1 これは一体
二章のプロローグ的で短めなので今日もう一話更新予定です。
――吸血鬼が治める帝国、城での生活にもなんとなく慣れてきました。
「ドルカントにて人間が反発しているとのことですが」
「鎮めろ。手段は問わん、確実に頭を消せ」
「しかしあそこは相当です、首謀者を消して収まるとはとても……」
「それでも収まらなければ最悪――滅ぼすことも視野に入れる」
帝国の現王、デューベルハイト・ブルディオグは残虐王と呼ばれていた。そんな名前を冠したのは帝国外の国々であるようで、名前の由来は、少しでも帝国への怪しい動きを見せる他国への情け容赦ない進軍、処罰をするからだそうだ。
普段にしろ思い切りのよい性格のようで、決めたことは決めたで他の異論を許さない、独裁者のような一面も持ち合わせる。
しかし、結果として彼の考えが間違えていたり失敗したことはなく、ものにした土地も必要以上に虐げることはないらしい。
その証拠に、帝国の支配下となった国々は貧しくなることはなく数年もあれば完全に順調な軌道に乗り、豊かになる。だがそれ以前の早い段階に、制圧された国の人々が反抗する事例は、もちろんある。
吸血鬼の王の執務室内の椅子にちょこんとひっそり座るビアンカは、首を傾げることになっていた。持ってきた本は膝に置いてしまっており、手を胸の辺りに当ててちょっと首を傾げているという状態。
遮るものはなく、同じ部屋内で話している吸血鬼たちの話の内容は聞いていない。難しい政治の話から物騒な話題まで様々であるが、とりあえずついていけないし関係がない話なのだ。
だから胸に手を当てているのはそれは関係ない。集中して感じとる鼓動に変なところはない。距離があるからだろうか。
最近ビアンカが近くにいると胸がどきどきと鼓動が早くなる方がいるのだけれど、以前のような震えが心臓に移動しているのだろうか。けれどもう王のことは怖くはない、はずだ。
ビアンカは異なる事象に戸惑っていた。




