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83話

 ルーベンが画策している最中。

 俺が銃口を向けている森から最大の危機が現れ、その姿を見て皆が驚愕する。


「ッ?!」

「……マジかよ」

「嘘だろ……」

「クソッ!」


 現れたのは狼の魔物。その数23頭で全頭がポニー位のデカさがある。

 魔物の増援が姿を現すと普通種は魔物の前へ移動して列を作った。

 そして俺が最初に見つけた奴も森から出てきたが、こいつも同じサイズの狼の魔物だった。


 普通種30匹弱が前列、魔物24頭が後列で隊列を組んで俺達と対峙する。


 そもそも狼ってあんな風に隊列を組むもんなのか?


 そんな疑問を抱いていると狼達のプレッシャーが少しずつ強くなってきた。


 銃を握ってる手から出る汗の量がヤバい。


「おいおい、どうすんだよ。10人やそこらで何とかできる相手じゃねぇ」


 バリーが愚痴るが誰も否定できない。


「だろうな。でも見逃してくれそうにはないぞ!」


 バリーの愚痴にルーベンが答えた直後、前列にいた狼達が一斉に動き出し俺達へ迫る。


「ルイス、イレネは後衛!フレディ、バリー、ハコボは中衛!後は前で奴らの足を止めろ!ドルテナ!俺の横にいろ!」


 盾持ちが狼の足を止めたところへ槍や弓で攻撃を行う形だ。

 俺も指示通りルーベンの横に立つ。


「ドルテナ、その武器で狼を一気に近づけさすな。全部に来られると前衛が潰されちまう」

「わかりました!」


 俺は直ぐに片膝姿勢になり、俺達へ突っ込んでくる狼へ向けて最初と同じように引き金を引きながら横一文字に動かす。


 量で押し潰すつもりだったのか、はたまた避けるつもりが端っからなかったのかわからないが、銃声を聞いてもお構いなしに突進してきた。

 そのお陰で10匹近い狼が体勢を崩して岩の上を滑るが半分は直ぐに起き上がった。致命傷とはいかなかったようだ。

 そして銃撃を受けなかった無傷の20匹が俺達前衛へ襲いかかる。


 強靱な顎で噛みつこうと口を広げ、鋭く尖った犬歯で食い千切ろうとしてくる狼へ盾を叩きつけ、前足の鋭い爪で攻撃してくる狼は剣でいなす。

 そして体勢を崩した所へ剣や槍で切り付ける。


「レオ!右だ!」


ー ガギン! ザシュ! ー


「サイラス!3匹行ったぞ!」


ー ギャァィン ー


「イレネ!回り込ませるな!」

「ドルテナ!奴らを近づけるな!」


ー タタタッ! タタタタッ! タタタタタタタッ! ー


 狼達との距離が近いから当てやすいけど……数が多いわ!


 数に物をいわせて狼達がなり振り構わず突っ込んで来るせいで、俺達は若干押されていた。

 それでもイレネとルイスが奮闘し、狼達が後ろへ回り込むのは阻止していた。

 このままいけば普通種は何とかなりそうだ。と思ったとき、それまで動きを見せていなかった魔物の狼がゆっくりと近づいてきた。


 普通種なら兎も角、あの数の魔物が参戦されたら俺達は一気に壊滅だ。

 ヴィクターがどうするのかとルーベンを呼ぶ。


「ルーベン!」

「わぁってるよ!ベンハミン!後ろの森の奥はどうなってる!」

「沼や谷はなかったはず!隠れられるところもないけどな!だけど、奥に行けば木も多い!あのでかい図体なら速くは走れんだろう……よ!」


 ベンハミンが飛びかかってきた狼に剣を突き刺しながら答えた。

 魔物もあのサイズなら森の中を速く駆けることは難しいだろうな。


「このままじゃジリ貧だ!合図と共に後ろの森に入るぞ!できるだけ木の多いところを抜ける!」


 ここに居たら魔物達に取り囲まれる危険性もあるしな。


「ベンハミンは先導!フレディとイレネそれに続け!先頭の指揮は任せる!俺とルイスは殿!行くぞぉ~~!今!」


 ルーベンの合図と共に一斉に狼達に背を向けて森の中へ駆け込む。

 狼達も追いかけてくるが数は既に10匹程までに減っている。

 図体のデカい魔物は、やはり木々が邪魔をして速く走れていないようだ。


 普通種は時々飛びかかるが、殿のルーベンが盾で防ぎ、追いかけてくる狼にルイスが振り返り素早く矢を放ちまた走る。

 中には先回りをしてくる狼もいたが、それはイレネが矢を放って牽制していた。

 それでも何度となく進行方向の変更を余儀なくされてはいた。


 右へ左へと森の中を走っていると追いかけてくる狼達の数が少しずつ減ってきた。

 危険察知で見ると魔物達はまだ追いかけてきてはいるが、俺達との距離はかなり開いたようだ。

 走りにくいのか広範囲に散らばっているようだ。


 諦めてくれたってこと?何かしっくりこないな。魔物がいくら図体がデカいとはいえ狼なんだ。もっと速く走れてもいいような気がする。


 俺達の周りにいる普通種の狼の攻撃も散発的になってきている。このまま逃げ切れそうな雰囲気を感じている皆の表情に少し余裕が出てきた。


「ドルテナ。魔物達の位置はわかるか?」

「はい、散らばっているようですけど距離は開いています。こっちの方が足は速いようなので今でも少しずつ距離が開いています」

「なに?魔物達は俺達を追いかけてないと言うのか?」


 ルーベンが俺に聞いてくるが、そんなことわかる訳がない。

 俺が「どうなんでしょう」と応えると黙り込んでしまった。別にふて腐れたわけじゃなくて何か考えているようだった。


「そうか……なら先に……よし!ベンハミン、どこか開けていそうな所を探してくれ。魔物との距離が開いているうちに残りの普通種を倒してしまおう。そう数は多くないはずだ」

「わかった」


 魔物とこれくらい距離が開いていればそう易々とは追い付かれないだろう。

 今でも狼は俺達の進路を妨害するかの如く飛び出してきたりしているが、積極的に攻撃を仕掛けては来なくなっていた。


 ったく。狼に追いかれられるとかあまり気分のいいもんじゃないな。これじゃまるで牧羊犬に追いかけられている羊と変わらないや。羊達もきっとこんな気分なんだろうな。

 まぁ俺達の場合は牧羊犬ならぬ牧羊狼だけどな。


 俺にも余裕が出てきたようで、こんなアホなことを考えながら森を駆けていたが、ふと牧羊犬の動きをドローンで空撮していたテレビを思い出した。

 牧羊犬達が羊達を後ろから追い回して柵の中へ追い込んでいた。

 羊の群れからはぐれようとすると回り込み、柵の方向から外れると先頭を行く羊へ近づき進行方向を変えさせていた。

 そう、まるで今の俺達と狼達のようだ。


 …………まさか……。


 俺が危険察知の範囲を300mから広げていくと約500mの辺りで捜し物を見つけた。


 ………おいおい。


 見つけた辺りはここからでもわかるくらいに広い範囲に赤いシルエットが広がっている。

 下手をしたらさっき対峙した狼達よりも多いのかも知れない。


 狼達はあの場所へ俺達を誘導してるんじゃないだろうか。

 その場所は俺達の進行方向よりやや左前の方向。今よりも山奥へ入って行く方向だ。


 このまま進めば問題ないが、少しでも左によればドンピシャだな……。


 そう思っていると俺達の右手から狼達が現れてプレッシャーをかけてきた。

 ベンハミンは思わず進路を左に修正。


 これであの赤いシルエットへ一直線だ!GOGO~。って言ってる場合じゃない。


「ベンハミンさん。この方向に嫌な気配がたくさんあります。進路を変えてください」

「何だって!わかった。海の方へ進路を変えるぞ」


 ベンハミンが右へ進路を変えると直ぐさま狼達が現れるが構わず突っ込んでいく。

 イレネの矢も牽制ではなく当てに行っている。

 狼の進路妨害を突破して進んでいるから赤いシルエットからは離れて行っている。


 心の中で一安心と思っていると急激に近づいてくる赤いシルエットに気付いた。

 今まで俺達にかなり距離を離されていた魔物が、一気に間合いを詰めて右方向からやってくる。


 普通種の誘導では俺達を目的の場所へ向かわせられなくなったから出てきたんだろうか?


 普通種ならば突破できるが魔物となると走りながらは厳しい。いきなり横から襲われたらヤバい。

 俺は直ぐに皆へ知らせた。


「右手から魔物が追い付いてきます!」

「なに?!ッくそ!距離は!」


 殿のルーベンの声に焦りがある。

 さっきまで距離があったはずの魔物が、一気に追い付いてくるとは思ってなかっただろう。


「もう少しで視認できる距離!……併走しながら近づいてます!」


 俺が答えるのと同時に、木々の奥で並走している魔物の姿が見え始めた。

 そのうちの数頭がベンハミン前へ回り込み、俺達を左へ左へと追いやろうとしてくる。

 どうにかして右へ進路を取るべく突破しようと試みるが、その度に複数の魔物が近づいてきて行く手を阻まれる。

 俺もFN P90で応戦するが、山を走りながらだと照準を合わせることも儘ならず、なかなか当てることが出来ないでいた。

 このままでは狼の目論見通り、あの赤い集団へ突っ込まされてしまう。

 

「シツコイんだよ!」


 あぁもぉ!フラストレーションが溜まりまくりだわ!

 前方の赤いシルエットまで後200m。それまでに何とか進路を変えないと狼達の思う壺だ。

 草の背丈が少しずつ高くなってきて走りにくくなってきた。

 足下を気にしながら走っていたら急に辺りが明るくなり、その眩しさで一瞬何も見えなくなった。


 なんだ?!


ー ドン! ー


「ッ痛!」


 一瞬前が見えなくなったと思ったら何かにぶつかってしまった。

 眩しさに目が慣れて何にぶつかったのか確かめると、前を走っていたハコボが立ち止まっていた。


「ちょっ!ハコボさん!何立ち止まってるんで ── 」


 ハコボへ速く移動しようと言うつもりだったが、よく見るとベンハミンやフレディなど俺の前を走っていた皆が、ハコボと同じように立ち止まってある一点を見ていた。

 気になり俺もそちらへ視線を向けた。


 そこには絶望という名の風景が存在していた。




いつも「異世界と現代兵器 ~いや、素人にはちょっと~」をお読みいただきありがとうございます。


誠に勝手ではございますが、次話より週一の更新とさせていただきますので、ご了承下さい。



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