こいつの名は、シオン・ダグリン。

 馬鹿力だ。こいつ騎士団に所属していたっけ。

 捕まれた手首が、痣にならなければ良いんだが…

 彼は、私の手首を掴み困惑の眼差しを向ける。

 黒い鳥の巣頭の髪。縁が、黒色の眼鏡。白いシャツに黒のズボン黒いコート。茶色のベスト。

 そこには、ひょろひょろなモヤシ男が、いる。

 うん。女に見えないよね。よく私だとわかったな~


「まるで別人だ。ちょっと聞いて良いか?」


「今は、フィリーって呼ばれている。それと大声を出さないでくれ。耳は、良いんだ。」


 耳元で怒鳴るな。五月蝿いんだよ。

 ほら、皆こっち見てる。辺境伯の館の中で騒ぐな。


「死んだはずの君が、何故男の格好をして隣の国で秘書をしているんだ?」


 死んだはず?あれっ?私死んだ事になってんの?


「何故髪を染めた?」


「ババアみたいな髪は、昔から嫌いだったんだ。それより私死んだ事になってんの?」

 

「5年も行方不明になってたらそうなるだろ」


「まじか~」


 眼鏡をクイっとあげる。

 薄緑のレンズは、私の目を深い緑に見せる。秘書になってから少々目が、悪くなった。

 むかしは、伊達メガネだったのに~

 妹の目は、青い。海の様な深い深い青だ。


 ********************************


     タロットカード【 恋人 逆位置  】

 

        三角関係 浮気


 ********************************



「何をしているの‼ダスティ様‼」


 バタン‼


 妹と私の婚約者が、裸でベットの中にいる。

 私の後ろには、私の両親と彼の父親と兄が、いる。


 ああ…やっぱりこうなったか…

 タロットカードが、告げた未来。

 わめきたてるダスティ様のお父様と私の両親。


「御免なさい‼御免なさい‼」

 泣く妹。


「彼女は、悪くない‼」


 妹を庇うダスティ様。

 冷たい視線を二人に向ける彼の兄。

 混乱の坩堝の中、私は、踵を返して自分の部屋に駆け込んだ。


「お嬢様‼」


 メイドが、ドアを叩く。


「一人にして‼」


 侍女は、少し戸惑っていたが、部屋から遠ざかって行った。

『探さないで下さい』と手紙を書くとマントをはおり、窓から抜け出した。私の部屋が、一階で良かった。


 私は、部屋を抜け出すと裏山の小屋に向かった。

 山小屋には、前から準備していた服と鞄と身の回りの品とお金が、隠し扉の中にある。

 私は、灰色の髪をバッサリ切ると脱ぎ捨てた服と共に暖炉の中に投げ捨てた。髪を染める為に湯を沸かしていた火に服と髪が、燃え上がる。

 私は、髪を黒く染めた。


 男物の服に着替えると丸い黒縁眼鏡をかける。

 鏡の中には、鳥の巣頭のモヤシ男が、いる。

 私の髪は、天然パーマで短いと鳥の巣頭になると始めて知った‼

 私は、鞄の中からお婆様から譲られた古いタロットカードを出す。

 テーブルにカードを置くとかき混ぜ並べその中から一枚のカードを抜いた。


 ******************************* 


      タロットカードは、【 愚者の正位置 】

 

       ――自由を手に入れる――


 ******************************  



 私は、鞄にタロットカードをしまうと山小屋から出て隣の国に向かう馬車に乗り込んだ。


 皆が、探すのは、17歳の灰色の髪をした薄緑の瞳の少女だ。

 間違っても黒髪のモヤシ眼鏡じゃない。

 カードの導きで私は、隣の国の辺境伯の秘書となった。


 あれから5年たった。


 私は、ホテルの客室にいる。

 彼が、泊まってる部屋だ。


「何故男の格好を?」


「楽なんだ」


「女を捨てたのか?」


「いや。捨てた気は、無いんだが…皆が、女を捨てた捨てたとわめくんだ。単に動きやすい格好をしただけなんた‼馬の移動が、多いし。馬車より馬のほうが、時間短縮なんだ。形振り構わなかったら仕事に生きる奴と認識されてしまった。あいつら酷くないか?」


 私は、仲間の文官達の愚痴をこぼす。

 だいたいあいつら私を女と思って無いんじゃないか?


「今は、フィーと呼ばれてるんだ」


 私は、ニヤリと笑う。


「もともと女らしくなかったし。女にしては、ひょろひょろと背だけ伸びて胸は、ペッタン。男の子と野原を駆け回り木剣を振り回し。マナーやお茶会は、大嫌い。昔は何が、楽しいんだ?茶葉や服やアクセサリーの話ばかりって思っていたけど。あれって情報収集に情報戦に自国領の宣伝なんだな~と秘書をして気が付いたよ~。」


 そう言えば、こいつこう言う性格だったな~と馬鹿シオンは、頭を抱えた。

 いや~スマナイネ。私こういう奴なんだ。諦メロン♪


「あの馬鹿二人の事は、知っているか?」


「ああ…結婚したんだろう」


 タロットカードが、教えてくれた。

 知りたくもない二人の恋心と裏切りを……

 困ったお父様は、妹が、嫁ぐはずだった五十も離れた男を私に押し付ける事になる。

 その事もカードは、教えてくれた。

 その1ヶ月後、農民の一揆にあってツエン男爵共々殺される事もカードは、教えてくれた。

 悪逆非道のツエン男爵のとばっちりを受けて死ぬ。そんなんいやや~‼ 

 でも、タロットカードは、逃げ道も教えてくれた。

 

 男の格好をして隣の国に逃げろと…

 しばらく潜伏して一揆をやり過ごせと。


 タロットカードのお陰で私は、こうして生きている。

 町で商店の簿記をしていたらひょんな事から辺境伯の秘書になり慌ただしく雑用をこなしている。

 奥様や子供達に手慰みにタロットカードで占ったら評判になって文官や侍女や騎士団達の恋や人生相談を昼休みにするはめになってしまった。


「相変わらず占いやっているのか。占い師になれるな。」


 彼は、笑って言った。


「じゃ口止め料に俺を占ってくれないか?」


「おや。珍しいな。占いは、嫌いなんじゃないか?」


「嫌いじゃないさ。お前の占いは、よく当たる。血のせいかな?お前の祖母は、聖女だったろ」


 そう私の祖母は、聖女だった。【予言の聖女】と呼ばれていたが、私には、予知の才は、ない。


 私は、テーブルの上にタロットカードを出すとカードをかき混ぜて彼にカードを引かした。


「俺は、ツエン男爵の一揆を収めて男爵の土地を褒美として賜ったんだ。俺と結婚して一緒にあの地を治めてくれないか?」


 引いたタロットカードを見て私は、頷いた。


 *******************************


      タロットカード【 女教皇 正位置 】


        結婚 幸せな家庭生活 幸運


 *******************************


     タロットカードは、知っている。


     彼の恋心も私の恋心も全部知っている。



                             ~Fin~



★フィリー・バッシュドング

タロットカード占いが、得意。

バッシュドング伯爵令嬢。祖母は、【先見の聖女】


★シオン・ダグリン

ダグリン伯爵次男。フィリーの幼馴染み。


★ダスティ・ダグリン

ダグリン伯爵家3男。バッシュドング家に婿養子に入る予定だが、マリリンに惚れる。


★マリリン

フイリーの妹。金髪は、アホだと云われるが、そのとうりである。

ダスティと結婚するが、没落一直線である。





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[一言] 「フィリシア‼何をしているをだ‼」 本文開幕一行目ェ・・・
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