Memories
一次創作マストドンにてワンライ
第十二回開催は11月25日(土)
お題「あの日のこと、覚えてる?」/ペアルック
11月22日はいい夫婦の日、11月23日はいい兄さんの日、11月25日はいい双子の日です。
#創作版深夜の文字書き60分一本勝負
お揃いの指環を買った。生まれて初めてのペアルック。
女はなんでペアにこだわるのかねえ、なんて、初めは渋っていた彼も、結局は身に着けてくれて嬉しかったのを覚えている。
それから私はその指環をとても大事にした。大切に、大切に。
ある日、私の薬指から指環が無くなっている事に気付いた。どうしよう、何処で落としたのだろう、何処かに忘れてきた? 私の頭の中は一気に真っ白になり、それからパニックに陥った。それ程までに私にとって彼との指環は大切な物だったのだから。
無くしたことに気付いたときから何時間も探し続け、今まで通ってきた道を全て辿っても、指環は見つからなかった。
私の目からは、あとからあとから涙が溢れてきて、彼にとって申し訳ない気持ちと、悲しくて、悔しくて、とにかく涙が止まらなかった。
泣きじゃくる私の隣にいた彼は、困ったような、怒ったような顔をして、私の背中をただ撫でていた。
「ごめんね、二人の大切な指環、無くしちゃった」
「別にいいよ」
彼はぶっきらぼうにそう言って、また、私の背を撫でた。
「でも、特別だったの。私にとっては」
「知ってるよ、そんな事」
知ってるよ、そんな事。彼は同じ言葉をもう一度繰り返す。
すっかり陽が暮れて、辺りは暗くなっていた。泣きべそをかいた私と、少し怒ったような彼と二人、並木道を歩く。繋いだ手だけは離さずに。
「あの日のこと、覚えてる?」
ずっと前に歩いた並木道を、また二人で歩く。もちろんさ、と彼は頷く。
「お前、ずっと泣いていたじゃないか」
そんな事もあったねと、私は空を見上げた。黄色く色づいた葉が、はらり、はらりと空から降ってくる。私は手をかざすと、くるりと背後にいる彼に向き直る。
ねえ――。そう言って私は後からゆっくりと歩いてきた彼の腕に自身の腕を絡ませた。
「こうしてずっと二人で居られたらいいね」
私は彼に凭れ掛かるようにして、頭を肩に乗せた。彼はもぞもぞと居心地が悪そうに身動ぐと、私から離れた。それからおもむろに私に向かってかしづくと、ポケットから小さな箱を取り出して、それを私の前に突きだした。
「結婚して下さい」
目の前の箱は、控えめな色をたたえた石の付いた環がその中央に鎮座していて、私は思わず目を見張る。
「私なんかでいいんですか」
私が目を瞬くと、彼はばつが悪そうに両手で捧げ持っていた環を取ると、私の左手の薬指に通す。
「お前がいい」
気付くと私はまた、いつかみたいに涙をぽろぽろと溢れさせていた。
「こんな……泣き虫で」
「うん」
「意地っ張りで……」
「うん」
「頑固で」
「うん、でも、お前がいい」
それから私は言葉が続かなかった。私は彼の首に腕を絡めると、泣きながら、けれどうっすらと微笑みも漏らす。私はまた、今日の日を思ってこう言うのだろう。
「あの日のこと、覚えてる?」




